介護職のキャリアアップとは?長く働き続けるためにすべきこと

介護職員の中には「この先もずっと介護の仕事を続けられるかな」「もっとお給料を上げたいな」など、将来について考える人もいるでしょう。

介護職は心身への負担がかかりますが、やりがいや喜びが大きい仕事です。将来を見据えてキャリアアップを目指せば、給料アップや仕事の幅が広がり、より長く活躍できる可能性が高まります。

この記事では、介護職のキャリアアップを目指す人に向けて、キャリアアップの具体例や役立つ資格、利用できる支援制度などを紹介します。将来の選択肢を広げるヒントとして、参考にしてみてください。

介護職のキャリアアップとは

キャリアアップとは、自分のスキルを磨き、給料や役職を上げることです。ここでは、キャリアアップの定義やメリットについて、わかりやすく解説します。

キャリアアップの定義と目的

キャリアアップは、資格の取得や、昇進、異なる職種への転職を通じて、自分の専門性やスキルを高め、給料アップにつなげる意味があります。

介護業界における、キャリアアップの目的は以下が挙げられます。

  • 利用者やその家族の役に立ちたい
  • 収入をアップさせて生活を豊かにしたい
  • 今よりもさらに専門的な知識を身につけてできることを増やしたい

キャリアアップを成功させるには、目的とゴールの明確化が不可欠です。将来の自分をイメージし、介護職員としてのキャリアアップを目指していきましょう。

介護職における主なキャリアパスの種類

キャリアパスとは、目的とするキャリアの道筋です。資格や役職など、自分が目指すゴールに到達するまでの手段や順序を明確にするものと考えてみてください。

介護職におけるキャリアパスは、大きく分けると「昇進」と「専門職への移行」の2つです。

昇進

現場で働くスタッフから、リーダー職や管理職へ昇進するキャリアパスです。ご利用者様に対する介護業務に加え、新人教育やシフト管理、他部署との連携など、責任のある仕事が増えます。

長く勤めて経験を積めば、施設運営や人材育成に関わるなど、より責任ある仕事に従事できます。マネジメントが好きな人は大きなやりがいを感じられるでしょう。

資質を認められれば、経験が浅くともポテンシャルを見込んで早めにリーダー職を任されるケースもあります。

筆者が相談員として勤務していた施設では、入職1年で副主任になった介護職員がいました。前職の接客経験や、業務への姿勢が認められての抜擢でしたが、先輩の職員や介護主任のフォローで立派に副主任を務める姿が強く印象に残っています。

専門職への移行

保有資格や新しく取得した資格を活かし、介護職以外の専門職へ移行するキャリアパスもあります。

介護福祉士であればケアマネジャーの受験に役立ちますし、福祉住環境コーディネーターであれば、福祉用具専門販売員や建築関係の企業への転職も視野に入ります。

また、医療機関で働く介護職員であれば、看護師へのキャリアアップも身近なものとして考えられるでしょう。

看護師へのキャリアアップについて詳しく知りたい人は、以下の記事も読んでみてください。

介護職のキャリアアップにおけるメリット・デメリット

キャリアアップには、以下のようなさまざまなメリットやデメリットがあります。

メリット説明
給料アップ資格手当や役職手当がつき収入が増える
やりがいの向上より責任のある仕事や専門的な仕事に携わり、やりがいや満足度が高まる
信頼の獲得学ぶ姿勢を崩さず業務に取り組み、職場や同僚からの信頼を得る
将来の安定専門的な知識やスキルの獲得で、昇進や転職活動が有利になる
デメリット説明
責任の重さ新人教育や施設運営などマネジメント的な業務が増え、責任の範囲が広がる
研鑽のコスト上位資格を取得するための受験料や参考書代など、多くの費用と学習の時間が必要
職場での制約キャリアパスが整備されていない職場では、キャリアアップに向けた努力が評価されないケースもある

