服薬介助とは?対応方法や注意点を解説

「服薬介助での失敗が怖い」「服薬介助がうまくできない」と悩んでいる人もいるかもしれません。
服薬介助のポイントが掴めないままでいると、いざ対応するときに焦ってしまい、思わぬ誤薬ミスにつながりかねません。

本記事では、服薬介助のポイントや注意点、拒否されたときの対応方法などを解説していきます。
記事を読んで服薬介助のポイントをしっかりと理解し、安心して対応できるようにしていきましょう。

服薬介助とは

服薬介助とは、自分で薬を服用する、または管理することが困難なご利用者様に対し、それをサポートする行為を指します。

薬は体のメンテナンスに欠かせないものである一方で、一歩間違えば命の危険があるものです。
認知症などの疾患により、ご自身で用法・用量を管理できない場合に、介護職員や看護師が服薬のお手伝いをします。

介護職員が可能な服薬介助の範囲

介護職員が可能な服薬介助は以下のとおりです。

  • 一包化された薬の準備や介助
  • 容態が安定しているご利用者様の服薬サポート
  • 市販の浣腸液の挿入
  • 軟膏の塗布
  • 坐薬の挿入

容態が安定していて、リスクが低い場合であれば、介護職員が介助を実施することができます。

また、介護職員が実施してはいけない服薬介助もあります。
例えば、容態が安定していない、または副作用や誤嚥の危険があるご利用者様の服薬介助は、介護職員がおこな 行うことはできません。

服薬介助の手順

服薬介助の手順は以下の通りです。

  1. 薬の準備をする
  2. 薬に記載されている名前と服薬の日付や時間を確認する
  3. 本人に声をかけ、服薬のお手伝いをする
  4. 飲んだ後も再度袋を確認する
  5. 施設の方法にもとづき、袋の片付け・廃棄を行う

服薬介助は、準備・介助・片付けの大きくわけて3つの流れでおこないます。

どの瞬間も共通して大切なのが「確認を怠らない」ということです。
服薬前・服薬中・服薬後も、必ず薬が間違っていないか、また、しっかり服薬できたかを確認するようにしましょう。

袋の準備や廃棄方法は施設によって意向が異なります。
例えば、フロア全員の服薬介助が終わるまで薬の袋をとっておいて、最後にもう一度薬の服用ができたかチェックする施設もあります。
施設の方法に従って、薬をよく確認するようにしましょう。

服薬介助のポイント

服薬介助のポイントは大きくわけて3つあります。
ここからは服薬介助のポイント3つを解説していきます。

  • 薬袋に記載してある情報をすべて読み上げる
  • 飲みこみを確認する
  • 飲みこみにくい場合は工夫する

1つずつ見ていきましょう。

薬袋に記載してある情報をすべて読み上げる

薬袋に記載してある情報は、流し見するのではなく、全て音読するようにしましょう。
筆者も介護職員時代には、この対応を必ず行っていました。
「間違えないように気を付けよう」と思っていても、人間なので思い込みや認識間違いでミスを起こしてしまうことがあります。
それを少しでも防ぐために、この音読は有効です。

例えば、薬袋に記載してある氏名、薬の時間、薬の名前を声に出してご本人の前で読み上げます。
薬が間違っていた場合、ご利用者様が教えてくれたり、音読することによって自分で気がつく可能性があります。

確実な服薬をするためにも、薬の情報は読み上げてチェックするようにしましょう。

飲みこみを確認する

ご利用者様が薬を飲んだかをしっかり確認することも大切です。
口に含んだと思っても、その後上手く飲みこめていない可能性もあるからです。
時間ごとに服薬できないと、ご利用者様の健康リスクとなる恐れもあります。

飲みこみがどうしてもできなかった場合は、速やかに看護師などに相談するようにしましょう。

飲みこみにくい場合は工夫する

ご利用者様の嚥下機能により、薬をうまく飲みこめないことはあります。
その場合は、少量のゼリーなどに混ぜながら服薬介助をおこなってもいいでしょう。

ただし、飲み込みにくいからといって食事一品全てと薬を混ぜるのは考えものです。
混ぜるときには、少量のものにしましょう。

服薬介助の注意点

服薬介助をするうえで気を付けたいこともあります。
ここからは、服薬介助をするうえでの注意点を解説していきます。

  • 誤薬してしまったらすぐに看護師に報告する
  • 忙しくてもしっかりと確認しながらおこなう
  • 服薬後の様子も確認する

誤薬してしまったらすぐに看護師に報告する

誤薬とは、ミスをして誤った服薬介助をしてしまうことです。
誤薬は、ご利用者様の健康リスクに大きく関わります。
一歩間違えば、命を落とす危険もあるため、誤薬してしまったらすぐに看護師に報告するようにしましょう。

