「申し送りがうまくできない」
「情報をわかりやすく伝えられない」
「スムーズに情報伝達できる効率的なツールを知りたい」
介護施設で働く介護職員のなかには、申し送りに関してこのような悩みをお持ちの方も多いでしょう。
申し送りは、次の担当者にご利用者様の状態や業務内容を正確に伝える重要な業務です。
しかし、適切な申し送りができないと、ご利用者様の状態変化の見落としや対応の遅れにつながり、サービスの質の低下を招く恐れがあります。
そこで本記事では、介護職員の申し送りの目的や伝達内容、時間短縮のためのツールについて、特別養護老人ホームに20年以上勤務している筆者がわかりやすく解説します。
苦手意識を克服しスキルアップしたいという方はぜひ参考にしてください。
この記事の内容
申し送りとは?
介護施設において申し送りは、シフト交代時にご利用者様の状態や重要な出来事を次の担当者に確実に伝える業務です。
介護サービスを継続的に提供するために不可欠な業務であり、ご利用者様の安全と適切なケアを確保する上で重要な役割を果たしています。
近年では、従来の口頭による申し送り方法に加え、デジタル技術を活用した新しい形態も登場しています。
引き継ぎとの違い
申し送りと似た業務に「引き継ぎ」があります。
両者はどちらも次の担当者に情報を伝達する業務ですが、その目的と性質は異なります。
申し送りは日々の業務の中でおこなわれる一時的な情報共有であるのに対し、引き継ぎは業務自体を後任者に完全に移譲することです。
引き継ぎでは、業務内容や注意事項など、より包括的な情報を伝えることで、後任者が円滑に業務をおこなえるようにします。
申し送りは本当に必要?
近年では、従来の申し送りを見直す動きが出ています。
申し送りの方法を見直す主な理由は以下のとおりです。
- 申し送りに集合する時間の確保が困難
- 感染症対策
- 業務効率化
しかし、こうした施設でも、申し送りそのものを完全に廃止するのではなく、PCやタブレットなどを活用して誰でも情報を確認できる方法を模索し実践しています。
また、感染症をきっかけに、ZOOMのようなオンライン会議システムを用いることで、集合しなくても効率的に申し送りをしている施設もあります。
このように、申し送り自体をなくすことは難しくても、代替えの方法を検討することで、負担を軽減することは十分可能です。
介護職員が申し送りをする目的
介護職員が申し送りをする目的には、主に以下の3つがあります。
- 適切なサービス提供
- スタッフや施設を守る
- ケアプランや業務内容を見直す
それぞれを具体的に見ていきましょう。
適切なサービス提供
介護現場では、ご利用者様の状態が日々変化します。
スタッフは24時間のシフト制で、2交代や3交代での勤務になるため、シフト交代時の正確な情報共有が不可欠です。
例えば、新規のご利用者様の対応方法や体調変化のある方、事故があり対応が変わった方などの情報は、正確に伝わらなければ適切なサービス提供ができません。
スタッフや施設を守る
事故やトラブルが発生した際に、申し送りで正確な情報が伝われば、適切な対応をしていたことを証明でき、スタッフや施設を守ることにつながります。
施設に過失のある事故でなくても、家族やその他の関係者の捉え方によってはトラブルになりかねません。
そのため、事故が起きた経緯や対策に関する検討内容、クレームがあった際の説明内容を申し送りで共有することで、次の担当者も継続的な対応が可能になります。
ケアプランや業務内容を見直す
申し送りはケアプランや業務内容の見直しにも役立ちます。
ご利用者様の状態変化や対応したことの結果が共有されることで、ケアプランの更新や業務改善の際の検討材料として活かせるでしょう。
例えば、食事摂取量が少なくなってきたご利用者様の情報を、担当者一人で把握するのではなくチームで共有することで、現状に即したプランにスムーズに更新でき、よりよいケアの提供につながります。
介護職員がおこなう申し送りの主な内容4つ
介護職員がおこなう申し送りには、施設が異なっても共通して伝えるべき4つの内容があります。
- ご利用者の体調
- 本人や家族からの要望、連絡事項
- 施設で発生した事故やトラブル
- 業務連絡
ご利用者様の体調に関する情報は最も基本的な申し送り事項であり、バイタルサインの変化や服薬状況、食事摂取量など、日々の健康状態を正確に共有します。
本人や家族からの要望・連絡事項は、個別のニーズに応じたサービス提供につながります。
