重度訪問介護とは、重度の障害があるご利用者様の生活を支える障害福祉サービスです。
訪問介護の現場で経験を積むなかで、「移動ばかりで疲れる」「キャンセルで給料が減る」「将来が不安」といった悩みを抱える方は少なくありません。将来のキャリアについて考える際、経験のある介護職員にこそ、重度訪問介護はおすすめの働き方のひとつです。
本記事では、通常の訪問介護とは異なる働き方や対象者、その他の違いについてくわしく解説します。今のスキルを活かし、安定した収入とやりがいを得るための選択肢として、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
重度訪問介護とは?厚生労働省の定義をわかりやすく解説
重度訪問介護とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつです。重度の障害により常に支援を必要とする方が、住み慣れた自宅や地域で自立した生活を送れるようサポートしています。
どんなサービス?障害者の自立を支える長時間ケア
厚生労働省の定義によると、重度訪問介護は「常時介護を必要とする方」への「総合的な支援」とされています。最大の特徴は、短時間の巡回型ではなく、長時間滞在し、見守りを含めたケアをおこなう点です。
身体介護や家事援助に加え、外出時の移動支援や、日常生活で起こりうる事態に対応するための見守りまでを包括的に提供します。これにより、重い障害があっても24時間体制で在宅生活を維持することが可能です。
重度訪問介護を受けられる対象者と条件
対象は、重度の肢体不自由、知的障害、または精神障害があり、常に介護を必要とする方です。具体的な利用条件は、原則として障害支援区分4以上であることに加え、二肢以上に麻痺があることや、行動上の著しい困難を示す認定調査項目の点数が基準を満たすことなどが求められます。
具体的には、以下のような方が該当します。
- 二肢以上に麻痺があり、歩行や排泄に支援が必要な方
- 行動上の著しい困難により常時の見守りが必要な方
実際の利用状況では、より手厚い支援が必要な区分5や区分6の方が大半を占めています。
重度訪問介護の仕事内容
重度訪問介護では決められたタスクをこなすだけでなく、ご利用者様が自分らしく生活するために、生活全般を総合的にサポートします。
具体的な業務内容は、以下のとおりです。
| 業務の種類 | 具体的な内容 |
| 身体介護・家事援助 | ■食事・入浴・排泄介助、調理、掃除、洗濯など ■基本は訪問介護と同じだが、ご利用者様ごとの手順やこだわりに深く寄り添ったケアが求められる ■見守りや生活全般の相談 |
| 移動支援(外出介助) | ■通院だけでなく、映画鑑賞や旅行、散歩といった「余暇活動」への付き添いが可能 素格社会参加をサポートできる点が大きな特徴 |
| 医療的ケア | ■喀痰吸引(たんの吸引)や経管栄養など ■所定の研修(第3号研修等)を修了した介護職員であれば実施可能 |
特に移動支援では、季節のイベントや趣味の活動を共に楽しみながらのサポートもできるため、訪問介護とは違ったやりがいを感じられるでしょう。また、医療的ケアのスキルを習得することで、より専門性の高い支援が可能になります。
日勤(9:00〜18:00)のスケジュール
日中は、食事や排泄などの身体介護に加え、通院や趣味のための「外出支援」がメインになることが多いです。
| 時間 | 項目 | 内容 |
| 9:00 | 訪問・申し送り | 前任のヘルパーから引き継ぎ |
| 9:30 | 朝食・身支度 | ご利用者様の希望を聞いて食事を準備・介助食後の口腔ケアや着替え、整容 |
| 11:00 | 外出(移動支援) | 車いすへの移乗を介助し、通院や買い物、趣味活動など移動中の安全確保はもちろん、受診中などの待ち時間は待機 |
| 16:00 | 帰宅・休憩 | 帰宅後は水分補給や排泄介助をおこない、ご利用者様がくつろいでいる間に記録 |
| 18:00 | 退勤 | 夜勤のヘルパーに引き継ぎをして業務終了 |
夜勤(18:00〜9:00)のスケジュール
夜勤は、夕食や入浴の介助、そして就寝中の見守りが中心です。喀痰吸引のような医療的ケアが必要な場合もあります。
| 時間 | 項目 | 内容 |
| 18:00 | 訪問・夕食介助 | 日勤者から引き継ぎ後、夕食の調理・介助 |
| 20:00 | 入浴介助・リラックス | 入浴を介助テレビやゲームを楽しむご利用者様を見守りながら待機 |
| 22:00 | 就寝準備 | 排泄介助、口腔ケア、就寝の準備呼吸器やナースコール(呼び出しボタン)の位置を確認して消灯 |
| 深夜 | 就寝中の見守り・ケア | 見守り定期的な体位変換たんの吸引(随時)水分補給 |
| 7:00 | 起床介助 | カーテンを開けて環境整備洗顔や更衣介助 |
| 9:00 | 退勤 | 日勤のヘルパーに夜間の様子を伝えて業務終了 |
重度訪問介護では、ヘルパー主導ではなく、「何を食べたいか」「どこへ行きたいか」など、ご利用者様の意思決定を尊重して動くことが大切です。
重度訪問介護と訪問介護の違いは?