よくある誤薬は、名前や飲む時間を誤り、間違った薬を飲んでいただいてしまうことです。
例えば、他の人の薬を間違えて差し上げてしまった、または朝の薬を間違えて夜飲んでもらってしまったなどの事例があげられます。

こういった誤薬は、忙しい一人勤務のときなどに発生しやすいため、特に注意しましょう。
誤薬に気づいたら、看護師の指示に従って迅速に対応するようにしましょう。

忙しくてもしっかりと確認しながらおこなう

どんなに忙しくても、服薬介助は丁寧におこなようにしましょう。
多忙だからといって焦っておこなったり、確認を怠ったりすれば誤薬を引き起こしかねません。

忙しい場合に、他の業務で時間短縮できるものを検討するのは良いと思いますが、服薬介助の時間だけはゆっくりとていねいに、確認しながらおこなようにしましょう。

服薬後の様子も確認する

服薬後のご利用者様の様子も確認するようにしましょう。
状況・状態によっては、服薬後に体調が悪くなったり、異変を起こしたりする可能性もあるからです。

服薬後に体調が悪そうな様子を発見したら、看護師にすぐに報告するようにしましょう。

服薬を拒否されたときの対応方法

ご利用者様によっては、服薬の拒否をされることがあります。
ここからは、筆者の経験を交えながら服薬を拒否されたときのおすすめな対応方法を3つ紹介していきます。

看護師に相談したのちに時間をずらす

薬の服用をご利用者様に拒否されることはあります。
筆者も介護職員として働いていた頃、拒否された経験があります。
特に認知症や精神的疾患を患っているご利用者様は、施設で用意される薬に対し疑心暗鬼になって服用したがらないこともあります。

そういった場合には、さとすことも一つの方法ですが、どうしても無理な場合は看護師に相談して服薬の時間をずらしていました。
無理強いしてしまうと余計に拒否が強くなるため、やめましょう。
ただし、時間をずらして良い薬であるかどうかは看護師に確認する必要があります

服薬するメリットを伝える

拒否されたときに、服薬するメリットをお伝えすることもおすすめです。
薬を飲むことをポジティブに捉えてもらえば、前向きな気持ちで服薬してもらえる可能性があるからです。

例えば、排便コントロールのための下剤であれば、お薬を飲んで体に溜まった便を出すとその後スッキリしてご飯が美味しくなるかもしれません」などと伝えてみると良いでしょう。
ただし、嘘はつかないようにしましょう。

服薬の後に特典をつける

服薬拒否が強いご利用者様には、可能な限り特典をつけるようにしていました。

例えば、薬を服用したら、時間を空けて好きなお菓子を一つ差し上げるなどです。
そうすると、薬の服用を嫌がっていたご利用者様でも、頑張って飲んでくださったことがありました。

ただし、特典については自分の判断だけでおこなうと不平等になったり、チーム内でケアの方法にズレが生じたりします。実施したい場合には必ず他の職員や上司に相談しましょう。

まとめ

服薬介助は、ご利用者様の健康や安全を守る大切な介護ケアのうちの一つです。
薬は健康に関わる大切なものですので、誤薬などのミスを防ぐためにも、記事内で紹介した方法で丁寧に実施してください。

また、薬を拒否されることも介護現場ではよくあります。
拒否されたときの対応も、無理強いするのではなく、本記事をぜひ参考にしてみてください。

服薬介助のポイントを押さえて、安心してケアを進められるようにしていきましょう。

この記事を書いたのは・・・

中村 亜美/Webライター

保有資格:介護福祉士
特別養護老人ホームでユニットリーダーとして11年程勤務。
その後はフリーライターとして活動中。在宅介護者や介護事業者、介護職員向けのコラム・取材記事を執筆している。