介護施設に入職して間もないのに、「もう辞めたい」「自分は介護職に向いていないのでは」と悩む人は少なくありません。仕事を覚えるだけでも精いっぱいな時期に、周囲と比べて落ち込んだり、もっと我慢すべきだと自分を責めたりすることもあるでしょう。
介護職をすぐ辞める人にはいくつかの傾向が見られます。ただし、その特徴に当てはまるからといって、介護職への適性がないとは判断できません。人間関係や教育体制、人手不足など、職場側の問題によって辞めたくなるケースもあるためです。
本記事では、退職につながりやすい本人側の特徴と職場側の原因を分けて解説します。介護の仕事そのものが合わないのか、今の職場が合わないだけなのかを整理し、今後の働き方を考える際にお役立てください。
介護職をすぐ辞める人に見られる6つの特徴
介護職員のなかには、短期で退職する人もいます。すぐ辞める人に見られる主な特徴は、以下の6つです。
| 1.責任感が強過ぎる人 2.理想と現実のギャップを強く感じる人 3.身体的・精神的に疲れを感じやすい人 4.介護職への理解や志望動機が曖昧な人 5.新しい仕事を覚えるのに負担を感じる人 6.他の人とのコミュニケーションに負担を感じる人 |
順番に解説していきます。
1. 責任感が強過ぎる人
ご利用者様の安全を守る介護職において、責任感は長所といえます。しかし完璧を求めて「失敗してはいけない」と気負い過ぎると、小さなことも自分の責任だと思いがちです。
情報共有がうまくいかず連携に時間がかかったり、ご利用者様の対応で予定通りに仕事が進まなかったりと、介護の現場は予想できない事態が起こります。責任感が強い人は、自分に非がないことも背負いこんで心身の負担を感じやすいのです。
責任を果たすのと、何でも抱え込むのとは違います。同僚に自分の状況を伝える、優先順位を上司に確認するなど、チームでの対応ができているかを振り返ってみましょう。
2. 理想と現実のギャップを強く感じる人
介護職を早期に辞める人のなかには、理想と現実のギャップが強い人もいます。
介護の仕事に「ご利用者様に寄り添う」「生活を支えるやりがいがある」といったイメージをもつ人も多いでしょう。確かにそのイメージに間違いはありませんが、実際の業務は身体介助や記録、環境整備、認知症のあるご利用者様の対応などさまざまです。
複数の業務を並行する場合もあり「想像していたよりきつい」と感じると、早い段階で辞めたいと感じやすくなります。
筆者は介護の仕事を始めたとき、身内の在宅介護の経験はありました。そのため多少は介護の仕事を理解しているつもりでしたが、やはり仕事となるとかなりギャップがありました。
限られた時間内に入浴や食事の介助をしなければならず、思った以上にスピードも丁寧さも求められるんだなと痛感したのを覚えています。
ギャップが生じる原因は、本人の理解不足だけではありません。求人票の情報や、面接での説明が不十分だった可能性もあります。
入職前に一日の流れや担当業務、独り立ちまでの期間を確認しておくのがおすすめです。入職後に「こんなはずでは……」と悩むのを防げます。
3. 身体的・精神的に疲れを感じやすい人
介護職は、移乗や入浴介助などの身体介助に加え、立ちっぱなしの時間が長い仕事です。とくに特養や老健などの入所施設では、早番・遅番・夜勤などの不規則な勤務があります。生活リズムが乱れて、疲れがたまる人も多いでしょう。
また、精神的な疲労もあります。介護職員は、自分の感情を抑えてご利用者様の気持ちを受け止める姿勢が必要です。そのため、精神的な疲労を感じる人も少なくありません。
今の職場における、夜勤の回数や業務量、休息の取りやすさについて振り返り、自分に合っているかを考えてみてください。
4. 介護職への理解や志望動機が曖昧な人
介護職は、職場によっては資格や経験を問わない求人もあります。そのため「給料がいい」「毎日人と関われて楽しそう」といった理由で働き始めると、介護職の大変さに驚く人もいるでしょう。
仕事内容をじゅうぶんに理解しないまま働き始めると、トラブルに直面したとき、働き続けるモチベーションが下がりやすくなります。ご利用者様にどのようなケアを提供したいのか、今後どのようなキャリアを積み上げたいのかを考え、今の職場で実現できそうかを検討するのがおすすめです。
5. 新しい仕事を覚えるのに負担を感じる人
新しい仕事を覚えづらいと感じるのも、介護職をすぐ辞める人の特徴です。
入職直後は、介護技術やご利用者様ごとの注意点、記録方法、備品の場所、職場独自のルールなどを覚えなければなりません。説明を聞いてもすぐに覚えられず、自信をなくす人もいます。
また、質問しづらい雰囲気だったり、指導者によって説明が変わったりする職場では仕事を覚えにくいものです。
教育体制や人員配置をはじめとする情報を、求人票だけで把握するのには限界があります。自分で判断するのが難しい場合は、介護業界に詳しいコンサルタントに相談し、確認したい条件を整理するのもよいでしょう。
6. 他の人とのコミュニケーションに負担を感じる人
