
日本社会の高齢化は、国民が認知している事実ですが、高齢者社会を支える介護職については、広く認知されず、深刻な人手不足に陥っています。
そんな中、新卒で介護職に就くのは、「もったいない」と言われていることをご存じでしょうか?
本記事では、新卒で介護職に就くのは「もったいない」といわれる理由が、どういったところにあるのか、くわしく解説していきます。
あわせて、新卒で介護職に就く際のメリットや職場選びのポイントについても、より深く知りたい方は、わかりやすく詳細をご紹介していますので、ご一読ください。
よろしければ、筆者の体験談もぜひ参考にしてください。
この記事の内容
新卒で介護職に就くのはなぜもったいないのか?
世間では、「新卒で介護の仕事をするのは、もったいない」といわれる風潮があります。
実際には、若手のうちに管理職への出世が叶ったり、転職先などに恵まれたりと、良いこともたくさんあります。
では、なぜ新卒で介護職に就くのは「もったいない」といわれるのかを紹介します。
- 給与が低いから
- 労働環境が良くないから
- 専攻した学歴が考慮されないから
1つずつみていきます。
給与が低いから
介護は、給与が低いことで知られています。
それは、厚生労働省が公表するデータでも示されています。

令和4年の数値でいうと、全産業の平均賃金36万1,000円に比べて、介護職員の平均賃金は29万3,000円と6万8,000円の差があります。
新卒で介護職に就くことは、他の産業より生涯年収が低くなることを表しています。
給与額が低いことは、新卒で介護職に就くのは「もったいない」といわれてしまう原因でしょう。
労働環境が良くないから
介護職は、労働環境が良くないことでも認知されています。
施設勤めの介護職の場合、24時間シフト制の勤務形態となることが多いため、生活リズムが乱れ、体に負担がかかります。
施設によっては休日数が少なかったり、人手不足から頻繁に残業があったりと、しっかりと体を休める時間がとれないこともあります。
さらに、不規則な勤務形態が原因となり、生活リズムの乱れが原因となる不眠や、メンタルの不調が表れたりする人もいます。
労働環境が良くないことは、新卒で就職するには心と体に負担がかかるため「もったいない」といわれる理由になるのではないでしょうか。
専攻した分野の知識を活かせないから
介護業界は就職する際に、学歴を問われることはほとんどありません。
人手不足の影響で、できるだけ早く人材を雇用するために、採用の間口を広げている事業所が多いからです。
大学を卒業した新卒者の場合、専攻した分野の知識は雇用の際にほとんど考慮されず、身に着けたスキルを発揮する場所はありません。
さらには、給与についても学歴は反映されないので、新卒者には特に「もったいない」といわれる理由といえます。
新卒で介護職員になる3つのメリット
新卒で介護業界に就職するのは「もったいない」といわれていますが、実際に就職してみるといくつかのメリットもあります。
- 就職先が見つかりやすい
- 若手のうちから国家資格の取得にチャレンジできる
- 若手のうちから管理職を目指せる
1つずつみていきます。
就職先が見つかりやすい
通常、新卒時の就職活動では、たくさんの会社の面接を受け、何か月も掛けて就職活動をします。
ですが、介護業界に関しては、就職先は比較的見つかりやすい状況です。
なぜなら、介護業界は全体的に深刻な人手不足に陥っているため、多くの事業所が長期的に求人活動をしている現状があるからです。
前職業と、介護関係職種の有効求人倍率を見比べてみましょう。

人手不足が読み取れるデータのひとつに有効求人倍率があります。
上記のように、令和5年3月時点での全職業の最新の有効求人倍率が1.13であるのに対し、介護関係職種については3.63となっています。
この有効求人倍率3.63という数値は、1人の求職者に対して3.63か所の事業所からの求人募集があるということを指しています。
そのため求職活動については、他の業種と比べると比較的内定がもらいやすい状況といえます。
若手のうちから国家資格の取得にチャレンジできる
介護職は、実務経験を通して条件が整えば、国家資格の受験にチャレンジができます。
※その他のルートもあります。
介護職でいう国家資格とは、主に介護福祉士を指すことが多いです。
介護福祉士の受験をするには、4つのルートがありますが、新卒で初めて介護職をはじめた方も受験できる方法があります。
介護福祉士の資格を取得することができれば、自身のスキルアップに繋がったり、転職時にも優遇される場合が多くあります。
新卒で介護職をされる方は、ぜひ介護福祉士の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
