訪問入浴とはどんな仕事?1日の流れや仕事内容を徹底解説

「訪問入浴とはどんな仕事?」
「訪問入浴の1日の流れが知りたい!」
本記事では上記のような悩みを抱えている方に向けて、訪問入浴の仕事内容や1日のスケジュールを解説します。

本記事を読むことで、訪問入浴の仕事が向いているかどうかの判断材料になるでしょう。訪問入浴での勤務に興味がある方は、最後までチェックしてください。

訪問入浴とは?

自宅の浴槽で入浴することがむずかしい高齢者や障がい者のために、介護専用の浴槽や機材を自宅へ持ち込み、入浴サービスを提供するのが「訪問入浴」です。
ご利用者様が有意義な生活をするための大切なサービスであり、在宅で介護を受ける方にとって大切な役割を担っています。

訪問入浴は、通常看護師1名と介護職員2名で構成される3人1組のチームで行動することが一般的です。自宅で入浴をおこなうことで、身体を清潔に保つだけでなく、リラックス効果や気分転換にもつながります。

訪問入浴の仕事内容について

訪問入浴の仕事内容は、具体的に以下の段階に分けられます。

  • バイタルチェック
  • 浴槽の準備
  • 入浴介助の実施
  • 整容と更衣介助の実施
  • 浴槽の片付け
  • 次の訪問先の準備

それぞれの工程についてくわしく解説するので、訪問入浴の仕事に興味がある方は最後までチェックしてください。

バイタルチェック

ご利用者様の安全を考慮して、入浴前に看護師によるバイタルチェックをおこないます。具体的には以下の項目を確認します。

  • 血圧チェック
  • 体温チェック
  • 脈拍・呼吸の確認
  • 全身状態の観察
  • 褥瘡(床ずれ)や皮膚トラブルの確認

バイタルチェックは、介護現場で入浴をするときには必ずおこなう内容です。介護職員が担当しても良い内容なので、確認している内容や方法は把握しておきましょう。

浴槽の準備

訪問入浴では、組み立て式の浴槽を持参して組み立てます。
浴槽の準備で実施する内容は、以下の項目です。

  • 浴槽の搬入と組み立て
  • 給水・排水ホースの接続
  • お湯はりと温度調節(通常38〜40度)
  • シャワーや洗浄用具の準備
  • プライバシー保護の環境整備

訪問入浴は、自宅の浴槽で入浴できない方が利用することがほとんどです。そういった理由から、自宅の一室で浴槽を組み立てたあとに、車に積んだボイラーで温めたお湯を浴槽に入れて入浴介助をおこないます。

入浴介助の実施

ご利用者様の状態に合わせて入浴介助を実施します。具体的な介助内容は以下の5つです。

  • 体を洗う(特に皮膚のひだ部分など)
  • 頭を洗う
  • 浴槽への入浴・出浴介助
  • 湯船につかる時間の調整
  • 体調変化の観察(適宜実施)

入浴時間はご利用者様の状態に応じて5〜10分程度が適切とされています。入浴は、ご利用者様の生活に良い影響を与える大切なサービスのため、適切な温度と時間を守って提供すると良いでしょう。

整容と更衣介助の実施

ご利用者様に気分よく過ごしていただくために、入浴サービス前後の更衣介助と整容はていねいにおこなうことが大切です。具体的なサービス内容は以下にまとめました。

  • 脱衣・着衣の更衣介助
  • タオルでの水分拭き取り
  • 身体状態の観察(皮膚の状態など)
  • 必要に応じた保湿剤の塗布
  • 髪の乾燥

皮膚トラブルを改善するために、ご利用者様のほとんどが保湿剤を塗布しています。
定期的な保湿対策をおこなうことで肌が傷つきにくくなるなどの効果もあるため、状況に応じて忘れずにおこなうようにしましょう。

浴槽の片付け

入浴を終えた後の片付けも大切な業務の1つです。使用後の浴槽や道具の片付け、清掃をおこないます。

  • お湯の排水
  • 浴槽の解体と洗浄
  • 使用した道具の消毒・清掃
  • 床の水気の拭き取り
  • 次回の訪問に関する説明や日程確認

組み立て式の浴槽や備品は1日に数回利用するため、都度洗浄して清潔な状態を保ちましょう。
ご利用者様に気持ちよく入浴していただくために、1つ1つていねいにメンテナンスすることが大切です。

