小規模多機能型居宅介護の仕事内容とは?現役介護職の1日を紹介

小規模多機能型居宅介護は、ご利用者様が住み慣れた自宅や地域で生活を続けられるよう、さまざまな支援を組み合わせた介護サービスです。

具体的にどのようなサービスを提供しているか疑問に思う方もいるでしょう。

本記事では現役の介護職である筆者が、小規模多機能型居宅介護で働きたい方に向けて、具体的な仕事内容や1日の流れ、働くために必要な資格などを紹介します。

小規模多機能型居宅介護に興味がある方や、これから介護業界で働こうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

小規模多機能型居宅介護とは?

小規模多機能型居宅介護は、以下3つのサービスを柔軟に組み合わせて提供する介護サービスです。

  • 訪問介護
  • 通所介護(デイサービス)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)

ご利用者様やご家族のニーズに応じて、サービス内容を調整できる点が大きな特徴で、一人ひとりの身体状況や生活リズムに合わせた支援が可能です。
そのため、自宅での生活を維持しながら家族の負担軽減もしてくれる便利なサービスと言えます。

なお小規模多機能型居宅介護は、厚生労働省のWebサイトで、以下のように紹介されています。

小規模多機能型居宅介護は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合わせ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います。
※出典:「どんなサービスがあるの? – 小規模多機能型居宅介護」|厚生労働省

また、それぞれの利用人数の定員は、以下のとおりです。

サービスの種類利用定員
訪問介護29人以内
通所介護18人以内
ショートステイ9人以内
出典:「小規模多機能型居宅介護」|厚生労働省

3つのサービスを組み合わせた小規模多機能型居宅介護は、介護サービスの中でもユニークな事業内容と言えるでしょう。

小規模多機能型居宅介護の仕事内容

小規模多機能型居宅介護の仕事内容を、以下3つのサービス別に紹介します。

  • 訪問サービス
  • 通所サービス
  • 宿泊サービス

それぞれのサービスには異なる役割があり、ご利用者様の状況に合わせて柔軟に提供可能です。それぞれの詳しい仕事内容を見ていきましょう。

訪問サービス

訪問サービスでは、介護職が利用者の自宅を訪問し、生活支援や身体介護を行います。具体的には、食事の準備や片付け、掃除、洗濯などの生活援助、または入浴、排泄、着替えの介助といった身体介護です。

訪問サービスの大きな特徴は、ご利用者様の生活リズムや希望に合わせて訪問し、必要なケアを提供する点です。自宅で介護しているご家族の負担経験も効果もあり、介護サービスの中でもっとも多く利用されています。

通所サービス

通所サービスでは、ご利用者様が小規模多機能型居宅介護の施設に通い、食事や入浴などのサービスを受けられます。また、体操や脳トレ、手芸やゲームなど、身体を動かす時間を持つことで、他者との交流や認知機能の維持向上を目指すのも特徴のひとつです。

通所サービスでは、自宅から通う方だけでなく、同じ建物内に住んでいるご利用者様が利用するケースもあります。筆者の職場は7階建てで、3階が小規模多機能型居宅介護、4階〜7階はサービス付き高齢者向け住宅です。

そのため、上の階から降りてきて、通所サービスを利用している方が数名います。

宿泊サービス

宿泊サービスは、ご利用者様が施設に宿泊し、夜間から夕方まで介護職からのサポートを受けられるサービスです。基本的には、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの入所型施設の夜勤とやることは変わりません。

サービスはショートステイとなっていますが、ロングショートステイという名目で、実質そこで生活しているご利用者様もいます。

筆者の働く施設でも、4名の方はロングショートステイで、週末に1〜2名の方がショートステイを利用しています。

夜勤の仕事内容に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

小規模多機能型居宅介護の1日の流れ

本章では、実際に小規模多機能型居宅介護で働いている筆者の1日の流れを紹介します。早番、遅番、夜勤それぞれの仕事内容を見てみましょう。

早番の1日の流れ

小規模多機能型居宅介護の早番業務と1日の流れは、以下のとおりです。

時間仕事内容
7:30出勤・朝食の準備
8:00食事介助・服薬介助・口腔ケア
(通いと泊りのご利用者様)
9:00排泄介助(訪問介護のご利用者様のもとへ)
または、通所介護を利用する方への送迎業務
11:00休憩
12:00食事介助・服薬介助・口腔ケア(通所介護のご利用者様)
13:00排泄介助(通所介護のご利用者様)
洗濯・掃除・記録業務
14:00レクリエーション(体操やカラオケなど)
15:00水分介助(通いと泊まりのご利用者様)
16:00排泄介助(通いと泊まりのご利用者様)
記録業務・申し送り
16:30退勤