介護福祉士になるための受験条件についてくわしく知りたい方は、こちらの記事をご覧下さい。
若手のうちから管理職を目指せる
介護職は、年功序列ではなく、キャリアやスキルがあれば比較的管理職を目指しやすい環境です。
理由は、人手不足の影響から、たくさんの事業所が優秀な人材を採用するために獲得競争をしているからです。
若手であっても、確かな技術やコミュニケーション能力、リーダーシップが優れるなど適材な人材であれば、管理職に抜擢されることもあります。
自身のキャリア形成に興味があり、積極的に挑戦してみたい方は、新卒で介護職をするのをおすすめします。
新卒から介護職をはじめた筆者の体験談
本章では、福祉系専門学校を卒業し、新卒で介護職に就いた筆者の体験談をお伝えします。
- 新卒から介護職をはじめて嬉しかったこと
- 新卒から介護職をはじめてやりがいを感じたこと
- 新卒から介護職をはじめて大変だったこと
- 新卒から介護職をはじめて辛かったこと
1つずつ紹介します。
新卒から介護職をはじめて嬉しかったこと
介護職をしていて、嬉しかったことはたくさんあります。
嬉しかったことの1つは、名前を呼んでもらえたことです。
ご利用者様は高齢者であるため、新人職員の顔や名前を覚えてもらうには、長い時間が掛かります。
ですが、毎日毎日コミュニケ―ションをとる上で、はじめて担当のご利用者様に名前を呼んでもらえたことは、とても嬉しく感じたことを覚えています。
新卒から介護職をはじめてやりがいを感じたこと
新卒で就職する人は、やりがいを感じられる職業であることに魅力を感じるのではないでしょうか。
筆者も同様に、介護職に魅力を感じ、やりがいを求めて就職をしました。
入職して間もなく、入浴を拒否される方を浴室に誘導するといった難しい介助をしなければいけない場面がありました。
入浴の声かけをすると強く拒否される方でしたが、何度か誘導担当としてご利用者様に声かけをしていたことが功を奏し、「わかった、入るわ」と、納得して頂けたことがありました。
少しかもしれないですが、ご利用者様から信頼を獲得できた気になり、やりがいを感じることができました。
新卒から介護職をはじめて大変だったこと
介護職は、楽しいこともたくさんありますが、大変なこともあります。
新卒で介護職についた際に、大変だったことは、ご利用者様それぞれに対して個別のケア方法を覚えなくてはいけなかったことです。
筆者が新卒ではじめて就職したのは介護老人保健施設でした。
介護老人保健施設は、リハビリを重点的におこなう介護施設です。
勤務していた施設では、身体機能はご利用者様ごとにさまざまで、さらには日に日に身体機能の状態が変化していく方も多くいました。
病院を退院すると、そのまま入所されるご利用者様が多い施設形態であるため、病状は落ち着いています。
しかし、入院したことで低下した身体機能が元に戻る前であり、在宅復帰には個別のリハビリやケアが重要になる施設です。
このような施設形態の特徴から、ご利用者様それぞれの事例に個別性があり、おひとりおひとりの身体機能やケア方法を覚えるのに苦労したことを覚えています。
新卒から介護職をはじめて辛かったこと
社会人になると良い経験ばかりではなく、辛い経験をすることもあります。
新卒で介護職をして辛かったことは、体調を崩さないように自身の体調管理をすることでした。
学生の時は、昼に活動し夜に寝るという生活スタイルで過ごしていましたが、介護職になると早番・遅番・日勤・夜勤といったシフト勤務になるため、生活リズムに乱れがでます。
ですが、自分の体調管理をしっかりしなければ、シフトに穴を空け、他の介護職に迷惑を掛けてしまいます。
夜が弱い筆者は、夜勤のシフト時に体のだるさや重たさを感じることが多く、朝までなんとか業務をこなしていたことを覚えています。
遊びに行きたい時も、次のシフトのことを考え、体調を崩すまいとプレッシャーがかかっていたことも思い出します。
新卒で介護職員を目指す方へ!自分にあう職場選びの4つのポイント
新卒で介護職員を目指す際の、職場選びのポイントを4つ紹介します。
介護職員の募集をしている事業所は、たくさんあります。
そういった中で、自分に合っている職場を選ぶため、具体的に確認するべき事をお伝えします。
- 教育制度は整っているか
- 福利厚生や初任給は充実しているか
- 社風や経営方針に共感できるか
- 職場の雰囲気はいいか
1つずつみていきます。
教育制度は整っているか
新卒で入職した後に重要なのは、どのように人材育成がされているかです。
また、人材育成のための整備された教育制度があるかです。
新卒で入社しても、人手不足から業務内容をしっかりと教えられず、早々に独り立ちさせてしまおうとする事業所もあります。
