正しい排泄介助とは?種類とポイントを理解してスキルアップを目指す

「排泄介助がうまくできない」
「その人に合った排泄介助ができているか」
「羞恥心に配慮できているか」
介護の仕事をしていくなかで、このような悩みをお持ちではありませんか?

排泄とは、生命を維持するために欠かせない大切な生理現象ですが、介護の現場では、最も繊細で羞恥心を伴う支援の一つとされています。
そのため、介護職員の多くが「適切な介助方法」や「ご利用者様の尊厳を守ること」に不安を感じているのが現状です。

本記事では、排泄介助の基本から具体的な方法、筆者が20年以上の介護経験の中で感じた配慮すべきポイントなどについて解説します。
正しい知識とスキルを身につけたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

排泄介助とは

排泄介助とは、身体的または認知機能の低下などの理由により、自力で排泄することが難しい方に対しておこなう支援です。
人間にとって排泄は生命維持に欠かせない生理現象であり、1日に1,000〜1,500mlもの尿を排出します。
要介護者にとっては、他人に介助してもらうことは羞恥心や情けなさ、屈辱感を伴うため、介助する際は、常に尊厳とプライバシーを最大限に尊重することが重要です。

排泄介助は、単にトイレでの排泄を支援するだけでなく、ポータブルトイレやおむつ交換、尿器や差し込み便器の使用など、多岐にわたる支援を指します。
介護者は、安全で、より効果的な介助をおこなうために、排泄介助の種類やポイントを押さえる必要があります。

排泄介助の種類とポイント

排泄介助には、ご利用者様の身体状況や生活環境に応じて、さまざまな方法があります。
ここでは、以下の5つの排泄介助の種類とそれぞれのポイントを解説します。

  • トイレ
  • ポータブルトイレ
  • おむつ交換
  • 尿器
  • 差し込み便器

ひとつずつ見ていきましょう。

トイレ

トイレでの排泄介助は、主に歩行が不安定で自力での排泄が困難な高齢者や障がいのある方が対象となります。
和式トイレよりも安定して座れる洋式トイレが推奨され、転倒リスクを減らすために手すりの設置や段差の解消など、安全な環境整備が重要です。

介助の際は、ご利用者様のプライバシーと尊厳を最大限に尊重しながら、ゆっくりと寄り添いましょう。
移動や脱衣、座位保持、排泄、清拭、着衣の各段階で、ご利用者様の身体状況に合わせた必要なサポートとさりげない声かけで、羞恥心に配慮したケアが求められます。

ポータブルトイレ

ポータブルトイレは、歩行が困難で長距離の移動が難しい高齢者や、ベッドからトイレまでの移動に不安がある方に最適な介護用品です。
座面の高さ調整やひじ掛け付きなど、さまざまな機能や特徴があり、特に夜間の排泄をサポートする重要な介護用具となっています。

例えば、移動してトイレに移るのに時間がかかってしまい、排尿まで間に合わないという方がポータブルトイレを使用すれば、移動時間が少なくて済み、失敗の回数を少なくできるでしょう。
また、日中はトイレに行っている人でも、夜間だけポータブルトイレを利用するケースもあります。
ベッドの近くに設置することで、暗いなかでの移動リスクを軽減し、ご利用者様の安全と自立を支援します。

おむつ交換

おむつ交換は、寝たきりの方や、認知症により排泄コントロールが難しい方が主な対象です。
具体的には、ベッド上でおむつを変えたり、陰部洗浄を行ったりします。
パンツタイプとテープタイプの2種類があり、尿取りパッドを併用することで、交換の手間と経済的負担を軽減できます。

おむつの使用はご利用者様の自尊心を傷つける可能性があるため、できる限り他の排泄方法を検討することが重要です。
おむつ交換の介助をする際は、ベッドで横になっているご利用者様の身体の向きを変えることもあり、介護者も気をつけなければ腰痛の原因になりかねません。
正しい方法を身につけ、ご利用者様のプライバシーや羞恥心に配慮しながら、介護者と本人の両者にとって安全な介助を心がけましょう。

尿器

尿器は、ベッドから起き上がることが困難な方や、重度の身体障がいがある方が主な対象となります。
男性用と女性用で形状が異なり、寝たままの状態で排泄するための介護用品です。
介助する際は、男性は陰部の先端を尿器に入れた状態で排尿し、女性は尿器の開口部をそのまま陰部に当てた状態で排尿します。

排泄後は、尿や便の状態を確認し、健康状態の把握にも努めましょう。また、皮膚の清潔保持や感染予防にも注意を払い、ご利用者様の快適さと健康を守ることが大切です。

差し込み便器

差し込み便器は、長期臥床や重度の身体障がいにより、自力での排泄が困難な方が主な対象です。
ベッド上で使用する介護用品で、トイレまでの移動が難しい方や、医療的ケアが必要なご利用者様に適しています。
利用頻度はそこまで多くない物品ですが、訪問介護で訪問した先のご利用者様が差し込み便器を使用していたら、使用せざるを得ません。
そのため、介護職員として必要なスキルとして使用方法を覚えておきましょう。

介護する際は、あお向けに寝ているご利用者様に腰を浮かしてもらい便器を差し込みます。
尿の飛散を防ぐために、陰部にトイレットペーパーを当てておくのも一つの方法です。