また、施設内で発生した転倒などの事故情報や対応経過も、再発防止と安全管理の観点から欠かせません。
さらに、施設運営に関する情報やスケジュール変更などの業務連絡も、円滑なサービス提供のために必要不可欠です。
これらの情報を適切に伝達することで、安全で効率的なケアが実現できます。
介護職員がスムーズに申し送りをおこなうための3つのコツ
介護職員がスムーズに申し送りをおこなうためには、以下の3つのコツをおさえましょう。
- 正確な情報を伝える
- 結果から簡潔に伝える
- 客観的な事実を伝える
ひとつずつ見ていきましょう。
正確な情報を伝える
申し送りで伝える情報が正確でなければ、次の勤務者は正しい対応ができません。
5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して正確な情報を伝えられるよう努力しましょう。
あいまいな表現を避け、具体的な数字や状況を伝えることで、認識の違いを防ぐだけでなく、確実な情報伝達と適切なケアの継続が可能になります。
結果から簡潔に伝える
申し送りでは、最も重要な情報を最初に伝えることが効果的です。
例えば「夜中の3時に、Aさんが居室で左側臥位で倒れているのを発見しました。怪我はなくバイタルサインの異常はありません。本人の話では、トイレに行こうとして体の向きを変えようとしたときにバランスを崩してしまったようです」というように、結果から伝えることで、受け手は状況をすぐに理解できます。
逆に、経緯から話し始めると、重要な情報が後回しになり、理解に時間がかかってしまいます。
客観的な事実を伝える
申し送りでは、主観である自分の意見や推測と、客観的な事実を明確に分けて伝えることが大切です。
例えば、呼吸状態に変化のあった利用者の報告をする際に「苦しそう」と伝えるより、「呼吸が浅く、1分間で25回しています」と伝えたほうが、間違えた解釈を起こしにくいでしょう。
具体的な数字を観察結果として伝えることで、誤解を防ぎ正確な情報共有が可能になります。
申し送りの時間を短縮させるツール
申し送りの時間を短縮させるには、ツールを活用するのがおすすめです。
最近では、デジタル技術の進歩により、手書きや口頭よりも効率的に申し送りができることもあります。
本章では、時間短縮のためのツールについて紹介します。
テンプレートを使用する
申し送りの内容を状況別にテンプレート化することで、伝達内容の検討時間を短縮できます。
例えば、転倒が起きたときの伝え方、嘔吐があったときの伝え方など、シチュエーションに合わせて伝える内容をあらかじめチーム内で決めておきます。
出来事に対する確認事項が共通なので、スムーズな情報提供ができるだけでなく、申し送りの質も向上します。
PCやタブレットを活用する
PCやタブレットなどのデジタル機器を活用することで、手書きよりも短時間で作成したり、情報の共有がしやすくなります。
施設内のネットワーク上にある共有ファイルで情報を整理すれば、いつでも必要な情報にアクセスできます。
また、前回と同じ内容を申し送る際、場合によってはコピーできることもあり、ノートに何度も同じことを手書きで記入する手間は省けるでしょう。
ZOOMを活用する
「毎朝9時に事務所前に集合する時間がない」「人手不足でフロアを離れられない」という状況も考えられます。
その際は、ZOOMのようなオンライン会議システムを活用するのも一つの方法です。
わざわざ集合しなくても、それぞれのステーションにいながら申し送りに参加できます。
感染症の発生時にも、感染フロアのスタッフのみZOOMで参加すれば「今必要なものはなにか」といったリアルな情報共有を効率的におこなえます。
まとめ
申し送りは、ご利用者様の安全とケアの質を確保するために欠かせない業務です。
時間的制約や人手不足の中でも、テンプレートの活用やデジタルツールの導入により、効率的な申し送りが可能です。
また、申し送りに苦手意識があっても、5W1Hを意識した正確な情報伝達を心がけることで、苦手意識も克服しスキルアップできるでしょう。
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この記事を書いたのは・・・
さとひろ/Webライター
保有資格:ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師
介護業界で22年の経験をもつ、特別養護老人ホームの現役ケアマネジャー兼生活相談員。介護職員・ケアマネジャー・生活相談員としての経験をもとにわかりやすい記事を執筆します。