次の訪問先の準備

訪問入浴は1日に3〜5件の訪問が一般的です。次の訪問先のためにおこなう内容を、以下にまとめました。

  • 車両へ浴槽や機材の積み込み
  • 水の補給と排水
  • 移動中の記録作成
  • 次のご利用者様の情報共有と確認
  • 訪問先の道順把握

訪問入浴のサービスは、現場で対応することが多いため慣れるまでは大変かもしれません。
ただし、1つ1つ着実に身に付けることで介護職員として成長できるので、スキルアップしたい方におすすめの仕事といえます。

訪問入浴の1日の流れ

訪問入浴の仕事は、現場に行く前の準備から始まります。訪問入浴の一般的な1日の流れを以下にまとめました。訪問入浴の仕事を検討している方は、ぜひチェックしてください。

時間仕事内容
8:30出社
8:30~9:00【朝のミーティング】
その日の訪問先の把握、共有
必要な物品の準備、車両の点検
9:00~9:30出発・移動
9:30~10:30【1件目の訪問】
ご自宅到着・挨拶・準備(約15分)
入浴介助(約30分)
片付け・記録(約15分)
10:30~11:00移動・休憩
11:00~12:00【2件目の訪問】
1件目と同様の流れ
12:00~13:00昼食・休憩
13:30~14:30【3件目の訪問】
1件目と同様の流れ
14:30~15:00移動・休憩
15:00~16:00【4件目の訪問】
1件目と同様の流れ
16:00~17:30【帰社・事務作業・ミーティング】
記録の整理、翌日の準備
ご利用者様の情報共有、振り返りミーティング
17:30退社

上記のスケジュールは、一般的な訪問入浴のスケジュールをまとめたものです。事業所によっては、1日に5〜8件ほど訪問する場合もあります。
細かい部分は会社によって異なりますので、1日の業務内容が気になる方は面接のときに確認してみることをおすすめします。

訪問入浴と訪問介護の入浴介助の違い

訪問入浴と、訪問介護の入浴介助は、大きく異なります。具体的な違いを以下にまとめました。

訪問入浴訪問介護
職員配置看護師1名+介護職員2名の3名体制が基本介護職員1名での対応が基本
入浴環境専用の組み立て式浴槽を持参して使用ご利用者様の自宅の浴室を使用
サービス時間1回約60分
(準備・片付け含む)
30分~60分程度
(身体介護の一部として実施)
対象者重度の要介護者や寝たきりの方が中心比較的自立度の高い方も対象
利用料1回当たりの定額制進退介護の時間単位での算定

上記のように、訪問入浴は専門性に特化しており、ご利用者様も介護度の高い方が多いです。
対して、訪問介護の入浴はあくまで訪問介護サービスの一部であり、自立度の高い人がメインのため、違いを理解して勤める必要があるでしょう。

訪問入浴で働くために必要な資格とは?

訪問入浴で働くためには、看護師と介護職員で必要な資格が異なります。具体的にどのような違いがあるのかまとめたので、以下の表を参考にしてみてください。

看護師介護職員
必要な資格正看護師または准看護師資格無資格でも勤務可能
あると望ましい資格普通自動車運転免許(あると望ましい)
AEDや救命救急の講習受講
普通自動車運転免許
(必要なことが多い)

普通自動車運転免許は、必須というわけではありません。
ただし、所持していることで有利に働く可能性があるため、持っている場合は履歴書などに記載するようにしましょう。

訪問入浴中によくあるトラブルと対処法

訪問入浴でよくある、代表的なトラブルは以下の3つです。

  • 入浴の拒否
  • 体調の変化
  • 機材のトラブル

訪問入浴の現場では、上記のようなトラブルが定期的に見受けられます。
本章を確認することで、トラブルに直面したときに落ち着いて対処できる可能性が上がります。気になる方は、今後のスキルアップのために一読ください。

入浴の拒否

ご利用者様が入浴を拒否する多くの理由は、入浴することが面倒であるということを耳にするでしょう。
他にも、他人に体を触られることや異性に介助されることへの拒否感などもあります。万が一、拒否されたときは以下のような対応を心がけてみて下さい。

  • 無理強いはせず、理由を傾聴して解決できる問題であれば対応する
  • 家族やケアマネジャーと連携して、状況解決について相談する
  • 清拭(からだを拭く)など代替案を提案する
  • 次回に向けて好みや希望を記録して、様子を把握しておく