キャリアアップは、場合によってはデメリットを感じる場合もあります。しかし、自分の将来をより豊かにするために欠かせない取り組みです。

同じ職場で長く働きたい人も、別の場所で力を発揮したい人も、介護の経験を活かすためのキャリアプランを描いてみましょう。

介護職で目指せるキャリアアップの具体例

ここでは、介護職で具体的にどのようなキャリアアップができるのかを解説します。

現場スタッフからリーダーになる

現場で働くスタッフから、チームのリーダーやフロア責任者などの役職に就く流れは、よく見られます。

仕事内容は、スタッフへの指示出しやシフト管理、新人指導、会議の手配などさまざまです。現場での介護経験を活かし、サービスの質を高める役割を担います。

視野の広さが求められる立場で、全体の業務の流れやスタッフの様子にも細かな気配りが必要です。

リハビリや福祉用具など別の分野へ進む

介護の知識を活かして、リハビリスタッフや福祉用具専門販売員など、別の分野へ進み、キャリアアップを図ることもじゅうぶん可能です。

介護職から別分野へのキャリアアップは以下が考えられます。

  • 看護師
  • 介護施設の相談職
  • 地方自治体の福祉職
  • 福祉用具メーカーの営業職
  • 理学療法士などのリハビリ職

介護職として培った知識や経験は、こうした専門職で大いに役立ちます。

ケアマネを取得してサービスの調整を担う

ケアマネジャーへの移行も、介護職のキャリアアップとしてよく見られる流れです。

ご利用者様やご家族の希望を汲み取り、介護サービスを組み合わせたケアプランを作成します。いわば、ご利用者様と介護サービス事業者の橋渡し役です。

ケアマネジャーになるためには、介護福祉士など国家資格の保有、実務経験など受験資格を満たす必要があります。研修の受講や資格の更新などが必須ですが、現場での経験を活かしやすい仕事です。

筆者の経験談

筆者は介護職としてのキャリアを病院でスタートさせました。前職は事務員、介護の経験は祖母の在宅介護のフォロー程度です。

しかし、入職当時から明確な目標がありました。

介護職員として現場の経験を積み、数年後に社会福祉士を取得して相談員になると決めていたのです。

最初の雇用形態はパートタイマーで、時給は900円でした。入職してすぐに介護職員初任者研修の受講を求められ、週の半分が研修、半分は病院の勤務と、なかなかタイトなスケジュールだった記憶があります。

しかし、介護職員初任者研修の受講後、翌月から資格手当が付くようになりました。さらに入職1年を迎えた月に正職員に登用され、ボーナスも増えて年収が大きくアップしたため、経済的にとても助かったのを覚えています。

3年の実務経験を積み、介護福祉士に合格。さらに資格手当が増額となり、夜勤の戦力としても認められ、入職4年後にはパート時代の年収を大きく超えました。

4年後と聞くと先が長そうですが、実際には毎年きちんと昇級があり、仕事への意欲や取り組みについても評価していただけたと思っています。

少し時間はかかるかもしれませんが、介護職のキャリアアップはじゅうぶん可能です。自らのレベルを上げるための努力は必ず実ります。毎日の仕事に誠実に取り組み、知識や介護技術のアップデートを心かげていきましょう。

介護職のキャリアアップに役立つ資格

ここでは、介護職のキャリアアップに役立つ、おすすめの資格を紹介します。

  • 介護職員初任者研修
  • 介護福祉士実務者研修
  • 介護福祉士
  • ケアマネジャー
  • 社会福祉士
  • 精神保健福祉士
  • 認定介護福祉士

順番に見ていきましょう。

介護職員初任者研修

介護職員初任者研修は、介護の仕事をはじめる人が最初に取得する入門資格です。基本的な介護の知識や技術を身につけられます。

多くの介護施設や医療機関では無資格でも介護職員として働けますが、初任者研修を受けて資格を取れば仕事の幅が広がり、給料も上がる傾向です。

筆者も無資格で介護の仕事に就きましたが、すぐに介護職員初任者研修を受講し、約3ヶ月で資格手当をいただけるようになりました。当時はパート勤務でしたが、初任者研修の受講後の人事編成で正職員登用され、給与アップを叶えています。

介護福祉士実務者研修

介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修よりもさらに専門的な内容を学びます。介護福祉士の国家試験を受けるためには、実務者研修の修了が必須です。

