介護職員の個人目標はどう書く?簡単5ステップと例文を紹介

「個人目標ってどう書けばいいの?」と悩んでいませんか?
介護職の経験が長くなると、できることが増えるぶん目標にすることが減ると感じるかもしれません。とはいえ、職歴に関わらず設定しなければなりません。

本記事では、個人目標の立て方に悩む方に向けて、簡単5ステップの目標設定を解説しています。
キャリア別の例文もまとめたので、参考にしてみてください。

介護職員が個人目標を立てる3つのメリット

介護職員の個人目標には3つのメリットがあります。

  • キャリアプランがはっきりする
  • 仕事に対するモチベーションが上がる
  • 介護職員としてのスキルアップにつながる

1つずつ見ていきましょう。

キャリアプランがはっきりする

介護職員が個人目標を立てると、キャリアプランがはっきりします。
個人目標を具体的に考えて設定すれば、自分がこれから何を目指すべきかがわかり行動しやすくなるのがメリットです。

たとえば「認知症ケアの知識を広げるために、専門書を月に一冊読む」と決めるとします。
本を読んで知識が増えるだけでなく、専門的な研修への参加や資格取得など、次にとるべき行動が見えてくるでしょう。

個人目標を持つことで将来の選択肢が増えます。目標を意識しながら業務に取り組み、自分のキャリアを築いていきましょう。

仕事に対するモチベーションが上がる

仕事に対するモチベーションが上がるのもメリットといえます。明確な目標を定めて一歩ずつ達成のために行動を重ねる中で、仕事にやりがいを感じやすくなるからです。

たとえば「認知症ケアの知識をふやす」と目標を決めたとします。
専門書を読んだり、研修に参加したりして知識を増やせば、ご利用者様の行動に対する理解が深まるでしょう。

結果、適切なケアを提供できるようになり、ご利用者様は落ち着いて過ごせる時間が増えていきます。

目標を達成できれば、知識が深まるだけでなくケアの質が上がり、周りからも好印象です。他の職員に認めてもらえたと感じると、さらにモチベーションはアップするでしょう。

個人目標は、自分の成長を感じられるだけでなく、仕事への意欲を高めるものともいえます。

介護職員としてのスキルアップにつながる

個人目標は、介護職員としてのスキルアップにつながるのもメリットです。

目標を立てるとき、必ず自分が抱えている課題や現在のレベルを振り返ります。その際、現在の自分に足りないものやとるべき行動が見えてくるでしょう。

「1日にご利用者様と話す時間をもっと増やして、コミュニケーション力を育てよう」
「介護職員初任者研修は終了したから、介護福祉士を目指して勉強しよう」
こういった目標設定は、介護職員としての成長を促します。

個人目標の立て方5ステップ

個人目標は、シンプルに「◯◯ができるようになる」と一言で表しても構いません。しかし、より達成が現実に近づくようSMARTの法則を使った目標設定をおすすめします。

法則、と聞くと難しそうな印象を受けるかもしれませんが、さまざまな業種で使われている目標設定の考え方です。より具体的な個人目標を決められるので、よければ一度使ってみてください。

【SMARTの法則】

  • Specific:具体的に
  • Measurable:測定可能な
  • Achivable:達成可能な
  • Relevant:関連性のある
  • Time-bound:期限が明確な

本章では「ご利用者様とご家族様の満足度を上げる」を目標例に、具体的な5ステップで解説していきます。

達成したいことを具体的にする

「ご利用者様とご家族様の満足度を上げる」という目標を、さらに具体的に掘り下げましょう。目標を達成するにはどのような方法があるかを考えます。

「ご利用者様とご家族様の満足度を上げる」を目標とした場合、以下の方法が考えられます。

  • 3ヶ月に1度ご家族様へ満足度アンケートをとる
  • ご利用者様には介護職員が直接アンケート(インタビュー形式)をとる

目標だけではなく、目標を達成するための行動を言語化しましょう。

達成度を測る指標を決める

次に、個人目標の達成度を見るための指標を決めます。できれば数字でわかりやすく表せる指標を決めましょう。

【指標の例】

  • 初回アンケートの結果を基準として1年後の満足度を10%上げる
  • 初回アンケートの結果を基準として苦情・クレーム件数を20%下げる

単に「満足度が上がって良かった」と漠然とした結果にならないよう、数値化できる指標を決めましょう。

現実的に達成できる方法を考える

日々の業務の中で無理なくおこなえる方法を検討しましょう。
アンケートを実施するにあたり、現実的な進め方を考えていきます。

【達成できる方法の例(3ステップ)】

  1. 初回アンケートは1ヶ月以内に実施
  2. アンケートの結果をまとめてミーティングをひらく
  3. ミーティングで課題を洗い出し、改善策を考えて実践する

目標と指標が決まっていても、実際に行動する時間がとれなければ個人目標の達成には至りません。また、目標の内容によっては他の介護職員に協力を求めなければならないケースもあります。