介護現場での入浴拒否は、比較的頻繁に起こります。無理に入浴を強要したりすると、さらに拒否が強くなりサービスの提供が難しくなります。
拒否の頻度はご利用者様によって個人差もあるため、どのようにすれば入浴していただけるかなどを職員間で共有しておくと、よりスムーズなサービス提供につながるでしょう。

体調の変化

ご利用者様の入浴は、急な体調変化を起こす場合があります。よくある症状は以下の通りです。

よくある症状と対処法

症状対処法
血圧上昇すぐに浴槽から出して、安静にして看護師が対応する
めまい・ふらつきすぐに椅子などに座っていただき、水分補給と休息を実施する
息切れ入浴を中止し、楽な姿勢で安静にする
皮膚の異常発見したら看護師に共有する
意識低下緊急時のため、すぐに看護師に報告して対処する

ご利用者様は、長湯を楽しまれる方もいらっしゃいます。実際の介護現場でも、長湯や入浴時の寒暖差で体調を崩したり、最悪の場合意識消失する方もいます。
室温の調節に気をつけながら、ご利用者様の様子観察を欠かさずおこなうことが大切です。

機材のトラブル

訪問入浴の仕事をするうえで、浴槽などの機材トラブルは業務に大きな影響を与えます。よくあるトラブルは以下の5つです。

トラブル対処法
浴槽の水漏れ呼びのパッキンで対応し、修理が難しい場合は清拭に切り替える
給水・排水の問題ホースのつまりを確認して、改善が無い場合は予備のホースを使用する
お湯の温度調節不良湯温計で確認し、必要に応じて追い炊きまたは水で調整する
浴槽の組み立て不具合予備部品での対応、無理な場合は事業所に連絡して指示を仰ぐ
車両トラブルロードサービスを利用、事業所に応援を要請する

サービス提供直前に機材が故障すると、入浴を楽しみにしていたご利用者様も残念な気持ちになるでしょう。機材の定期的な整備と動作確認をするなど、トラブルを未然に防ぐことができるようにしましょう。

訪問入浴へ転職するときに気をつけたいポイント

訪問入浴の仕事を始めるうえで、職場環境のいい職場で働きたいと思うのは自然なことです。
本章では、より良い職場に転職するために押さえておきたいポイントを3つ紹介します。これから転職活動を始める方は、最後までチェックしてください。

面接時の雰囲気

面接を担当してくれる面接官の雰囲気や対応は、会社の文化を反映していることが多いです。なかでも押さえておきたいポイントをまとめました。

  • 質疑応答の丁寧さと具体性
  • 施設内見学を快く申し受けてくれるか
  • 勤務体制や休暇取得の実態を教えてくれるか
  • 面接官の表情と雰囲気(面接官の表情が疲れていないかどうかなど)

勤務してから直属の上司になる人が、同席する可能性があります。
受け答えに必死で難しいかもしれませんが、面接官がどのような人なのか表情や雰囲気を観察することをおすすめします。

会社の口コミや評判

昨今はSNSや、ネットの情報が拡散されています。そのような環境を活かして、転職前に会社の評判をリサーチして、判断材料の1つとして使用するのも良いかもしれません。例えば、SNSでの検索や、実際に勤めていた人の声を聞くのも、判断材料になります。

まとめ

本記事では、訪問入浴の転職を検討している方に向けて、具体的な業務内容や1日の流れ、転職するうえで押さえるべきポイントを中心に解説しました。

訪問入浴は、在宅で暮らす要介護者にとって欠かせないサービスであり、介護職員にとってもやりがいのある仕事です。無資格からでも挑戦できますが、比較的介護度の高いご利用者様にサービスを提供する機会が増えるため、介護技術のスキルアップにも役立つでしょう。

介護の仕事を検討している方、キャリアアップを考えている方は、訪問入浴の仕事も視野に入れて転職活動することをおすすめします。

この記事を書いたのは・・・

かきざき/Webライター

保有資格:介護福祉士/終活ガイド1級/エンディングノートセミナー講師/食品衛生責任者
介護福祉士として介護職を13年経験。ライター歴3年。
特養でのユニットリーダー経験や、珍しい定期巡回の経験を活かして記事執筆しています!