訪問介護のサービス付き高齢者向け住宅は、小規模多機能型居宅介護事業所の近くにあるため、天気がいい日は歩いて訪問しています。

また、そのサービス付き高齢者向け住宅に、通所介護を利用する方を車で迎えにいくこともあります。

遅番の1日の流れ

小規模多機能型居宅介護の遅番業務と1日の流れは、以下のとおりです。

時間仕事内容
11:00出勤・昼食の準備
12:00食事介助・服薬介助・口腔ケア
(通いと泊りのご利用者様)
13:00休憩
14:00入浴介助(訪問介護のご利用者様のもとへ)
16:00送迎業務(通所介護のご利用者様の自宅へ)
17:00夕食の準備
18:00食事介助・服薬介助・口腔ケア
(通いと泊まりのご利用者様)
18:30排泄介助・就寝介助(通いと泊まりのご利用者様)
19:30記録業務・申し送りなど
20:00退勤

遅番の場合、訪問介護で入浴介助したり、自宅から通うご利用者様の送迎業務をしたり、さまざまな仕事をします。

ずっと同じ建物にいることが少なく、訪問や送迎など、移動する機会も多いため、気分転換しながら仕事ができる点は魅力的だと感じています。

夜勤の流れ

小規模多機能型居宅介護の夜勤業務の流れは、以下のとおりです。

時間仕事内容
16:00出勤・申し送り
16:30翌日の薬の確認とセッティング
17:00夕食の準備
18:00食事介助・服薬介助・口腔ケア
(泊まりのご利用者様、以下同様)
19:00排泄介助・就寝介助
20:00眠前薬の服薬介助
21:00巡視・体位交換・排泄介助など
23:0巡視・体位交換・安否確認など
0:00休憩(1人夜勤のため自分のタイミングで休憩をとる)
1:00巡視・体位交換・安否確認など
3:00巡視・体位交換・安否確認など
5:00巡視・体位交換・安否確認など
6:30起床介助・更衣介助・整容など
7:00朝食の準備
7:30食事介助・服薬介助・口腔ケア
8:30排泄介助・記録介助・申し送りなど
9:00退勤

夜勤は泊まりのご利用者様の人数によって負担は変わります。

小規模多機能型居宅介護の宿泊の定員は9人ですが、筆者の事業所では平均5名ほどの利用です。そのため、夜勤の負担は他の介護サービスに比べると軽いでしょう。

小規模多機能型居宅介護で働くのに必要な資格

小規模多機能型居宅介護は、訪問介護の業務があるため、無資格で働くことはできません。そのため、以下のような資格が必要です。

必要な資格資格の概要
介護職員初任者研修・現場で活躍するために必要な介護の基礎が身に着く
・介護初心者でもわかりやすく学べる
介護福祉士実務者研修・介護の応用技術や医療的ケアなどが身に着く
・介護福祉士国家試験の受験要件になっている
介護福祉士・介護のスペシャリストであることを証明する
・資格取得者は介護リーダーとしての役割も担う

そのほかにも「認知症介護基礎研修」という資格がありますが、この資格のみでは訪問介護は行えません。そのため、小規模多機能型居宅介護で働きたい方は、最低でも「介護職員初任者研修」以上の資格を取得しましょう。

また、介護職としてキャリアアップを目指すなら、国家資格である「介護福祉士」は取得しておいたほうがいいでしょう。

介護の資格については、以下の記事にまとめているので参考にしてください。

なお筆者のように、介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得し、介護職とケアマネを兼務することで、給与アップを目指すことも可能です。

小規模多機能型居宅介護と他サービスとの違い

小規模多機能型居宅介護は、「訪問(ホームヘルプ)」「通い(デイサービス)」「泊まり(ショートステイ)」3つのサービスを一体的に提供する点が、他サービスと大きく異なります。

また、他サービスにはない柔軟性や連続性も大きな魅力です。たとえば、通常の訪問介護やデイサービスでは、サービス提供時間や内容が固定されていますが、小規模多機能型居宅介護はご利用者様の状況や希望に合わせて、時間やサービス内容を柔軟に調整できます。