介護職員の個人目標は、単独で設定できるものよりも他者を巻き込むものが多いです。
筆者は「介護技術を向上させる」と目標を設定し、職場の上司や先輩に移乗や更衣介助などを見てもらっていました。

他の人に協力してもらう場合は、目標設定の段階で相談してみるのも良いでしょう。コミュニケーションの活性化にもつながり、あなたの意欲も伝わります。

自分の目標と職場の方向性や価値観を関連づける

個人目標は自分の成長だけでなく、職場の方針や価値観と結びつくかも考えるのがおすすめです。
ご利用者様の満足度を高める姿勢はどの介護施設も同じです。

ご利用者様が今よりも楽しく過ごせるようになれば、介護職員としてのやりがいや達成感も大きくなるでしょう。また、施設の評判が良くなれば、入所希望者の増加が期待できます。

職場にポジティブな影響を与える個人目標を設定すれば、より前向きに業務に取り組めます。

筆者は「迅速かつ丁寧なケアをおこなう」という職場の理念のもと「ご利用者様とじっくり関わりアセスメントする」という個人目標を設定しました。達成のためにおこなったのは、月に一度の備品チェックの時短です。

月末に膨大な量の備品管理簿を記帳する必要がありましたが、自発的にこまめに備品の補充や補修をした結果、月末の備品管理簿はいつもより20分早く終わりました。備品の破損や故障にもいち早く気付いたため、ご利用者様の安全を確保できました。

小さな変化ですが、職場の考え方に合った個人目標は結果的に職場全体の成長にもつながります。

目標達成までの期限を決める

個人目標を設定する際は「いつまでに達成するのか」を明確にするのも大切です。期限を決めれば具体的な行動計画を立てられますし、進捗管理もしやすくなります。

「ご利用者様とご家族様の満足度を上げる」ことを目標にする場合の、期限の設定には以下のようなものが考えられます。

【期限の例】

  • 1ヶ月以内にご家族からのフィードバックを10件以上集める
  • 3ヶ月ごとにアンケートを実施し、1年以内に満足度を10%向上させる

期限の設定と計画的かつ具体的な行動で、より実現可能な目標にしていきましょう。

キャリア別|介護職員の個人目標の例文

ここからは、キャリア別の個人目標の例文を紹介します。

【新人】1~3年目の例文

新人の場合は「業務内容を覚える」「介護職員初任者研修で基礎を学ぶ」など、さまざまな個人目標を立てやすいです。ここでは、資格取得を目標にした例を見てみましょう。

SMART目標
具体的
(Specific)
介護職員初任者研修を受講し、資格を取得する
測定可能
(Measurable)
毎日1時間自宅で勉強する
達成可能
(Achievable)
週3階の講義を受ける
関連性
(Relevant)
介護の基礎知識を身に着け、利用者様に安心・安全なケアを提供できるようになる
期限
(Time-bound)
〇年〇月までに介護職員初任者研修を修了し、試験に合格し資格を取得する

文章に落とし込む場合は以下のように書いてみてください。

〇年〇月までに介護職員初任者研修を修了し、試験に合格して資格を取得する。
そのために、仕事と両立しながら週3階の講義を受け、毎日1時間は自宅で勉強する。

こちらの記事では、介護職員初任者研修についてまとめています。これから初任者研修にチャレンジしようと考えている人は参考にしてみてください。

【中堅】4~9年目の例文

中堅の介護職員は、後輩を指導したりまとめたりする役割を担います。

SMART目標
具体的
(Specific)
リーダーとして、チームの業務を円滑に進めるために、スタッフ間の情報共有を強化し、業務改善に取り組む
測定可能
(Measurable)
ミーティングを毎月1回開催し、業務改善の提案を最低1つ挙げる
達成可能
(Achievable)
リーダー研修に参加し、研修後に学んだ内容を現場で1つ以上実施する
関連性
(Relevant)
職員が働きやすい環境を作り、チーム全体の介護の質を向上させる
期限
(Time-bound)
〇月までに業務の改善案を3つ実施し、チーム内の情報共有がスムーズにおこなえる体制を整える

文章にはこのような形で書くと良いでしょう。

〇月までに、リーダーとしての役割を強化し、チームの業務を円滑に進める体制を整える。
毎月1回カンファレンスを開催し、業務改善提案を最低3つ実施する。その中でスタッフ間の情報共有をスムーズにし、働きやすい職場環境を作る。

【ベテラン】10年以上の例文

10年以上のベテランであれば、職場全体がより良くなるためにマネジメント的視点も必要です。

SMART目標
具体的
(Specific)
管理職として、人材育成と業務の効率化を図り、職場の働きやすさと介護の質の向上を目指す
測定可能
(Measurable)
新人・中堅スタッフ向けの研修を1年間で計5回実施し、スタッフのスキルアップを支援する
達成可能
(Achievable)
業務フローを見直す。
現場の意見を取り入れながら、改善策を提案する
関連性
(Relevant)
職員が安心して働ける環境を整え、離職率の低下とご利用者様の満足度アップを目指す
期限
(Time-bound)
〇月までに、業務改善策を3つ策定し、1つ以上導入する。
介護職員に向けた研修を年5回実施し、現場のスキルアップを図る