新卒は、社会人経験がないため、ゆっくりと根気強く業務や職場のマナーについて教えていかなくてはいけません。
新卒で介護職への就職を考えている方は、興味がある事業所を見つけたら、教育制度が整備されているか、また、入職後すぐに1人前として業務をこなす必要がないかを、前もって確認しましょう。
福利厚生や初任給は充実しているか
新卒は、待遇面についてもしっかりと把握することが大切です。
例えば、福利厚生は充実しているか、初任給は納得できる内容なのかなど、求人票などで自分が必要とする条件に沿っているのかをしっかりと確認しましょう。
求職者に対して、求人数の方が多い職業であるため、すぐに他の求職者に内定がでてしまう心配も低いため、福利厚生や初任給が適切なのか見極め、十分な時間を掛けて職場を選ぶことをおすすめします。
社風や経営方針に共感できるか
就職先として選ぶ事業所の社風や経営方針には共感できるのかというところも確認した方が良いです。
自分が共感できる社風でないと、入職してから「こんなイメージではなかった」「自分が思うやりたい業務内容ではなかった」と落胆しかねません。
入職前には、事業所のコンセプトや、重視している事柄を必ず把握しましょう。
職場の雰囲気は良いか
新卒で就職先選びに求めるべきことは、職場の雰囲気です。
職場の雰囲気には、そこで働く従業員間のコミュニケーションの濃淡があらわれます。
従業員同士の会話や、距離感、業務上の関わり方とそれ以外のプライベートでの関わり方などから、しっかりと職場の雰囲気を感じ取ることが大切です。
自分がそこの職場に入職したつもりでイメージしてみるといいでしょう。
よくある質問
新卒で介護職に就こうと考えている人向けに、よく聞かれる質問に答えていきます。
ぜひ、ご参考にしてください。
介護現場がどういったところかわかりません
新卒で介護現場に就職しようと検討している際、介護現場がどういった職場なのかイメージできず、不安に感じることもあると思います。
そういった時は、介護施設の見学をしてみることをおすすめします。
また、興味をもった場合には、ボランティアで施設の業務を体験してみてもいいでしょう。
そうすれば、業務を肌で感じることができ、不安なく介護職に就くことができるのではないでしょうか。
仕事をする上で不安を感じることはありますか?
筆者の体験談からお話します。
筆者が新卒で入社する前に不安だったことは、認知症状のあるご利用者様の対応でした。
認知症状は、ご利用者様それぞれに特徴があります。
例えば、脳の血流が悪く、いつも眠たそうにしているご利用様や、顕著な認知症の問題行動があり、夕方から深夜にかけて徘徊をしたり、暴言暴力があったりと、対応もご利用者様それぞれに必要になります。
ただし、そのようなご利用者様のケア方法は、職員間で統一されていることが多いです。
認知症の周辺症状があれば、職員が統一したケアをすることで、症状が改善したり問題行動の抑制ができるため、ご利用者様は落ち着いた生活を送ることができます。
新卒で入社しても、先輩介護職員の方から対応方法を学び、身に着けることで不安を感じずに対応することができるようになりました。
結果、あまり気負いしなくても大丈夫といえます。
新卒で介護職に就くとその後のキャリアにも良い影響がある
新卒で介護職に就くと「もったいない」といわれる風潮がありますが、メリットもたくさんあります。
将来の日本社会は、超高齢化社会から逃れられないため、介護職は必要不可欠な職業です。
そのため、今後もたくさんの職場の中から、求職者側がじっくりと就職先を選べるというメリットもあります。
また、介護職は、管理職へのキャリアアップも期待できる職種であり、優秀な介護職員は自分のやる気次第でスムーズに昇進していくことができます。
新卒で介護職に就くということは、「もったいない」どころか、日本社会の期待を背負うことになるでしょう。
新卒で自分にあった職場を探す時には、支援サイトの活用が有効です。
「介護転職のミカタ」では、専門のコンサルタントが施設探しから入職までのサポ-トをしてくれるため、安心して就職活動ができます。
新卒の就職活動でも、十分なサポートが受けられますので、興味のある方はぜひご相談してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いたのは・・・

小玉 有紀/Webライター
保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/介護事務士
福祉系専門学校を卒業したのち、老健で介護福祉士として6年勤務。生活相談員を経験したのち、ケアマネージャーとして5年経験。現在は育児のかたわらライターとして活動中。