「介護職員として転職を検討したいけど、介護施設の種類が多くて違いが分からない」
「特別養護老人ホームと養護老人ホームは、何が違うの?」
介護職員として転職先を探している場合、上記のような悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
とくに、特別養護老人ホームと養護老人ホームは名前が似ているため、どんな違いがあるのか、どちらの方が働きやすいのか、気になる方も多いでしょう。
特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いは、施設を利用する利用者の目的や入居条件、費用などの点で違いがあります。
本記事では、特別養護老人ホームで作業療法士として勤務する筆者が、特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いについてくわしく解説します。施設の概要やサービスの違いに加え、介護職員の業務内容の違いについてもまとめました。
各施設の違いが分かれば、転職を検討するうえでご自身にあった転職先を選びやすくなるでしょう。介護職員として転職を検討されている方の参考になるようご紹介しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
特別養護老人ホームと養護老人ホームの違い
特別養護老人ホームと養護老人ホームは、名前は似ていますが全く別物の施設です。特別養護老人ホームは介護を目的とした施設であり、養護老人ホームは経済的に困窮している高齢者の社会復帰を支援する施設です。
ほかにも、対象者や費用、サービスの面でも大きな違いがあります。
本章では特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いについて、くわしくご紹介します。
目的の違い
特別養護老人ホームと養護老人ホームの目的の違いについて、以下にまとめました。
| 施設の目的 | |
特別養護老人ホーム | ・要介護認定を受けた高齢者のための生活施設 ・入浴、排泄、食事等の介護その他日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をおこなう |
養護老人ホーム | ・環境上の理由や経済的理由により⾃宅での⽣活が困難な⾼齢者が、市区町村の「措置」に より⼊所する施設 ・上記の高齢者を一時的に養護し、健康管理や経済面のアドバイスなど、社会復帰を目指す |
特別養護老人ホームでは、定員が29名以下の施設である場合、『地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特別養護老人ホーム)』と呼ばれます。定員を少人数にすることで、明るく家庭的な雰囲気を作り、地域や家族との結びつきを重視した運営をおこなうことを目的としています[1]。
養護老人ホームは、65歳以上の高齢者で、現在の生活環境では自立して暮らすことが難しく、さらに経済的な支援が必要な方が、市区町村長の判断によって入所できる施設です。市区町村での決定がないと、養護老人ホームへの入所はできません[2]。
入居条件および対象者の違い
特別養護老人ホームと養護老人ホームの入居条件および対象の違いについて、以下の表にまとめました。
| 入居条件および対象者の違い | |
特別養護老人ホーム | ・原則として要介護3以上の認定を受けた方が対象 ・新たに入所する要介護1・2の方も、やむを得ない理由がある場合を除き、利用できない ・要支援1・2の人は利用できない |
養護老人ホーム | ・65歳以上の低所得の方で、常時の介護は必要ないが、身体または精神の機能の低下がある方。および、家族等の支援を受けられず自宅での生活が困難な方。 ・入居の可否については市区町村が調査実施後に決定する |
特別養護老人ホームは介護施設であるため、要介護認定を受けて要介護3以上でないと入居できません。
また、養護老人ホームは生活保護の流れで設立されました。そのため、生活に困っている方や視覚に障害のある方などが入所する場合も多いです。
費用の違い
特別養護老人ホームと養護老人ホームの費用の違いは以下のとおりです。
| 費用の違い | |
特別養護老人ホーム | ・居住費、食費、施設介護サービス費、日常生活費(洗濯代、消耗品代、理美容代など)、サービス加算費用(個別機能訓練、看取り介護等)などの費用がかかる ・居住費は、個室や多床室など居室のタイプによって金額が変わる ・施設介護サービス費は要介護度によって金額が変わる |