文章では、このような形になります。

〇月までに、施設のマネジメント業務を強化し、年間5回の研修を通じて介護職員のスキルアップと業務の効率化を図る。
業務フローを見直して改善策を3つ提案・そのうち1つを導入する。
現場の意見を取り入れながら、職員が働きやすく、ご利用者様に質の高い介護を提供できる環境に近づける。

どうしても個人目標が決まらない場合の対処法

個人目標が決まらないときは、以下の方法を試してみてください。

  • 上司や先輩に相談する
  • 業務改善したい点がないか考える
  • 自分がどのような介護職員になりたいか整理する

1つずつ解説していきます。

上司や先輩に相談する

まず、上司や先輩に相談してみましょう。

個人目標の設定は、誰もが悩んだ経験を持っています。そのときにどのように乗り越えたか、どのような目標を立てたかなど、有益なアドバイスや具体的なヒントを得られるかもしれません。
経験に基づいた意見を聞きながら、自分のキャリアプランと照らし合わせてレベルに応じた目標を設定してみましょう。
自分にはない視点から、介護職員としての成長につながる目標が浮き彫りになるケースもあります。ひとりで悩まず、周りの人に意見を聞いてみてください。

業務改善したい点がないか考える

業務の中で「もっとこうしたい」と感じた点を挙げてみましょう。課題の改善策を考えると、個人目標につながる可能性があります。

業務上の課題考えられる改善策
記録の作成に時間がかかる記録を書くタイミングを決める
記録のテンプレートを作りこまめにメモをとる
認知症の方の対応が難しい先輩の関わり方を観察する
認知症介護基礎研修を受ける
移乗介助がスムーズにできない外部研修で学ぶ
一緒に介助しながら先輩にアドバイスしてもらう

個人目標は、自分の成長につながるだけでなく、ご利用者様により良いケアを提供する介護職員への指標でもあります。

働く中で感じた「改善したいこと」をリストアップし、個人目標を見つけていきましょう。

自分がどのような介護職員になりたいか整理する

将来、どのような介護職員になりたいかを考えてみましょう。漠然とした理想ではなく、1年先・3年先の成長した姿を具体的にイメージしてみてください。

  • 1年後はご利用者様とのコミュニケーションを深め、柔軟な対応力を身につけたい
  • 3年後は介護福祉士を取得して後輩を指導できるようになりたい
  • 5年後はリーダー職として人財育成に関わりたい

細かく目標を定めると、これからどのように行動すべきかが見えてきます。

資格を取得する場合、どのように業務に活かすのかも考えておきましょう。
筆者は福祉住環境コーディネーターの資格を取りましたが、ご利用者様の環境を今よりも快適かつ安全にできればとの思いからでした。

個人目標を決める際は、目標の背景にある自分の考えや、業務上のメリットも整理しておくと、目標達成への意識が高まります。自分の理想とする介護職員像に向けて、計画的に行動しましょう。

知っておきたい介護職員のキャリアパス制度

キャリアパスとは、ある地点(役職など)に到達するまでの道筋を指す言葉です。介護職におけるキャリアパスは、それぞれの職場で介護職員のスキルや経験を評価し、キャリアアップを目指しやすくする仕組みを表します。

評価される基準がわかると、職員の目標が立てやすくなりモチベーションが上がります。仕事への意欲が高まれば、離職率の低下につながり、介護人材を確保できる点がメリットです。

【介護職員のキャリアパスの例】

職歴キャリアパス
新人(1~3年目)介護職員初任者研修や実務者研修を修了・介護福祉士を目指す
中堅(4~9年目)リーダー職やケアマネジャーを視野に入れ、認知症に関する研修などでスキルを磨く
ベテラン(10年以上)主任や施設長候補として真似地面tを学び、キャリアアップを図る

キャリアパスに沿って目標を決めて業務に取り組むと、自分がどの程度成長したかがわかりやすくなります。介護職員としてのレベルを言語化できるので、転職活動でキャリアについて伝える場面でも役立つでしょう。

まとめ

介護職員の個人目標は、具体的かつ現実的なものを設定しましょう。SMARTの法則に沿って決めるのがおすすめです。

【SMARTの法則】

  • Specific:具体的に
  • Measurable:測定可能な
  • Achivable:達成可能な
  • Relevant:関連性のある
  • Time-bound:期限が明確な

「◯◯を達成する」といった目標でも問題はありません。しかし、具体的に目標を定め、期限を決めて計画的に達成に向けて行動すれば、介護職員としてのスキルアップを実感しやすくなります。

また、達成度を測りやすい指標を設ければ、あなたの努力がより分かりやすくなります。そのため、職場での人事考課でもあなたの努力が伝わり、評価につながるでしょう。

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この記事を書いたのは・・・

佐藤 恵美/Webライター

保有資格:介護福祉士/社会福祉士
回復期リハビリ病棟で7年勤務したのち、社会福祉士を取得し、
生活相談員を経験。現在はフリーのWebライターとして活動中。