排泄介助の際に配慮すること4つ

ここでは、排泄介助の際に配慮することとして、以下の4点について解説しています。

  • 羞恥心に配慮する
  • できない部分を介助する
  • 排泄のタイミングを掴む
  • 水分摂取を制限しない

ひとつずつ解説します。

羞恥心に配慮する

介護を受ける高齢者は、陰部をさらけだしたり、排泄物を見られてしまったりすることから、他者の手を借りて排泄をおこなうことに対して羞恥心や自己嫌悪を感じることがあります
そのため介助者は、要介護者の自尊心を傷つけないよう配慮し、自分でできる部分はできるだけ自分でおこなってもらうようにしましょう。

例えば、陰部を拭ける方には拭いてもらい、パンツやズボンを上げられる方には上げてもらうなどの対応が挙げられます。
また、排泄に失敗しても決して責めないことも必要です。
排泄中はトイレの外で待機したり、トイレのカーテンをしっかり閉めたりする、音や匂いにも配慮するなど、安心して排泄できる環境を整えましょう。

できない部分を介助する

排泄が難しいからといって、全てを介助するのではなく、できない部分を介助するようにしましょう。
よかれと思ってできることまで介助すると、その人の残存能力を奪ってしまうことになります。

人が排泄をするには以下のステップがあります。

  • トイレに行きたいと感じる
  • トイレへ移動する
  • トイレに入りズボンをおろす
  • 便座に座る
  • 排泄する
  • 陰部を拭く
  • 立ち上がりズボンを上げる
  • トイレから出て元いた場所(次の目的地)へ移動する

その方の身体機能や認知機能の状態によって、できないことを把握して介助することで、残存機能の維持につながります。

排泄のタイミングを掴む

排泄のタイミングは個人個人によって大きく異なります。
その人の排泄のパターンが分かればトイレで排泄できる回数が増やせるでしょう。

具体的には、数日間の排泄状況を観察し、排泄の頻度や間隔を把握します。
人により「朝食の後は排便が出やすい」「午前中は排尿量が多い」などのパターンが見えてくることも多いです。
その方のタイミングを見ながらトイレへ誘導することで、トイレでの排泄を継続できる可能性が高まります。
トイレで排泄できる回数が増えると、不快が避けられ、羞恥心を軽減できます。

水分摂取を制限しない

高齢者のなかには、あまり積極的に水分を取りたがらない方が一定数います
「何度もトイレに行きたくない」「夜はトイレに行かずにゆっくり寝たい」といった理由のことが多いでしょう。

しかし、水分が不足すると便秘や脱水などの体調不良を引き起こす可能性が高まります。
介護者は、水分摂取のたまの声かけや介助方法を工夫して、十分な水分を摂取するよう促す必要があります。

排泄介助が適切におこなわれないとどうなる?

排泄介助が適切におこなわれないと、精神面だけでなく、皮膚状態の悪化やその他の疾患にかかるリスクが高まります。
以下で詳しく解説します。

自尊心が低下する

排泄介助が適切におこなわれないと、要介護者の自尊心を大きく傷つけてしまうことがあります。
トイレで排泄できず失禁してしまうことで、情けなさやあきらめを感じさせてしまう可能性があり、陰部や排泄物を見られることによる羞恥心もあるでしょう。

自尊心が低下すると、心身の機能も低下し、意欲や生活の質がさがってしまうリスクがあります。
プライバシーに配慮しつつ、その方に合った排泄介助がおこなわれるように、先輩職員にも相談できると良いでしょう。

皮膚トラブルを起こしやすくなる

不適切な排泄介助は、皮膚トラブルを引き起こす可能性があります。
排泄物が陰部に長時間付着したままの状態は、皮膚のただれ、かゆみ、湿疹、褥瘡などの皮膚トラブルにつながりやすくなります。

特に高齢者は皮膚が脆弱で、排泄物による刺激に対して非常に敏感です。

  • できるだけトイレで排泄する
  • おむつを使用する方は決まった時間に陰部洗浄をおこなう
  • 排便の際はその都度陰部洗浄する

これらの対応をおこない、皮膚の汚染を防ぎましょう。

尿路感染症やその他の疾患のリスクがある

排泄介助が適切におこなわれないと、尿路感染をはじめとする疾患につながるリスクがあります。
本来排出されるはずの尿が膀胱内に滞留することで細菌が繁殖しやすくなり、尿路感染症を引き起こします。
最悪の場合、自分で尿を排出できなくなり、バルーンカテーテルを留置しなければならないケースも出てくるでしょう。
水分をしっかり摂取してもらい、適切な排泄介助を行うことで、尿路感染やその他の疾患を防ぐことが大切です。

排泄介助の正しい知識を身につけ、スキルアップを目指そう

ご利用者様は、排泄介助を受けることに対して、羞恥心や申し訳なさを感じています。
できることはやってもらうことで、少しでも不安な気持ちを軽減できる働きかけが大切です。
そのため、介護職員は、正しい知識とスキルを身につけ、ご利用者様に安心してもらえるよう務める必要があります。
本記事を参考に、排泄介助の種類とポイントを理解して、自信を持って対応できるようにスキルアップしましょう。

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この記事を書いたのは・・・

さとひろ/Webライター

保有資格:ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師
介護業界で22年の経験をもつ、特別養護老人ホームの現役ケアマネジャー兼生活相談員。介護職員・ケアマネジャー・生活相談員としての経験をもとにわかりやすい記事を執筆します。