「介護の仕事にやりがいは感じているけど、この先のキャリアはどうしよう」
介護の仕事を続けていると、将来のキャリアプランについて考え、悩む方も多いのではないでしょうか。介護職員の次のステップとしてケアマネジャーを目指す方はいても、上位資格である「主任ケアマネ」についてイメージできる方は少ないかもしれません。
本記事では、主任ケアマネの仕事内容やなることのメリット、そして介護職員から目指すためのなり方まで分かりやすく解説します。あなたのキャリアプランの新たな選択肢が見つかるため、ぜひ最後までお読みください。
この記事の内容
主任ケアマネとは、ケアマネジャーをまとめる地域の頼れるリーダー
主任ケアマネとは、ケアマネジャーの上位資格にあたる専門職で、豊富な経験と知識を持つリーダー的な存在です。
その役割は、個別の支援にとどまりません。ケアマネジャー全体のスキルアップを図り、事業所や地域全体の介護サービスの質を向上させることが主な目的です。
具体的には、新人のケアマネジャーへの指導や助言(スーパーバイズ)をはじめ、医療・福祉といった多職種と連携して困難な事例に対応します。
さらに、地域ケア会議などで地域の介護課題を解決に導き、高齢者が安心して暮らせる「地域づくり」に貢献することも重要な仕事です。
主任ケアマネとケアマネジャーの4つの違い
主任ケアマネはケアマネジャーの上位資格です。個別の支援が中心のケアマネジャーに対し、主任ケアマネはより広い視点が求められます。ここでは両者の違いを4つのポイントで解説します。
1.役割と業務範囲
ケアマネジャーが個々の利用者を支援する専門職であるのに対し、主任ケアマネはケアマネジャーを指導し、地域全体の介護の質を向上させるリーダーです。
個別のケース対応で得た知見を、より広い視点で地域へ還元することが求められるためです。通常のケアマネジャー業務に加え、後輩への助言(スーパーバイズ)や困難事例への対応、多職種連携の調整役といった、より広い業務を担います。
2.資格要件と更新制度
主任ケアマネになるには、ケアマネジャー資格を保有し、「主任介護支援専門員研修」を修了する必要があります。
豊富な実務経験に裏付けられた高度な指導力が求められるため、受講には一定期間の実務が必須です。研修受講の要件は、原則として専任ケアマネで通算5年以上の実務経験があり、資格取得後も5年ごとに更新研修を受けなければなりません。
なお、ケアマネジャーや主任ケアマネの受験要件については、別記事「ケアマネジャーになるには?受験資格や合格率について徹底解説」をご参照ください。
3.事業所での配置義務
主任ケアマネは、質の高いサービス体制を確保するため、国が地域包括支援センターや居宅介護支援事業所の管理者としての配置を定めています。
資格保有者の需要が高く、転職で有利になるのはこのためです。また「特定事業所加算」の算定要件にもなっており、活躍の場は広いです。
4.平均年収
高度な専門性や指導的役割が評価され、資格手当や管理者手当などが加算されるため、主任ケアマネの年収は一般のケアマネジャーよりも高くなる傾向にあります。
厚生労働省の調査によるとケアマネジャーの平均年収が約429万5,900円に対し、主任ケアマネは450万円〜500万円程度が相場です。管理者になれば年収500万円以上を目指せます。
なお、主任ケアマネの年収については、別記事「主任ケアマネジャーの年収は高い?収入アップの方法もあわせて紹介」を参照してください。
主任ケアマネの具体的な仕事内容|何ができる?
主任ケアマネは、ケアマネジャーの指導や困難事例への対応、地域づくりなど、より専門的で広い視点が求められる業務を担います。ここでは、具体的な3つの仕事内容を解説します。
スーパーバイズによるケアマネジャーの育成・指導
主任ケアマネの重要な仕事のひとつが、新人を含む地域のケアマネジャーを指導・育成し、全体の質の底上げを図る役割です。地域の介護サービスの質は個々のケアマネジャーのスキルに左右されるため、専門的な視点からの助言が必要です。
- 後輩の相談に乗る
- OJTで同行訪問する
- 事例検討会を企画する
このような取り組みを通じて、地域全体のケアマネジャーのスキルアップを支援します。
個別事例を通じた困難事例への対応と助言
ひとりのケアマネジャーでは対応が難しい複雑なケースに対し、豊富な経験と知識で解決に導くのも主任ケアマネの役割です。
医療・福祉など多職種との連携や、虐待や貧困のように倫理的な課題が絡む事例では、より高度な専門知識と調整能力が不可欠になります。
例えば、誰もが必要だと判断する支援を「まだ大丈夫」とご本人が強く拒否しているケースでは、医師やヘルパーなど関係者と相談し「どうすればご本人の意向を尊重しつつ、必要性を理解してもらえるか」という説明方法そのものを議題にします。
それぞれの専門職の視点から伝え方を議論し、ご本人が納得できる形での支援につなげる、といった難しい調整役を担います。
多職種が集まる地域ケア会議で中心となって解決策を協議したり、後輩ケアマネジャーの相談に乗り具体的な助言をおこなったりします。
地域包括ケアシステムの構築(地域づくり)への貢献
個別の支援にとどまらず、高齢者が安心して暮らせる「地域づくり」に貢献するのも重要な仕事です。