一般的に「訪問介護」は介護保険法に基づき、主に高齢者を対象とするサービスを指します。一方、重度訪問介護は、重度の障害により常時の支援が必要な人が、地域で自立した生活を送れるように「長時間、見守りを含めて生活を丸ごと支える」障害福祉サービスです。根拠となる法律、対象者、サービス内容、提供時間に大きな違いがあります。
制度と対象者の違い
重度訪問介護と訪問介護のわかりやすい違いは、根拠法と対象者です。
| 項目 | 重度訪問介護 | 訪問介護(介護保険) |
| 根拠法律 | 障害者総合支援法(障害福祉サービス) | 介護保険法(介護保険サービス) |
| 主な対象者 | 重度の肢体不自由、知的障害、精神障害があり、常時の介護を必要とする人 | 要介護認定を受けた高齢者(65歳以上)、または特定疾病のある40〜64歳の人 |
| 認定基準 | 障害支援区分4以上で、かつ特定の条件(二肢以上の麻痺や行動障害など)を満たす人 | 要介護1〜5の認定を受けた人 |
なお、同じ障害福祉サービスのなかに「居宅介護(ホームヘルプ)」がありますが、こちらは障害支援区分1以上から利用でき、比較的軽度の方も対象となります。
サービス内容の違い
訪問介護は「行為」ごとの支援が中心ですが、重度訪問介護は「見守り」を含めた包括的な支援が可能です。以下は、それぞれのサービス内容の違いをまとめた表です。
| 項目 | 重度訪問介護 | 訪問介護 |
| 主なサービス内容 | 身体介護や家事援助、見守りや外出時の移動支援など | 「身体介護」と「生活援助」に明確に分かれている |
| 見守り・滞在 | 生活全般を支えるため、待機や見守りなどの時間もサービスに含まれ、長時間の滞在が可能 | 単なる見守りや、長時間の話し相手などはサービスの対象外となる |
| その他(入院中など) | 入院中の意思疎通支援も条件により認められている | ー |
なお、たんの吸引や経管栄養といった医療行為(研修未受講の場合)や、同居家族がいる場合の生活援助(家族分の食事作りなど)は、重度訪問介護・訪問介護ともに原則としておこなうことはできません。
サービス提供時間の違い
重度訪問介護は、長時間かつ連続しての利用が前提となっており、必要に応じて24時間の支援も可能です。日中の支援だけでなく、夜間の見守りやケアを行う「夜勤」があるのも特徴です。1回の訪問あたりの時間制限がなく、介護職員が交代しながら長時間滞在してケアをおこないます。
一方、訪問介護は30分から1時間程度の短時間利用が基本です。また、訪問介護には一度サービスを提供した後におおむね2時間以上空けなければならない「2時間ルール」がありますが、重度訪問介護には適用されません。そのため、細切れのシフトにならず、まとまった時間を勤務することが可能です。
精神的・体力的な負担の違い
訪問介護は1日に複数の件数を回るため移動が多く、常に時間に追われる傾向があります。特に雨の日の移動は体力的な負担となります。
対して重度訪問介護は、1日に1〜2件程度の訪問となるため移動が少なく、天候の影響を受けにくいのが特徴です。1か所に長く留まり、ご利用者様のペースに合わせてゆったりと関われます。
重度訪問介護をおすすめする3つの理由
ここでは、訪問介護経験者に重度訪問介護をおすすめする主な理由を以下の2つにまとめて解説します。
- 給料が安定しやすい
- 無資格からでも始められる
- 医療やリハビリの知識が深まる
ひとつずつ見ていきましょう。
1.給料が安定しやすい
重度訪問介護の仕事は、1回の勤務時間が長く、移動のロスがないため効率的に稼げます。特に、夜勤に入れば深夜割増や手当がつくため、収入アップが見込めます。また、処遇改善加算や特定事業所加算を算定している事業所では、加算分が給与に還元されやすくなっています。
2.無資格からでも始められる
資格がなくても「重度訪問介護従業者養成研修」を数日受講すれば働けます。訪問介護経験者で「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)」をお持ちの方は、即戦力として活躍できます。さらに「介護福祉士」の資格があれば、資格手当などで給与面でも優遇されるケースが多く、キャリアアップにも最適です。
3.医療やリハビリの知識が深まる
重度訪問介護では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のような難病や、医療的ケアを必要とする方を支援する機会もあります。 そのため、研修を通じて「喀痰吸引」や「経管栄養」などの医療的ケアのスキルを習得できます。また、訪問リハビリの専門職(PT・OTなど)と連携する場面も多いため、介助を通じたリハビリの知識や、拘縮予防のためのポジショニング技術なども自然と身につきます。
自分に合った重度訪問介護事業所を見つけるポイント
重度訪問介護は、ご利用者様と長時間1対1で過ごすため、関係性の構築が大切です。そのため、現場で困ったときにすぐ相談できるサポート体制の整った事業所を選びましょう。緊急時の連絡体制や、現場の悩みを汲み取ってくれる風通しの良さは、長く働くうえで欠かせません。また、医療的ケアが必要なケースも多いため、資格取得支援や実地研修が充実しているかも確認すべきポイントです。
求人票だけでこれらを見極めるのは難しいものです。転職支援サービスである介護転職のミカタを活用すれば、求人票には載っていない「管理者の人柄」や「職場の雰囲気」をプロのアドバイザーに相談できます。入職後のミスマッチを防ぐために、ぜひ相談してみてください。
まとめ
重度訪問介護は、訪問介護経験者にとって「収入の安定」と「身体的負担の軽減」がかなう選択肢のひとつです。長く働くためには、自分に合った事業所を見極めることが重要ですが、求人票だけで判断するのは簡単ではありません。そこでおすすめなのが、転職支援サービスの活用です。
介護転職のミカタでは、専門のキャリアアドバイザーが無料でサポートしますので、まずはお気軽にご登録ください。
この記事を書いたのは・・・

さとひろ/Webライター
保有資格:ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師
介護業界で22年の経験をもつ、特別養護老人ホームの現役ケアマネジャー兼生活相談員。介護職員・ケアマネジャー・生活相談員としての経験をもとにわかりやすい記事を執筆します。