さらに、複数のサービスを組み合わせているからこそ、サービス間の連携がスムーズで、ご利用者様やご家族の負担軽減にもつながっています。

サービスは変わっても同じ職員が担当するため、ご利用者様も職員も安心して関われるでしょう。

小規模多機能型居宅介護の働きやすいところ

小規模多機能型居宅介護の働きやすいところは、以下の3つです。

  • 少人数のご利用者様の支援に集中できる
  • 夜勤業務の負担が少ない
  • さまざまな介護サービスを経験できる

それぞれの詳しい内容を確認しましょう。

少人数のご利用者様の支援に集中できる

小規模多機能型居宅介護は登録定員が25名以下と少人数制のため、一人ひとりのご利用者様に丁寧な支援が可能です。とくに泊まりサービスは最大9名のため、余裕を持ったケアができるでしょう。

少人数の対応なら、職員間の連携も取りやすく、質の高いチームケアにつながることも期待できます。

ご利用者様の対応に焦ることは少ないため、心身の負担が軽減される点も魅力と言えるでしょう。

夜勤業務の負担が少ない

小規模多機能型居宅介護は、泊まりサービスはあるものの定員が9名のため、落ち着いた環境で仕事できる特徴があります。

特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、大型の入所型施設の夜勤は負担が大きいと感じる方は、夜勤負担の少ない小規模多機能型居宅介護を検討してみてもいいでしょう。

筆者の職場は看護小規模多機能型居宅介護で、訪問看護が併設しており、夜間でも看護師が駆けつけてくれる仕組みのため、不測の事態に対しても安心できる環境です。

さまざまな介護サービスを経験できる

小規模多機能型居宅介護では、「訪問」「通い」「泊まり」3つのサービスを提供するため、さまざまな業務を経験でき経験値の向上やスキルアップが期待できます。

小規模多機能型居宅介護を経験すれば、訪問介護やデイサービス、特別養護老人ホームなど他サービス形態でも、スムーズに仕事を始められるでしょう。

筆者は介護職17年目で初めて小規模多機能型居宅介護を経験し、これまでとは異なるサービス内容に戸惑いながらも、あらためて新鮮な気持ちが芽生えました。

小規模多機能型居宅介護の働きにくいところ

一方で、小規模多機能型居宅介護の働きにくいところは、以下の3つです。

  • サービスの種類が多い
  • 大きい車を運転する場合がある
  • 柔軟な対応が求められる

それぞれ具体的な内容を見ていきましょう。

サービスの種類が多い

小規模多機能型居宅介護は、3つのサービスを提供していることがメリットでもありデメリットでもあります。サービスの種類が多いということは、それだけ職員の業務範囲は広がります。

そのため、小規模多機能型居宅介護で働く介護職には、状況に応じて対応を切り替える柔軟性が求められます。介護未経験の方にとっては、業務が複雑に感じられ、覚えるまでに時間がかかる可能性があるでしょう。

複数のサービスを担う小規模多機能型居宅介護では、計画的なスケジュール管理やスキルの習得が課題と言えます。

大きい車を運転する場合がある

通いのサービス(通所介護)では送迎業務を行うことが多く、事業所によってはワンボックスカーやミニバンなどの大きい車を運転する場合があります。
そのため、運転が苦手な人にとっては、送迎業務が負担に感じるかもしれません。

筆者も普段運転しないハイエースというワンボックスカーを運転することになり、はじめは不安でした。ただ、先輩職員に同行してもらい練習することで少しずつ慣れ、今では負担なく運転できています。

柔軟な対応が求められる

小規模多機能型居宅介護では、ご利用者様の体調や家族の状況など、日々変化するニーズに合わせて臨機応変に対応する力が必要です。たとえば、通いサービスのご利用者様が、家族の都合や天候などの影響で、急に泊まりサービスを利用することもあります。

また、予定外の訪問サービス業務が発生することもあり、毎日同じようなサービスを提供するわけではなく、スケジュールが流動的に変化する点が特徴です。

同じ場所で決まった業務を淡々としたい方には、小規模多機能型居宅介護は向いていないかもしれません。

小規模多機能型居宅介護で働くのに向いている人

小規模多機能型居宅介護は、多様な業務と柔軟な対応が求められる職場です。そのため、以下のような特徴を持つ人が、働くのに向いているでしょう。

  • 幅広い介護スキルを身につけたい
  • 地域密着の仕事に興味がある
  • こまかいことによく気づく
  • コミュニケーションが好き
  • 臨機応変に対応できる

