要介護度の区分とサービスが知りたい!申請の流れや事例もご紹介

介護職として働いているとご利用者様やその家族から、要介護認定のことや要介護度によるサービスについて聞かれるケースも少なくないはずです。

ご利用者様やご家族様の不安に寄り添い的確なアドバイスをするためにも、要介護度の区分やサービス内容を把握しておくことは、介護のプロとして必要なスキルと言えるでしょう。

本記事では、要介護認定の区分やサービス内容、申請の流れ、さらに実際の利用事例までを詳しく紹介します。家族や介護職の立場から、それぞれのニーズに合った支援方法を考えるためのヒントが見つかる内容となっています。ぜひ最後までご覧ください。

要介護度の認定区分とは?

要介護度には、7種類の認定区分があります。各区分は、身体状況における介護のレベルに応じて分けられます。具体的な区分についてみていきましょう。

区分には要支援と要介護がある

要介護度の区分は大きく要支援要介護の2種類に分けられます。

要支援とは、日常生活で軽いサポートがあれば自立した生活ができる状態のことです。例えば、食事や入浴、掃除などが一人では難しい状況をサポートし、可能な限り自立を保てるよう支援します。

要支援には支援のレベルに準じて要支援1要支援2の2種類あることも特徴です。

要介護とは、日常生活で常に他者の介助を必要とする状態を指します。要支援に比べ、食事や入浴、トイレなどの基本的な生活動作が、自分一人ではおこなえない段階です。要介護は介護の必要度に応じて5段階(要介護1〜5)に分けられます。

区分の違いと身体の状態の目安

要介護度は、要支援より要介護の方が介護度は高くなります。また、それぞれの区分において数字が上がるごとに介護度が重くなり、必要な支援も増えていきます。

各区分における身体状態の目安は以下の通りです。

区分身体の状態の目安
自立・日常生活を一人で問題無く送ることができ、支援が必要ない
要支援要支援1・日常生活を送る能力は基本的にあるが、入浴などに一部介助が必要
・自宅の掃除や身の回りの世話の一部に、見守りや手助けなどの介助を必要とする
要支援2・立ち上がりや歩行に不安があり、排泄や入浴で一部介助が必要
・適切なサービスの利用で、要介護状態への進行を予防できる可能性がある
要介護要介護1・立ち上がりや歩行が不安定
・入浴などで一部介助が必要
・排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる
・起き上がりや立ち上がりに介助が必要
要介護2・起き上がりや自力での歩行が困難
・排泄や入浴、着替えなどの一部またはすべてに介助が必要
・薬の飲み忘れなどの認知機能の低下がみられる
要介護3・食事や排泄、着替えなどがほとんどの日常生活に介助が必要
・認知機能の低下があり、見守りが必要
要介護4・食事や排泄、着替えなどすべての日常生活において常時介助が必要
・理解力や判断力の低下により、コミュニケーションに支障が出る
・認知機能の低下により、妄想や徘徊などの問題行動がみられる場合もある
要介護5・寝返りやオムツの交換、食事などの日常生活全般に常時介助が必要
・認知機能の低下により医師の疎通が難しい
・起き上がったり座ったりすることができず、基本的に寝たきりの状態

上記の状態はあくまでも目安であり、実際の状態と一致しない場合があります。

要介護認定を受けられる対象者

要介護認定は誰でも受けられるものではありません。要介護認定を受けられる対象者は次のどちらかに該当する方になります。

  • 65歳以上で介護や支援が必要になった方
  • 40歳以上65歳未満の医療保険に加入しており、特定の病気により介護や支援が必要になった方

特定の病気には以下のようなものが含まれます。

  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • 後縦靭帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗しょう症
  • 多系統萎縮症
  • 初老期における認知症
  • 脊髄小脳変性症
  • パーキンソン病
  • 脳血管疾患
  • 糖尿病性合併症
  • リウマチ

なお、40歳未満の人は要介護認定の申請はできません。

受けられるサービス

要介護認定によりさまざまな介護サービスを受けることができます。要介護認定を受けた方が介護保険で利用できるサービスは、大きく分けて「在宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類です。

在宅サービス

在宅サービスとは、自宅で生活しながら、自宅での生活を継続できるよう利用するサービスです。

具体的には以下のようなものがあります。

自宅に訪問するサービス・訪問介護
・訪問入浴
・訪問看護
・訪問リハビリ
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回/臨時対応型訪問介護
施設に通うサービス・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・地域密着型通所介護
・療養通所介護
・認知症対応型通所介護
短期間宿泊するサービス・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所量要介護(医療ショートステイ)
福祉用具を使うサービス・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム

施設サービス

施設サービスとは、要介護1〜5の認定を受けた方が、介護保険法で決められた施設に入所できるサービスです。残念ながら要支援の方は利用できません。

利用できる施設は以下の4種類になります。

介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム
・常時介護が必要な高齢者向けの施設
・原則として要介護3以上の方が対象
・特例で要介護1,2の方も入所可能
・食事、入浴などの介護、リハビリ、レクリエーションといったサービスを提供
介護老人保健施設・在宅復帰を目指す病院と自宅の中間施設
・積極的なリハビリテーションが受けられる
・要介護1~5の方が対象
・入居期間は原則3ヶ月
・食事、入浴などの介護、リハビリ、医療ケアを提供
介護医療院・長期的な医療と介護が必要な人向けの施設
・医療ケアと成果るサービスを提供

各介護施設の特徴を詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご参照ください。

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域で生活できるよう、身近な市町村で提供されるサービスを指します。

