介護記録をSOAPで書こう!例文、メリットを特養職員が解説

「介護記録を書くのに時間がかかる」
「あとから見返してもほしい情報が書いていない」
「SOAPという記録方法があるの?」
このような悩みをお持ちではありませんか。

介護記録は記録を残しておくだけではなく、ケアの検討をしたり、場合によっては裁判の資料になったりもする大切な資料です。自分たちが行ったケアの記録を残すことが大切だとはわかっていても、業務に追われついおろそかになってしまうこともあるでしょう。

本記事では記録方法のひとつである「SOAP」について解説しています。介護記録をわかりやすく効率的に書きたいという方はぜひ最後までお読みください。

SOAPとは

SOAPとは、介護記録で用いられる手法のひとつです。もともと医療現場で活用されてきた記録方法ですが、記録の統一性や情報伝達の正確性が高く、介護分野でも応用されています。

SOAPは以下の4つの要素で構成されています。

  • S(Subjective:主観的情報)
  • O(Objective:客観的情報)
  • A(Assessment:評価)
  • P(Plan:計画)

ひとつずつ解説します。

S(Subjective:主観的情報)

ご利用者様本人やご家族からの訴えや感覚を記録する部分。本人の言葉をそのまま記録することで、真のニーズが把握できます。痛みの程度、不安な気持ち、希望など、ご利用者様視点の情報を正確に残すことが重要です。

例:昨日から頭が痛く熱を測ったら38.5℃あった。咳がでていて喉も痛い。

O(Objective:客観的情報)

観察や測定で得られた事実を記録する部分です。誰が見ても同じ解釈ができる客観的な情報が必要です。バイタルサイン、食事量、排泄状況、表情や行動の変化など、数値化・可視化できる情報を明確に記録します。

例:新型コロナウィルスとインフルエンザの可能性があり抗原検査を実施

A(Assessment:評価)

SとOの情報を総合的に分析・評価する部分で、客観的・主観的情報から課題を特定します。状態の変化、改善点、新たな問題点など、専門職としての判断を記録します。

例:抗原検査の結果新型コロナウイルス陽性、インフルエンザは陰性

P(Plan:計画)

評価に基づいて、課題解決のために立案する具体的なケア計画を策定します。ケアの方法、実施時期、必要な対応など、次のケアにつながる実践的な計画を記録します。

例:最低5日間は自宅で安静にする。希望があれば治療薬を処方する。

介護記録にSOAPが適している理由

SOAPは、医療の現場でよく用いられていますが、介護現場にも活用可能です。理由は主観的情報と客観的情報を分けて記録することで、情報の正確性と共有のしやすさが格段に向上するためです。

介護現場では、介護職員だけでなく、看護師や栄養士、リハビリスタッフなど多くの職種とともに仕事をしています。SOAPを活用することで、情報共有がスムーズになり、ご利用者様へのケアの質を向上させられるでしょう。

SOAPを使った介護記録の書き方と例文

ここでは、特別養護老人ホームで転倒してしまったご利用者様の事例をもとに、SOAP形式での記録の例文を、NG例とOK例で紹介します。

■事例
85歳女性で特別養護老人ホームのご利用者様。立位は取れますが、不安定のため歩行はできず移動は車椅子を使用しています。
昼食後、食堂の食事席で他の方と談笑していましたが、一人で起き上がり、膝折れし転倒してしまいました。バイタルサインや意識レベル、立ち上がり、歩行は問題ありませんが、左側頭部に3cm台のコブがあります。
本人は「頭を打った気がするけどわからない」と言っています。異常はなさそうに見えますが、頭部を打っているため念のため脳神経外科を受診することにしました。

■NG例
昼食後、食堂で転倒。立ち上がろうとした際に膝折れした可能性がある。
頭を打ったかもしれないが、本人はよく覚えていない様子。左側頭部にコブがある。
バイタルは問題ないようだ。念のため病院を受診することになった。

■SOAPを用いたOK例

S(主観的情報)
昼食後、食堂の席で他のご利用者様と談笑中に一人で起き上がり転倒
本人は「頭を打った気がするけどわからない」と発言
痛みや不快感についての具体的な訴えはなし