訪問や通い、泊まりのサービスを組み合わせた小規模多機能型居宅介護では、ご利用者様のニーズに合わせた柔軟な対応が求められます。

とくに、ご利用者様一人ひとりに合わせたケアをしたい方や幅広い介護スキルを習得したい方、地域に密着した支援に興味がある方に向いている仕事です。

ご利用者様だけでなく、ご家族とのこまめなコミュニケーションや信頼関係の構築も重要なため、コミュニケーションが得意な方は長所を発揮できるでしょう。

小規模多機能型居宅介護の平均給与

厚生労働省の調査によると、小規模多機能型居宅介護の平均給与は、287,970円です。

ちなみに、保有資格別の平均給与は以下のとおりです。

保有資格平均給与(月給)
資格無し251,650円
介護職員初任者研修270,790円
介護福祉士実務者研修281,890円
介護福祉士303,270円
社会福祉士333,600円
介護支援専門員361,010円
出典:「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」|厚生労働省

上記は平均給与であり、職場によって給与形態は異なるため、あくまで参考程度にしてください。

なお、現在小規模多機能型居宅介護で働いている筆者の資格や給与、各種手当は以下のとおりです。

保有資格各種手当平均給与(月給)
・介護福祉士
・社会福祉士
・介護支援専門員
・早番手当
・遅番手当
・夜勤手当
・日曜祝日手当
・送迎業務手当
・入浴介助手当
・約36万円
 (夜勤なし)
・約40万円
 (夜勤あり)

筆者の職場ではさまざまな手当があり、夜勤なしでも給与は35万を超えます。1回8,000円の夜勤を複数回行えば、40万を超える月もあります。

ただし、経験や保有資格などが基本給に反映されているため、すべての小規模多機能型居宅介護で同じような給与をもらえるわけではありません。

筆者の場合、介護職とケアマネを兼務していることや、介護職歴17年の経験が評価され、基本給は通常の介護職よりも高水準となっています。

働きやすい小規模多機能型居宅介護を見つける際のポイント

働きやすい小規模多機能型居宅介護を見つけるためには、面接や職場見学の際、以下のポイントを確認しておきましょう。

  • 職場の雰囲気やスタッフの連携が活発である
  • 給与条件や福利厚生が充実している
  • 柔軟なシフトに対応してもらえる
  • ご利用者様が落ち着いている
  • 研修制度が整っている

ご利用者様や職員の様子は、実際に目の前で見ないとわかりません。そのため、可能であれば面接の際に職場見学も一緒にさせてもらいましょう。

また、求人に掲載されている給与や勤務など条件面に相違はないかも、あらためて確認することが大切です。

ただ、実際に働くと人手不足で十分な研修が受けられなかったり、思った以上に慣れるまで時間がかかったりします。
筆者も事前に予想していた働き方と異なる部分があり戸惑いましたが、条件面は納得しており魅力を感じていたため、主体性を持って働くことができました。

小規模多機能型居宅介護以外の介護施設について知りたい方は、以下の記事を合わせてご覧ください。

まとめ

小規模多機能型居宅介護は、訪問や通い、泊まりなど多様なサービスを提供しており、ご利用者様一人ひとりに合わせた柔軟な支援が魅力的な介護サービスです。そのため、そこで働く介護職にも、ご利用者様に合わせたケアと柔軟な対応が求められます。

自分に合った職場を探す際は、転職支援サービスの活用が有効です。「介護転職のミカタ」では、専門のコンサルタントが施設探しから入職までのサポートをしてくれるため、安心して転職活動を進められます。サービス利用は完全無料なので、まずはお気軽にご相談ください。

多くのサービスを提供しているため負担を感じる面もありますが、経験値を向上させさまざまなスキルを身につけたい方は、小規模多機能型居宅介護で働くのがおすすめです。

ぜひ本記事を参考に、自分に合う職場探しにお役立てください。

この記事を書いたのは・・・

津島 武志/Webライター

保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/社会福祉士
業界17年目の現役介護職兼ケアマネージャー。
さまざまな介護系メディアでWebライターとしても活動し、多くの検索上位記事を執筆。
介護職以外に転職メディア「介護士の転職コンパス」や自身のライフスタイルや介護系コンテンツを発信するYouTubeチャンネル「かいご職TV」等を運営。