介護職をすぐ辞める人には、コミュニケーションを負担に感じやすい特徴がみられる場合もあります。
介護職は、多くの人とのコミュニケーションが欠かせない仕事です。
| 【介護職がコミュニケーションをとる相手】 ・ご利用者様 ・ご家族 ・他の介護職員 ・看護職やリハビリ職など他職種 |
相手に応じて言い方を変えたり、必要な情報を分かりやすく共有する場面が多く、人とのやりとりが苦手な人は疲れがたまりがちです。
しかし、コミュニケーションが苦手だからといって、介護職の適性がないとは限りません。大人数よりもマンツーマンの関わりが得意な人や、言葉よりも介助の丁寧さで信頼を得る人もいます。
申し送りの型を決める、伝える内容を紙に書いてまとめるなど、自分に合った方法を見つけると負担を軽減できます。
すぐ辞めたくなる職場側の原因
早期退職の原因は、職場側の問題が影響しているケースもあります。
| 【職場側の原因の例】 ・人間関係がぎくしゃくしている ・人手不足や勤務条件による負担が大きい ・じゅうぶんな教育を受けないまま仕事を任されている |
「すぐに辞めたくなるのは自分のせいだ」と考える前に、職場側の課題を洗い出してみましょう。
人間関係がぎくしゃくしている
職員同士の人間関係が良くない職場は、業務上のやり取りであっても声をかけるのに気を使い、働きづらさを感じる原因となります。
ご利用者様の状態や介助時の注意点の共有が遅れると、仕事への不安を強めるだけでなく、ケアの安全性にも影響を及ぼしかねません。人間関係の問題を自分で解決するのが難しい場合は、信頼できる上司や同僚などに相談しましょう。
職場側の対応としては、定期的な面談やルールの整備、特定の職員だけに情報が集中しない仕組みづくりなどが求められます。もし相談しても状況が変わらない場合は、新しい職場で再スタートする道も検討してみてください。
人手不足や勤務条件による負担が大きい
人手不足や勤務条件などが、早期離職につながる場合もあります。
人員に余裕がない職場では、一人あたりの業務量が増え、夜勤や残業の負担、希望日に休みにくい状況が生じます。入職前には続けられると思っていても、働き始めると想像以上に心身へのダメージを感じるかもしれません。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」によると、訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の離職率は12.4%です。令和4年度から3年連続で離職率は低下しています。

※引用:令和6年度 介護労働実態調査| 公益財団法人介護労働安定センター
一方、人手不足を感じる事業所は全体で65.2%、訪問介護員に関しては83.4%、介護職員については69.1%に上ります。

※引用:令和6年度 介護労働実態調査| 公益財団法人介護労働安定センター
介護職員の離職が多い職場は、業務の役割分担を見直したり、休暇や勤務変更について相談しやすい体制を整えたりといった対応が必要です。対応されない場合、現在働いている介護職員のストレスや疲労がさらに蓄積され、新たな離職を招く可能性があります。
日々の業務に追われる介護職員は、意識的にセルフケアの時間を設け、休日を自分のために過ごすのもおすすめです。疲れを和らげて、今後も介護の仕事を続けるために、「介護職員におすすめの休日の過ごし方10選|心身をリセット」も参考にしてみてください。
じゅうぶんな教育を受けないまま仕事を任されている
指導者によって仕事の教え方が違ったり、早い段階で独り立ちを求められたりすると、入職したばかりの人は不安を感じます。
「自分は仕事を覚えるのが遅い」のは、作業の手順が統一されていない、質問できる時間がないなど、教育体制が原因かもしれません。
以前、筆者が勤めていた職場に入職した人が、1か月未満で退職してしまいました。退職理由として「教えてくれる人が自分のペースに合わせてくれない」と話したそうです。
介護の現場は日々時間に追われますが、職員の理解度を確かめながら教えるスピードを調整する必要があります。職場側は、指導を担当する介護職や業務の進め方をできるだけ統一し、新人職員が質問しやすい環境を作らなければなりません。
「介護職が向いていない」のか「今の職場が合わない」のかを見極めるチェックポイント
仕事に行き詰まったら、介護職に向いていないのか、今の職場が合わないのかを分析してみましょう。ここでは、3つのポイントを紹介します。
| ・一時的な疲労か ・職場が変われば解決しそうな問題か ・介護の仕事そのものに負担を感じているか |
ひとつずつ確認していきましょう。
一時的な疲労か
入職直後は、緊張した状態で新しい仕事や人間関係に慣れなければならず、一時的に疲れが強くなる場合があります。忙しい日が続いた直後は、とくに「辞めたい」と感じるかもしれません。
休息を取ったり、業務量について相談したりして負担が軽減するなら、急いで結論を出さず様子を見る選択もあります。逆に、休んでも回復せず負担が大きい場合は、信頼できる人や専門機関に相談しましょう。自分の健康を優先し、今後の働き方を検討するのがおすすめです。
