介護職は残業が多いって本当?サービス残業の要因と対策も解説

「介護職は残業が多いの?」と不安に感じている方もいるでしょう。そこで今回は、介護職の残業に関して、現役介護職の筆者が以下の疑問にお答えします。

  • 介護職は残業は当たり前なの?
  • 介護職はサービス残業しなきゃいけない?
  • 残業しないための働き方は?

多くの方は、残業の少ない介護施設で働きたいと思いますよね。

本記事では、介護職の残業について、現役介護職員の実際の働き方をもとに紹介します。
介護職のリアルな残業事情を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

介護職って残業が多いの?

「介護職は残業が多いの?」という疑問への回答は、職場によって異なります。実際に筆者は介護職経験17年目ですが、残業が多い職場もあればほとんどない職場もありました。
会社から残業の指示が出ていないにもかかわらず、自ら率先して残業し、長時間労働になっているケースもあります。

介護職だから残業が多いわけではなく、職場の雰囲気や介護職一人ひとりの時間管理などが大きく関係しています

では実際に介護職の残業事情はどうなのか、調査機関のアンケートや筆者の経験などをもとにより詳しい内容を見ていきましょう。

介護職の平均残業時間

介護労働安定センターの「令和5年度介護労働実態調査」によると、介護職の1週間の平均残業時間は、1.1時間でした。

なお、残業時間に関するアンケート結果は、以下のとおりです。

残業時間解答の割合
残業なし66.5%
5時間未満22.5%
5時間以上10時間未満6.6%
10時間以上15時間未満1.4%
15時間以上0.4%

半数以上の介護職員が「残業なし」と答えており、15時間以上残業している方は0.4%で1%にも満たないことを考えると、介護職は残業が少ない仕事と言えるでしょう。

ただし、リーダーや管理職などになると、責任感から自ら残業するケースが増えるため、1週間の残業時間も増加傾向にあります。

現役介護職員のリアルな残業事情

では、実際に働いている介護職員の残業事情を見ていきましょう。

今回は、残業がない理想的な1日と残業がある日を比較しながら、現役介護職員である筆者の1日を紹介します。
残業がない理想的な1日と残業がある日の介護職員(筆者)の1日は、それぞれ以下のようなスケジュールです。

残業がない1日残業がある日
時間仕事内容時間仕事内容
8:30出勤・申し送り8:30出勤・申し送り
9:00排泄介助・掃除9:00排泄介助・掃除
10:00入浴介助
記録入力
10:00入浴介助
12:00休憩12:00休憩
13:00口腔ケア
排泄介助
移乗介助
13:00口腔ケア
排泄介助
移乗介助
14:00レクリエーション14:00レクリエーション
15:00おやつ
水分介助
15:00おやつ
水分介助
16:00排泄介助
シーツ交換
記録入力
16:00排泄介助
シーツ交換
17:00夕食の準備17:00夕食の準備
17:20記録の確認17:30
(ここから1時間残業発生)
ご利用者様の日常記録や情報更新などのPC作業
※本来17:30で退勤
17:30退勤18:30退勤

残業になるケースの多くは、業務時間内では難しいPC作業です。残業がない日は、上記のとおり、こまめに記録入力できていますが、残業がある日は記録入力する余裕がありません。

なお、主なPC作業は以下のとおりです。

  • ご利用者の日常の記録
  • 食事量や水分量、排泄状況などの記録
  • ケアプラン(サービス計画書)の作成や更新に必要な情報の入力

転倒や誤薬など介護事故があった場合、事故対応や報告書の作成が必要になるため、残業が発生しやすくなります。
行事計画やレクリエーションの準備等に追われ、残業せざるを得ないケースもあるでしょう。

また、人手不足により時間内に仕事が終わらず残業になるケースもあります。
筆者が人手不足の施設で働いていたときは、ご利用者への介助が業務時間内に終わらず、毎日のように残業していました。

一方で、人手が十分でアクシデントなく業務もスムーズに進めば、ほとんどの日で残業はありません。

介護職の残業が発生する要因

介護職の残業が発生する要因は、主に以下の3つです。

  • 残業するのが当たり前の雰囲気になっている
  • 人手不足で1人あたりの仕事量が多い
  • 業務時間内にミーティングを開催できない

それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。

残業するのが当たり前の雰囲気になっている

職場の雰囲気が「残業するのは当たり前」になっていることで、職員が自らの判断で退勤しにくくなっている可能性があります。
上司は当然のように残業しており、部下である自分だけが帰りにくいというケースは、介護以外の業界でもよくあることです。