訪問介護事業所のサービス提供責任者は、介護福祉士や介護福祉士実務者研修の修了が条件となっています。

介護福祉士

介護福祉士は、介護分野で唯一の国家資格です。介護福祉士の保有は、高い専門知識と技術を持つ介護の専門家であると証明してくれます。

資格を取得すると、給料アップや昇進につながりやすいです。介護職のキャリアアップには欠かせない資格といえるでしょう。

筆者も介護福祉士を取得してから、新人育成に関わったり年収が上がったりと、キャリアアップを実感しました。介護のプロを目指す人には避けて通れない資格かと思います。

ケアマネジャー

ケアマネジャーは、介護の必要がある方やご家族様の相談に乗り、ケアプランを作成する専門職です。介護サービスを提供する事業所との連絡調整や、行政機関での手続きなど、幅広い業務を担います。

ケアマネジャーの仕事に興味がある人は、以下の記事も参考にしてみてください。

社会福祉士

社会福祉士は、身体や精神に障害がある人、生活が困窮している人など、支援を必要とする人たちの相談に乗り、問題解決に向けて支援します。高齢者分野にとどまらず、福祉の世界で幅広く活躍できる国家資格です。

介護施設だけでなく、医療機関や行政機関、発達支援センターなどでも需要があります。現場の仕事から、より広い視野で福祉の仕事を捉えたい人におすすめです。

精神保健福祉士

精神保健福祉士は社会福祉士・介護福祉士と並ぶ国家資格で、心の病や障害を抱える人の生活を支えます。医療機関や福祉施設などで、相談援助や生活支援、就労支援を通じ、社会復帰を後押しするのが仕事です。

ご本人だけでなく、ご家族へのサポートも必要です。医師や看護師、心理士などさまざまな職種と連携し、安心して暮らせる環境づくりを担います。

認定介護福祉士

認定介護福祉士は、介護福祉士の上位資格です。介護福祉士として5年以上の実務経験、指定された研修の修了など、認定を受ける条件があります。

より高い専門知識と技術を持ち、サービスの質を高める介護職員として、リーダーや教育者の立場でも活躍できます。介護のプロフェッショナルとして、ご利用者様のQOL向上を目指したい人におすすめです。

資格取得や研修に活用できる支援制度

介護職員が資格取得や研修の受講をする際、使える主な支援制度を紹介します。

  • 教育訓練給付制度
  • 修学資金貸付制度
  • 職場の支援制度

1つずつ見ていきましょう。

教育訓練給付制度

教育訓練給付制度は、働く人の能力開発を支援し、雇用の安定と再就職を促進する厚生労働大臣が定めた制度です。介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修など、指定された講座を修了すると、受講料の一部が国から給付されます。

制度を利用すると経済的な負担を抑えられ、キャリアアップに必要な資格取得に集中できるでしょう。給付金額は講座によって異なり、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修は最大50%(上限が25万円)とされています。

修学資金貸付制度

修学資金貸付制度は、これから介護福祉士や社会福祉士などをめざす人に対して、無利子で修学資金を貸与する制度です。進学先によって支援内容はさまざまですが、主に入学支度金や月額の授業料に関する貸付を受けられます。

卒業後、介護職として一定期間働くと、返済の全額免除が可能です。経済的な理由で資格取得を諦めていた人にとって、大きな助けとなるでしょう。

職場の支援制度

多くの介護事業所では、介護職員のキャリアアップを積極的に支援しています。資格取得にかかる費用や、研修に参加する費用を補助したりする制度など、職場によって支援内容はさまざまです。

入職前に、どのような支援制度があるのかを確認しておきましょう。支援制度の有無で、人材育成に対する考え方もある程度つかめます。

介護職のキャリアプランを立てるステップ

介護職員がキャリアアップするには、キャリアプランを描く必要があります。キャリアプランは、今後どのようにステップアップしていくかを表す地図のようなものです。

【キャリアプランのステップ】

①自分の将来像を明確にする

②必要な資格や研修を確認する

③職場内でのキャリアアップの可能性を探る

④上司や同僚に相談して方向性を固める

⑤今の職場でキャリアアップが難しければ転職を検討する

漠然と「こうなりたい」と考えているだけでは、資格取得や転職の時期を逃してしまうかもしれません。効率よくキャリアアップを実現するために、順序立ててキャリアプランを作りましょう。