O(客観的情報)
身体状況:バイタル正常(血圧:110/60 脈:45 熱:36.8 SpO2:99%)、意識清明、立ち上がり・歩行動作に異常なし
外側:左側頭部に3cm程度の腫脹を確認
転倒時の様子:立ち上がって方向転換する際に膝折れし転倒

A(評価)
転倒により頭を打ったが、現時点で意識障害や明らかな異常は見られない
頭部外傷の可能性を考慮し、さらなる評価が必要と判断し脳神経外科を受診し、頭部外傷の有無を確認する

P(計画)
受診の結果現時点で脳内の異常はないが、1ヶ月程度は本人の状態を継続的に観察し、意識レベルや身体症状の変化を記録する
転倒防止のため、座位・立位保持時の見守りを強化するようケアプランを見直す

介護記録にSOAPを取り入れる3つのメリット

ここでは、介護記録にSOAPを取り入れるメリットについて以下の3点を解説します。

  1. 情報が整理されていてわかりやすい
  2. 課題を明確化しやすい
  3. 内容に悩まず効率的に記録できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.情報が整理されていてわかりやすい

SOAPは主観的情報と客観的情報、アセスメントの結果、今後の対応について項目ごとに記載されているため、誰が読んでもわかりやすく、情報共有がスムーズになります。
次のシフトのスタッフや他の職種があとから見ても、SOAPで記録された情報であればすぐに理解できるでしょう。

2.課題を明確化しやすい

SOAPを用いた記録は、問題点が洗い出しやすく、課題解決に向けた具体的な対応策を立案しやすいのが特徴です。
”現在の介護サービスで十分か””利用中のサービス以外のケアが必要か”といった評価にも利用できるため、今後のサービス利用を検討する際の材料にもなります。

3.内容に悩まず効率的に記録できる

SOAPの形式に沿って記録をすることで、記録が苦手なスタッフでも、効率的に業務ができるようになります。記録のフレームが決まっているため、何を書いていいかわからないという状況にはなりにくいでしょう。

SOAPを使いこなすためのポイント

SOAPを使いこなすためには、
「事実に基づき簡潔に記録する」
「ご利用者様に寄り添う気持ちを持つ」
「整合性を持たせる」といったポイントがあります。

事実に基づき簡潔に記録する

介護の現場では、介護職員だけでなく看護師や栄養士などさまざまなスタッフが連携して対応にあたります。そのため、担当スタッフ間の情報共有が必要不可欠です。

介護記録の内容が他のスタッフに正しく伝わらなければ、混乱を招く可能性があります。
ご利用者様やご家族の意見や感想と、検査・観察やスタッフが判断したご利用者様の心身状態、提供したサービスなどの客観的な情報を混同せずに分けてまとめる必要があります。

ご利用者様に寄り添う気持ちを持つ

SOAPのはじめに書く記録内容は、ご利用者様の主観的情報です。必要な情報を聞き漏らさないように、普段からメモをする習慣をつけておくとよいでしょう。
アセスメントの場面だけではなく、日常の会話のなかで本人のつぶやいたことをメモしておくことで、その人の本当の気持ちを理解できるようになります。

整合性を持たせる

SOAPは4つの項目を関連付けて治療計画を立てていくため、整合性を保たせることが大切です。S(主観的情報)とO(客観的情報)に記載した情報から考えられることのみをA(評価)に記入し、余計な情報は記載しないようにします。

Aを行ううえで情報量が少ないと感じる場合は、SとOの情報が不足しているかもしれません。
再度SとOの情報収集を行うことで十分な情報を揃え、SとOとAの整合性を保たせることで最適な治療計画を立案できるでしょう。

まとめ

介護記録は単なる記録だけでなく、ケアの検討や裁判資料としても重要な書類です。
SOAPを活用することで、情報が整理されて共有しやすく、課題も明確化できるため介護現場でも効果的です。わかりやすい記録が書けないと不安になるのではなく、本記事を参考にポイントを押さえた介助ができると良いでしょう。

自分の記録に自信が持てるようになると、他の施設がどうか気になることもあります。
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この記事を書いたのは・・・

さとひろ/Webライター

保有資格:ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師
介護業界で22年の経験をもつ、特別養護老人ホームの現役ケアマネジャー兼生活相談員。介護職員・ケアマネジャー・生活相談員としての経験をもとにわかりやすい記事を執筆します。