実際に筆者も介護職を始めた頃、時間になったため退勤しようとすると、上司から「まだ業務が終わってないよ」と足止めされ、嫌々残って仕事をしていた時期もあります。

人手不足で1人あたりの仕事量が多い

介護業界は慢性的な人手不足に陥っており、職員1人あたりの仕事量が多いのが実情です。厚生労働省の「介護人材確保に向けた取組」の中でも、2026年に25万人、2040年には57万人もの介護職が不足すると予測されています。

実際の介護の現場でも、本来は3人必要な業務を2人で行っているケースも少なくありません。1人あたりの仕事量が増えれば、その分時間もかかり、おのずと残業が発生することになります。
職場によって異なりますが、人手不足の介護事業所は、職員の採用と定着率の向上が大きな課題となるでしょう。

業務時間内にミーティングを開催できない

介護職は早番や遅番、夜勤など勤務時間がバラバラなため、業務時間内に全員が揃ってミーティングを開催することができません。そのため、ミーティングを行う際は、職員の誰かが必ず残業をしなければいけないのが実情です。
たとえば、夕方17時からミーティングを開催する場合、早番や夜勤明け、休日の職員は時間外に参加しなければいけません。

実際に筆者も、夜勤明けにミーティングに参加します。残業代は出るものの、午前中に帰宅し、再び職場に行くのが負担に感じることもあります。

介護職の残業を減らすためのポイント

介護職の残業を減らすためのポイントは、以下の3つです。

  • 定時に帰ることを習慣にする
  • 自分だけで仕事を抱え込まない
  • 夜勤中の時間を有効活用する

それぞれ具体的な内容を確認しましょう。

なお、残業が発生した際は必ず上司から指示を仰ぎ、適切に時間外申請を行うことで、確実に残業代をもらってください。

定時に帰ることを習慣にする

残業するのが癖になっていると、退勤時間になっても帰らないことに違和感を感じにくくなります。そのため、残業を減らすためには、普段から定時での退勤を習慣にすることが大切です

また、自分の仕事が終わっているにもかかわらず、誰も帰ろうとしない雰囲気に負けて、自分も残業してしまうケースもあります。

退勤時間までに仕事を終わらせて定時になったら率先して帰ることを習慣にすれば、残業は確実に減らせるでしょう。

自分だけで仕事を抱え込まない

介護職はご利用者を介助するだけでなく、以下のようなさまざまな業務をしなければいけません。

  • 支援内容の記録
  • 各種委員会の業務
  • イベントの企画立案

とくに記録や企画の立案など、パソコンを使った業務は、ご利用者を介助しながらするのが難しく、残業になりやすい仕事です。

介護はチームプレイのため、自分ひとりで仕事を抱え込まず、同僚や上司と協力して業務を進めましょう

夜勤中の時間を有効活用する

夜勤をする場合は、夜勤中の隙間時間を有効活用することで残業を減らせます。たとえば、ご利用者が落ち着いている夜勤であれば、パソコン業務の時間を十分に確保できるでしょう。

筆者は介護職とケアマネを兼務していますが、ケアマネ業務に関しては、夜勤中にすることが多いため、残業はほとんどありません。

ご利用者の状況によっては、夜勤中に余裕がないこともあります。ただ余裕がある日は、時間を有効活用し仕事を進めれば、確実に残業は減るでしょう

介護職のサービス残業の要因と対策

介護業界では人手不足による長時間労働で、サービス残業が常態化している施設もあります。サービス残業とはその名のとおり、残業をしているにもかかわらず残業代が支給されないことです。

サービス残業の要因には、以下のようなことが挙げられます。

  • 自分が残業申請をしていない
  • 残業の指示がないのに自ら残業している
  • 上司からサービス残業を強制させられている

人手不足で残業をしなければいけないのは仕方ありませんが、職員に残業代を支給せず長時間働かせるのは違法です

サービス残業がある場合、以下の対策が有効です。

  • 職場全体で残業について話し合う
  • 残業しない働き方を習慣にする
  • 上司や本部に相談する
  • 労働基準監督署に相談する
  • ほかの施設に転職する

職場で話し合ったり上司に相談してもサービス残業がなくならない場合は、ブラック施設の可能性が高いため、転職を検討したほうがいいかもしれません

自分に合う職場を探すためにほかの施設に転職する際は、以下の記事を参考にしてください。

残業の少ない介護施設の見分け方

残業の少ない介護施設の見分け方は、以下の3つです。

  • 求人情報を詳しくチェックする
  • 面接の際に残業について質問する
  • 週休3日制の職場で働く

それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。

求人情報を詳しくチェックする

求人情報を詳しくチェックすることで、施設ごとの残業状況がわかる場合があります。たとえば、求人によっては毎月の平均残業時間を記載しているため、ある程度の残業時間を把握した上で入社できます。