疲れ過ぎて自己判断が難しい場合は、介護の世界に詳しいコンサルタントに力を借りてみてください。
職場が変われば解決しそうな問題か
人間関係や教育体制、シフト、業務量などは職場によって異なります。質問・相談できる人がいない、希望休が取りにくい、特定の職員との関係が良くないなどの悩みは、職場環境を変えると解決する可能性があります。
まず、上司に相談して勤務形態の変更やシフトの調整で改善できないか確認しましょう。もし改善が難しいなら、別の職場への転職も有効です。
転職する際は、現在の職場でつらいと感じる原因を判断基準にして求人を選んでみてください。同じことで悩むのを防げます。
| 【判断基準の例】 ・給与 ・通勤時間 ・教育体制 ・夜勤の回数 ・休暇の取りやすさ |
介護の仕事そのものに負担を感じているか
排泄介助や入浴介助などの介護業務に抵抗があるのか、人間関係や勤務条件がつらいのかを分けて考えましょう。
たとえば、生活リズムが朝型で夜勤が苦手な人は、デイサービスなど日中のみの職場なら続けやすいです。大人数の職員との連携が苦手でも、ご利用者様と一対一で関わる働き方が合う人もいるでしょう。
同じ介護職でも、特別養護老人ホーム、訪問介護、グループホームなど、施設・サービス種別によって仕事内容や働き方は異なります。現在の職場がつらいからという理由で介護職への向き不向きを決めず、負担を感じる具体的な要因を洗い出してみましょう。
よくある質問
ここでは、介護職の退職についてよくある質問に回答していきます。
試用期間で退職したいと思う理由は何ですか?
求人票の内容だけで判断すると、入職してから「こんなはずじゃなかった」とがっかりすることもあります。
未経験者も可能な職場なのに高度な介護を求められたり、残業が多かったりすると、求人内容と現実のギャップに戸惑うでしょう。この場合、試用期間で退職を考える人も少なくありません。業務の難しさを感じて、1日で辞めた人もいます。
辞められたら困る介護職員にはどんな特徴がありますか?
職場にとって辞められると困るのは、丁寧に仕事に取り組み、周囲とスムーズに連携できる介護職員です。ご利用者様の小さな変化に気づく観察力がある人や、こまめに情報共有できる人、後輩に分かりやすく説明できる人も頼りにされます。
チームのメンバーと協力してより良いケアを目指す人は、職場にとって欠かせない存在といえるでしょう。
介護職は何年くらいで辞める人が多いですか?
公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」では、前職が介護職員だった人に対して何年で退職したかを尋ねています。
| 直前の介護職 | 3~4カ月以下 | 半年程度 | 1年程度 | 2年程度 | 3年程度 | 4年程度 | 5年以上 | 無回答 |
| 訪問系 | 2.2% | 5.5% | 11.0% | 15.6% | 15.0% | 8.1% | 41.6% | 1.0% |
| 通所系 | 3.5% | 5.4% | 14.6% | 15.1% | 13.6% | 8.5% | 38.9% | 0.5% |
| 施設系 | 4.6% | 4.4% | 12.6% | 12.8% | 16.9% | 9.4% | 38.7% | 0.6% |
| その他 | 3.7% | 5.2% | 11.2% | 13.0% | 12.2% | 7.6% | 46.4% | 0.6% |
調査では、直前の介護職を5年以上続けていた人の割合が最も高い結果でした。この結果から、介護職を辞める人が必ずしも入職直後に集中しているわけではないことがうかがえます。
まとめ
介護職を辞める人の特徴は以下のとおりです。
| 1.責任感が強過ぎる人 2.理想と現実のギャップを強く感じる人 3.身体的・精神的に疲れを感じやすい人 4.介護職への理解や志望動機が曖昧な人 5.新しい仕事を覚えるのに負担を感じる人 6.他の人とのコミュニケーションに負担を感じる人 |
この特徴に当てはまっていても、介護職に向いていないわけではありません。辞めたいと思ったら、まず業務内容や職場環境に分けて考えてみてください。原因を整理すれば、今の自分に何が必要か、何を優先して仕事を選ぶのがいいかがわかります。
職場側に問題がある場合は、上司への相談や勤務条件の調整、別の介護施設への転職によって解決する可能性があります。改善が見込めないときは、自分の健康を最優先に考え、経験や希望に合った働き方を探してみましょう。
「介護転職のミカタ」では、自分に合った働き方を業界に特化したコンサルタントが一緒に考えます。
サービスはすべて無料です。今後のキャリアや職場探しに不安を感じる人は、気軽に相談してみてください。
この記事を書いたのは・・・

佐藤 恵美/Webライター
保有資格:介護福祉士/社会福祉士
回復期リハビリ病棟で7年勤務したのち、社会福祉士を取得し、
生活相談員を経験。現在はフリーのWebライターとして活動中。