在宅サービスと違い、原則として事業所がある市町村の住民のみが利用可能となります。

具体的なサービスは、以下の通りです。

認知症対応型共同生活介護
(グループホーム
・認知症の方が、少人数の家庭的な雰囲気の中で共同生活を送る施設
・食事、入浴、排泄の介護やリハビリテーションなどを提供
・要支援2、要介護1~5の方が対象
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
(地域密着型特別養護老人ホーム)
・入所定員が29人以下の小規模な特別養護老人ホーム
・食事、入浴、排泄などの日常生活の支援や介護を提供
・原則として要介護3以上の方が対象
・特例で要介護1、2の方も入所可能
地域密着型
特定施設入居者生活介護
・入所定員が29人以下の小規模な有料老人ホームや軽費老人ホーム
・入浴、排泄、食事などの介護や機能訓練、療養上のケアを提供
・要介護1~5の認定を受けた方

要介護認定の流れ

要介護認定は、介護保険サービスを利用するために必要な手続きです。本章では具体的な流れや判定までの期間の目安、認定が遅れた場合の対処法について解説します。

要介護認定の具体的な流れ

要介護認定は以下のような流れで認定されます。

  • 申請
    お住まいの市区町村の役所にて要介護認定の申請をおこないます。
  • 認定調査
    市区町村の職員が自宅を訪問し、心身の状況について聞き取り調査を実施します。
  • 主治医意見書
      かかりつけ医が申請者の心身の状況について意見書を作成します。
  • 一次判定
    認定調査結果と主治医の意見書の一部をコンピュータに入力し、全国一律の基準で要介護度を判定します。
  • 二次判定
    介護認定審査会が一次判定結果と主治医意見書を総合的に検討し、最終的な要介護度を判定します。
  • 認定
    市区町村が審査結果に基づいて要介護度を決定し、申請者に通知します。

申請から判定までの期間の目安

要介護認定の判定は、申請から認定の通知まで30日以内が原則です。

ただし、介護認定調査員の人員が不足や、認定審査会の開催頻度が少ない場合、30日を超えるケースも少なくありません。

要介護認定の結果が届いていなくても、必要性に応じて暫定のケアプランを作って貰い介護サービスを利用することは可能です。お住まいの地域包括支援センターに相談し、暫定ケアプランを作成します。

ただし、認定結果が非該当となったり予定していた介護度と違った場合、全額自己負担の可能性や、自己負担額が増える可能性があるため、注意が必要です。

要介護認定後にサービスを利用した事例

本章では要介護認定を受けて生活に変化がみられた事例をご紹介します。

Aさんは80代後半の女性です。一人暮らしをしており、近隣に長女夫婦が住んでいます。昔から人との交流を好み、自治会の活動を積極的におこなっていました。

数か月前に友人宅に行った帰りの道路で転倒し、大腿骨を骨折してしまいます。手術とリハビリで杖を使って歩けるまでには回復しましたが、以前よりバランスを崩しやすくなってしまいました。

骨折がきっかけで、今までできていたことがうまくできなくなり自信をなくしてしまったAさん。自然と外に出る機会や人との交流が減り、自宅に引きこもるようになりました。

心配した娘夫婦が要介護認定を申請し、要介護1が認定されました。また、デイサービスを週に3回利用することとなります。

最初は行くのを億劫に感じていたデイサービスですが、介護スタッフの細やかな配慮により自然と馴染んでいきます。また、他のご利用者様と話す機会が増え、デイサービスでの運動を通して足腰も鍛えられ、徐々に自信を取り戻していきました。

デイサービスで介護職員との交流や、同世代の方と悩みを共有し励まし合う時間がAさんの心の支えとなり、日々の生活に前向きな変化をもたらしました。

Aさんの事例のように、要介護認定を受けて適切なサービスを利用することで、再び社会とのつながりや自信を取り戻すケースは少なくありません。要介護認定は高齢者の「その人らしさ」を取り戻す、大切な社会的支援と言えるでしょう。

要介護度による介護業務の違いも把握しよう

介護の現場で働くことに興味がある方は、要介護度によって求められるスキルや業務内容が大きく異なることを理解しておくと良いでしょう。

たとえば、要介護1や要介護2の方に対しては、身体介助や生活支援を中心におこなうことが多く、コミュニケーションや笑顔でのサポートが重要です。

一方、要介護4や要介護5の方に対しては、身体介助だけでなく、認知機能の支援や問題行動への対応が必要となります。

介護の仕事は、単なる身体的なサポートだけでなく、一人ひとりの尊厳と可能性に寄り添う、やりがいのある職業です。

転職を考える際には、自身がどの要介護度の方に向けた支援が得意か、どのような経験やスキルを活かすことができるかも整理しておきましょう。

まとめ

要介護度の認定区分を把握しておくことは、高齢者の自立した生活を支える上でとても大切です。とくに、介護の現場で働く方々にとって、要介護度による支援の違いを理解することで、より適切なケアの提供につながるでしょう。

高齢者一人ひとりの状況に合わせたサービスを提供し、介護度の高い低いに囚われすぎず、高齢者の「その人らしさ」の維持を目指していきましょう。

この記事を書いたのは・・・

椎野みいの/Webライター

保有資格:作業療法士/福祉住環境コーディネーター/福祉用具プランナー/認定心理師
病院、介護老人保健施設、リハビリ専門学校を経て、現在は特別養護老人ホームにて機能訓練指導官として勤務中。