①自分の将来像を明確にする

まずは、3年後、5年後にどうなっていたいかをイメージしましょう。

【目標の例】

  • 年収を○○万円上げたい
  • リーダーになってチームをまとめたい
  • 介護福祉士の資格を取って専門性を高めたい

目標が明確になれば、自然とやるべきことも見えてきます。キャリアアップへのモチベーションも高まるでしょう。

②必要な資格や研修を確認する

次に、思い描く将来像に近付くために、どのような資格やスキルが必要かを確認します。                                                                                                                                                                                                  

例えば、ケアマネジャーであれば介護福祉士の資格と実務経験が必要です。社会福祉士や精神保健福祉士であれば、養成校に入ったり、実習を受けたりしなければなりません。

インターネットでの情報収集や職場の先輩からのアドバイスをとおして、目標を達成するための資格や研修をリストアップしていきましょう。

③職場内でのキャリアアップの可能性を探る

今の職場でキャリアアップを目指すなら、昇進の条件や推奨される研修があるか把握しましょう。職場の支援制度がわかると、効率的なキャリアアップを実現できます。

職場によっては「リーダー職に昇進するには○年の経験が必須」など、はっきりした基準を設けているケースも少なくありません。

「今以上に職場に貢献したい」と希望を伝えて、職場の支援制度を上手く活用し、キャリアアップにつなげていきましょう。

④上司や同僚に相談して方向性を固める

キャリアプランを立てるうえで、上司や同僚の理解と協力は不可欠です。自分の目指す方向性を上司に伝えて助言をもらえば、より現実的なキャリアプランを立てられます。

自分のロールモデルとなる上司や先輩がいる場合は、積極的に相談してみましょう。同じ目標を掲げる同僚との情報交換もおすすめです。お互いに励まし合い、モチベーションを維持できます。

⑤今の職場でキャリアアップが難しければ転職を検討する

今の職場で「キャリアアップのチャンスがない」「給料が上がらない」と感じる場合は、転職もひとつの手です。ただし、安易に転職を決めるのはおすすめしません。

自分が今の職場で最大限の努力ができているか、本当にキャリアアップができない環境なのかを見極めましょう。

そのうえで「やっぱり転職したい」と感じたら、キャリアアップできる環境や待遇を重視して求人情報を探してみてください。

転職にはエージェントを活用しよう

転職を視野に入れたいと思ったら、介護職に特化した転職エージェントを活用してみましょう。介護転職エージェントには、以下のメリットがあります。

  • 非公開求人を紹介してもらえる
  • 希望に合った求人を効率よく探せる
  • 給料などの条件交渉を代行してもらえる
  • 書類の添削や面接対策のサポートを受けられる
  • 入職後のアフターフォローを受けられる

介護転職のミカタ」でも、あなたのキャリアアップをしっかりサポートいたします。上手に活用して、理想のキャリアを手に入れてください。

まとめ

介護職員がキャリアアップするには、将来を見据えたキャリアプランと、目標を達成するためのスキルアップが欠かせません。キャリアアップの方法は、資格取得や昇進、別の専門職への転職など、さまざまです。

まずは、自分の将来像を明確にし、必要な資格や研修を調べてみましょう。国や職場が提供する支援制度も上手に活用すれば、経済的な負担を減らせます。

もし、今の職場でキャリアアップが難しいと感じた場合は、転職もひとつの選択肢です。

転職活動を効率よく進めてより良い職場を見つけるためには、介護職専門の転職エージェントをおすすめします。

書類添削や面接対策などの手厚いフォローを受けながら、あなたの望むキャリアパスを実現させましょう。

この記事を書いたのは・・・

佐藤 恵美/Webライター

保有資格:介護福祉士/社会福祉士
回復期リハビリ病棟で7年勤務したのち、社会福祉士を取得し、
生活相談員を経験。現在はフリーのWebライターとして活動中。