介護・医療・福祉・住民の協力を含めた包括的な支援ネットワーク(地域包括ケアシステム)の構築において、その中心的な役割を担います。
地域の介護課題を行政などと連携して解決に導いたり、認知症カフェの設立といった新たな社会資源を開発したりすることも大切な業務です。
主任ケアマネになるメリット
主任ケアマネの資格取得は、自身のキャリアを大きく飛躍させるチャンスです。ここでは、やりがいや給与、転職の観点から、4つのメリットを解説します。
地域の介護福祉に貢献できる
個別の支援にとどまらず、地域全体の介護福祉に貢献できるのが大きなメリットです。
主任ケアマネは、高齢者が安心して暮らせる「地域包括ケアシステム」の中核を担う人材です。
後輩の成長支援や多職種連携の要となり、地域の課題解決を主導するなど、地域の頼られる存在として大きなやりがいを感じられます。
給与アップとキャリアアップが見込める
給与アップや管理者などのキャリアアップに直結するのもメリットのひとつです。
資格手当や役職手当が加算され、専門職としての価値も高く評価されるためです。
年収は450万円〜500万円が相場となり、事業所の管理者などキャリアの選択肢も広がります。
配置義務により転職で有利になる
居宅介護支援事業所の管理者や地域包括支援センターなど、主任ケアマネの配置が義務付けられている事業所もあるため、転職で有利になります。
地域包括支援センターや事業所の管理者として働けるほか、好条件の求人も多くあります。
60代からでも目指せる
主任ケアマネになるのに年齢制限はなく、60代からでも目指せる専門職です。
豊富な経験が重視されるため、実際に60代や70代で第一線で活躍している方も多くいます。ただし、事業所によっては嘱託職員としての採用など、雇用形態が異なる場合があります。
転職の際は、事前に労働条件をしっかり確認しましょう。
主任ケアマネが活躍できる場
主任ケアマネの活躍の場は、配置義務のある以下の事業所が代表的です。
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所
また、直接的な配置義務はありませんが、指導的な役割を期待されて以下の事業所でも採用される場合があります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設(老健)
- 小規模多機能型居宅介護
- グループホーム
- 有料老人ホーム
将来を見すえ、資格取得を支援してくれる事業所へ転職するのも有効なキャリアプランです。
介護職員から主任ケアマネになるまでのロードマップ
介護職員から主任ケアマネになるには、段階的なステップが必要です。無資格からだと最短13年かかる道のりです。ここでは、具体的な4つのステップを解説します。
step1.介護福祉士になる
主任ケアマネを目指すには、まずケアマネジャーの受験資格を得る必要があります。
ケアマネジャーの受験には、介護福祉士のような国家資格に基づく5年以上かつ900日以上の実務経験が求められます。
そのため、介護職員は、まず実務経験3年以上などの要件を満たして介護福祉士の国家試験に合格するのが一般的なルートです。
step2.ケアマネジャーになる
介護福祉士として5年以上の実務経験を満たしたら、ケアマネジャーの資格を取得します。
試験に合格し、その後の実務研修の修了が必要です。試験で専門知識を、研修で実践スキルを学ぶ二段階のプロセスです。
研修修了後、晴れてケアマネジャーとして働けるようになります。
step3.主任ケアマネになる
ケアマネジャーとして原則5年以上の実務経験を積むと、主任ケアマネを目指せます。
試験はなく「主任介護支援専門員研修」を修了することで資格を得られます。試験では測れない高度な指導力を、約70時間の講義や演習で学び、修了レポートの提出も必要です。
step4.主任ケアマネになったら
主任ケアマネの資格は、一度取得すれば終わりではありません。
専門性を維持するため、5年ごとの更新制が導入されています。介護保険制度の改正などに対応し、常に最新の知識を保つことが責務があるためです。
期間内に「主任介護支援専門員更新研修」を受けないと資格が失効するため、注意しましょう。
気をつけなければならないのは、主任ケアマネの更新研修を修了してもケアマネジャーの更新研修は免除されない点です。
主任ケアマネの資格を更新しても、ケアマネジャーの有効期限が切れてしまったら、通常のケアマネ業務も主任ケアマネとしての業務もできなくなってしまいます。
両者の有効期限を確認し、計画的に研修を受講する必要があります。
まとめ
本記事では、主任ケアマネの仕事内容やケアマネジャーとの違い、キャリアアップへのロードマップを解説しました。主任ケアマネは、ケアマネジャーを導き地域福祉を支える、やりがいと将来性のある仕事です。
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この記事を書いたのは・・・

さとひろ/Webライター
保有資格:ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師
介護業界で22年の経験をもつ、特別養護老人ホームの現役ケアマネジャー兼生活相談員。介護職員・ケアマネジャー・生活相談員としての経験をもとにわかりやすい記事を執筆します。