養護老人ホーム | ・本人および扶養義務者の収入に応じた費用負担がある ・前年度の収入によって負担額は変わる ・前年度の収入から必要経費(医療費・社会保険料等)を引いた金額を階層表に当てはめて負担額を算出 |
特別養護老人ホームの費用は対象者の要介護度や居室のタイプによって金額が変わります。下記は厚生労働省のホームページに記載されている、要介護5の人がユニット型個室を利用した場合の利用負担額の目安です(1ヶ月分)。
【特別養護老人ホームの費用の目安】
要介護5・ユニット型個室を利用した場合
| 施設サービス費の1割 | 約28,650円(955単位×30日=28,650) |
| 居住費 | 約61,980円(2,066円/日) |
| 食費 | 約43,350円(1,445円/日) |
| 日常生活費 | 約10,000円(施設によって設定されます) |
| 合計 | 約143,980円 |
下記は、養護老人ホームの費用の目安事例です。
【養護老人ホームの費用の目安】
| 前年度の所得 | 階層 | 費用(ひと月あたり) | |
| 事例A | 450,000円 | 11階層 | 14,100円 |
| 事例B | 850,000円 | 25階層 | 43,800円 |
養護老人ホームは経済状況が困窮している高齢者を対象としているため、費用は安く設定されています。
サービスの違い
特別養護老人ホームは介護保険施設であるため、以下のような介護サービスを受けられます。
- 食事、入浴、排泄などの日常生活上の介護
- 機能訓練(リハビリ)
- バイタル測定などの健康管理
- 相談援助
- レクリエーション
一方で、養護老人ホームは原則として自立している方を対象とするため、施設からの介護サービスを受けることはできません。基本的なサービスとして
- 食事の提供
- 健康管理
- 自立や社会復帰に向けてのサポート
などが該当します。
また、養護老人ホームでは介護サービスの提供はありませんが、施設と契約している外部の介護事業所から介護サービスを受けることは可能です。
介護職員の業務内容の違い
本章では、特別養護老人ホームと養護老人ホームで働く介護職員の業務についてご紹介します。
特別養護老人ホームの業務
特別養護老人ホームで働く介護職員の仕事内容には、以下のようなものがあります。
- 身体介護
食事や排泄、入浴、車椅子への移乗など必要に応じた身体的な介護を行います。
- 生活支援
掃除や洗濯、必要物品の買い物などを行います。
- 記録
バイタルチェックや排泄時間、食事の摂取量など日々の生活を記録します。
- レクリエーション
季節行事や体操などのレクリエーションの企画・運営を行います。
- 家族対応
面会の調整や物品依頼、体調の報告など状況に応じたご家族への連絡を行います。
特別養護老人ホームの介護職員は、日勤業務と夜勤業務でスタッフの人数や対応業務などが変わってくるでしょう。
特別養護老人ホームの仕事内容については、下記の記事でもくわしくご紹介していますので、ぜひご確認ください。
特別養護老人ホームの仕事内容|現役介護福祉士が給与やシフトも解説
養護老人ホームの業務
養護老人ホームは介護施設ではないため、介護職員ではなく支援員として業務に携わります。支援員としての特別な資格は必要なく、未経験の方でも勤務できます。
主な業務内容は、以下の通りです。
- ご利用者様の見守り
- 通院・買い物などの付き添い
- レクリエーション
- 散歩
- 園内の見回りやご利用者様への声かけ
養護老人ホームはご利用者様の社会復帰を目指す施設であるため、生活に関わる相談対応や、社会活動への参加促進などを積極的に行います。
まとめ
本記事では、特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いについてご紹介しました。各施設の目的や介護業務に違いはありますが、どちらもご利用者様の生活を支援する、大変やりがいのある仕事です。
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この記事を書いたのは・・・

椎野みいの/Webライター
保有資格:作業療法士/福祉住環境コーディネーター/福祉用具プランナー/認定心理師
病院、介護老人保健施設、リハビリ専門学校を経て、現在は特別養護老人ホームにて機能訓練指導官として勤務中。