一方で、残業時間の記載がない、または残業がゼロと記載がある求人は、実際は残業があるにもかかわらず記載していないかもしれません。

また、残業代が発生していないだけでサービス残業は発生している恐れもあるため、安易に信用せず慎重に情報収集することが大切です。

面接の際に残業について質問する

求人情報だけでは、残業に関する正確な情報を確認できないため、面接の際に詳しい内容を聞くことも大切です。そこで面接官が残業について具体的に回答できない場合、入社は慎重に検討しましょう。

また、面接時に職場見学も行い、職員が実際に働く様子を観察することで、残業の有無を予測することも可能です。たとえば、職員一人ひとりが慌てており人手が足りないとわかる場合、慢性的に残業しているかもしれません。

問題は残業の有無よりも、サービス残業が発生していることなので、残業に関する詳しい内容は入社前に確認し納得した上で職場を決めましょう。

週休3日制の職場で働く

週休3日制の職場は、以下のような働き方をします。

曜日労働時間
月曜日6時~17時(早番)
火曜日10時~21時(遅番)
水曜日20時~翌7時(夜勤)
木曜日公休
金曜日公休
土曜日6時~17時(早番)
日曜日公休
※参考例

週休3日制の職場は、上記のように1日の労働時間が10時間になり、公休が多くなる仕組みです。

週休3日制にすれば残業がなくなるわけではありませんが、1日の労働時間が長い分、それ以上の長時間労働につながりにくくなる可能性があります

介護職の残業に関するよくある質問

介護職の残業に関するよくある質問は、以下の3つです。

  • 残業30時間は違法なの?
  • 申請する際の残業理由の書き方は?
  • 介護職の残業代は1時間いくら?

それぞれ詳しい内容を解説するので、残業に関する基礎理解を深めてください。

残業30時間は違法なの?

36協定を結んでいなければ、月の残業時間が30時間でも違法になります。時間外労働(残業)をさせるためには、原則36協定が必要です

36協定とは、労働基準法第36条に基づく労使協定で、法定労働時間を超えて労働させる場合に締結するものです。
残業が発生しやすい介護の現場では、必ず36協定が締結されているため、残業30時間でも違法ではありません。

出典:「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」|厚生労働省

申請する際の残業理由の書き方は?

介護職が残業代を申請する場合、残業の理由を記載しなければいけません。
【介護士の残業事情】|PR TIMES」を参考に、主な残業理由を紹介します。
なお、残業には出勤時間前に行う前残業と、退勤時間後に行う後残業があります。

前残業の理由トップ5は、以下のとおりです。

  1. 情報収集のため
  2. ケアの準備のため
  3. 他の介護士も早く来ているため
  4. 申し送りのため
  5. 慢性的な人員不足のため

一方、後残業の理由トップ5は、以下のとおりです。

  1. 介護記録の作成のため
  2. イレギュラー対応のため
  3. 慢性的な人員不足のため
  4. 勤務時間内に終わる仕事量ではないため
  5. 申し送りのため

情報収集や介護記録の作成をサービス残業でする必要はないため、必ず理由を明記し残業申請を行いましょう。

介護職の残業代は1時間いくら?

介護職の残業代は、以下のように労働基準法に基づき計算されます。

残業の種類支払う条件割増率
時間外労働法定時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき通常賃金の25%以上
休日労働法定休日(週1日)に労働させたとき通常賃金の35%以上
深夜労働22時から5時までの間に労働させたとき通常賃金の25%以上
出典:「割増賃金の計算方法」|厚生労働省

たとえば、時給1,000円で、時間外労働や深夜労働した場合、残業代は1時間1,250円になり、休日労働の場合は1,350円です。

残業をする場合、自分がどの残業に当てはまるか確認した上で、1時間の残業代を把握しましょう。

まとめ

介護職は残業が多いと思われがちですが、ほとんど残業のない職場もあります。残業のない職場であれば、ワークライフバランスを取りやすく、ストレスの少ない働き方が可能です。

ぜひ本記事を参考に、介護職の残業事情を把握し、介護職として働くかどうか考える判断材料にしてください。

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この記事を書いたのは・・・

津島 武志/Webライター

保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/社会福祉士
業界17年目の現役介護職兼ケアマネージャー。
さまざまな介護系メディアでWebライターとしても活動し、多くの検索上位記事を執筆。
介護職以外に転職メディア「介護士の転職コンパス」や自身のライフスタイルを発信するYouTubeチャンネル「TAKEBLOG」等を運営。