介護施設で企画するおやつレク|季節行事別アイデアも紹介

介護施設でのおやつレクの役割とは

おやつレクリエーションとは、食べたいおやつをご利用者様に調理していただき、出来たおやつをみんなで味わいながら楽しく食べる余暇活動です。

おやつレクリエーションが持つ役割とは、ほとんどの時間を施設内で過ごし外出する機会が少ないご利用者様の生活の質を向上させることです。
頻繁に外出して気分転換を図ることが簡単にできないからこそ、施設内であってもご利用者様に有意義な時間を提供するために、おやつレクリエーションは最適な余暇活動です。

さらに、おやつレクリエーションは調理をおこなうため、手順を確認し実施するための認知機能や、調理用具を使用するための手先の動きが必要です。
ご利用者様の認知機能や身体機能へのアプローチも可能となるおやつレクリエーションは、介護施設での取組みにぴったりです。

介護施設でおやつレクを開催する5つの目的

介護施設でおやつレクを開催する大きな目的や具体的な意味を解説します。

  • ご入居者様同士の交流のため
  • 生活の中の楽しみのため
  • 食欲を刺激して栄養補給するため
  • 手先や認知力のトレーニングのため
  • 時間感覚を維持するため

1つずつみていきます。

ご入居者様同士の交流のため

おやつレクは、参加すると顔見知りの人ができ、仲良くできる友人をつくることができるため、ご入居者様同士のコミュニケーションの場にぴったりです。
また、5〜6人のグループで実施されることが多いため、参加者されているご利用者様同士の距離が近くなり和気あいあいと楽しい時間を過ごせます。

このような理由から、おやつレクはご利用者様に良い刺激を提供でき、生活の質の向上が図れます。

生活の中の楽しみのため

介護施設では食事の一環とされているおやつは、ご利用者様の生活の楽しみになっています。

おやつは、朝昼夕の食事には提供されることが少ない、甘い物も多く提供されます。
ご利用者様の中には甘いものが好きな方も多く、「コーヒーと一緒に食べたい」「熱い緑茶と一緒に食べたい」などと楽しみにされています。

おやつレクでは、さまざまなおやつメニューの中からご利用者様同士で作りたいおやつを選ぶことも多いです。
職員から提供されるおやつメニューを手順通りに作るだけではなく、ご利用者様同士で何を作るかを相談して決めるため、できあがりがより楽しみになるでしょう。

食欲を刺激して栄養補給するため

ご利用者様の中には、朝昼夕3食の食事摂取量が低下していても、好みのおやつが提供されればおいしそうに食べられる方もいます。
そういった方には、おやつを通して栄養補給を促すことから始め、食欲を向上させることが有効です。

おやつレクは、そういったご利用者様の食事摂取量の向上にむけた取組みにもおすすめです。

手先や認知力のトレーニングのため

おやつレクは、食べるだけではなく調理することに大きな意味を持ちます。
調理は、お箸を持って混ぜたり、両手で生地をこねたりなど、手先を動かす作業もあります。

手先を動かす作業を積極的に促すことで、ご利用者様の手先のリハビリテーションにもなります。
また、手先を動かすことによって認知力向上のためのトレーニングにもなります。

車椅子で日常生活を送られているご利用者様でも、介護職員の軽介助で調理することが可能な場合もあります。

できるだけ多くのご利用者様が参加できるようなおやつレクの内容を考えてみるといいでしょう。

時間感覚を維持するため

ご利用者様に定時に提供されるおやつは時間の把握に役立ち、感覚も維持できるため認知機能の低下が予防できます。

1年のほとんどの時間を施設で生活されているご利用者様は、外部からの刺激がないことで認知力が低下し、時間の感覚がわからなくなってしまう事があります。

おやつレクは15時のおやつの時間までに実施されるため、参加されるご利用者様は15時を意識します。15時を意識することで、時間の感覚が保たれるメリットがあります。

おやつレクはご利用者様に時間感覚の機能を維持してもらうため、刺激のある施設生活の1つとして役立ちます。

おやつレクで注意する4つのポイント

おやつレクは楽しく実施することが大切ですが、実施中に事故が起こらないよう注意するポイントもあります。

  • 食事形態の確認
  • アレルギーなどの禁止食材の確認
  • 調理器具などの危険物の扱い
  • 事前に出来上がりを確認しておく

1つずつみていきます。

食事形態の確認

おやつレクは厨房から提供される食事とは違い、介護職員などが自分達で食材を準備し、見守りながら調理を進めていくため、参加されているご利用者様の食事形態を事前に確認しておく必要があります。
おやつレクのメニューが参加されているご利用者様に提供してもいい形態かを職員間で共有し、提供前に入れ違いなどがないか確認しましょう。

筆者が勤務していた施設では、提供している食事形態ごとにご利用者様をグループ分けし、配膳や提供ミスがないようにしていました。
例えば、一般食を提供しているご利用者様と、刻み食を提供しているご利用者様を一緒のグループにして実施してしまうと、提供ミスのリスクが発生します。
ですが、食事形態が同じご利用者様同士のグループで実施すれば、グループ内での提供ミスといったリスクは回避できます。

このように、誤った食事形態のおやつを提供しないよう安全策をとる事が重要です。

アレルギーなどの禁止食材の確認

こちらでも説明したように、おやつレクの場合食材の準備や調理をおこなうのは主に介護職員のため、参加されるご利用者様にアレルギーや禁止食材があるかを事前に職員間で共有する必要があります。

高齢のご利用者様の場合は服薬されている方も多くいらっしゃるため、飲み合わせによっては相互作用が発生してしまう食材もあります。
実施する担当職員は、参加するご利用者様にアレルギーや禁止食材などがないか、事前準備段階で確認しておきましょう。

調理器具などの危険物の扱い

おやつレクはさまざまな調理器具を使用するため、ご利用者様が安全に使用できるか必ず見守りましょう。
おやつのメニューによっては果物の皮をむいたり、カットしたりと、包丁などの危険物を使用することもあります。

ですが、危ないからといって担当職員ですべての準備を終わらせてしまうのは、ご利用者様の楽しみを奪ってしまう可能性もあります。
担当職員は安全に使用できる方法を探し、できるだけご利用者様の手で調理していただけるよう支援しましょう。

事前に出来上がりを確認しておく

おやつレクは、実施前担当職員で試作し、できあがりを確認してから開催することをおすすめします。
出来上がったおやつが、参加されたご利用者様が食べられる状態なのかを提供前に確認する必要があるからです。

本番当日に作ってみたら、刻み食を提供しているご利用者様には固くて提供できない…などとなると、楽しみにしていたおやつが食べられなくなります。
ご利用者様をガッカリさせないために、予行練習もかねて試作をしてみてください。

おやつレクのおすすめアイディア

介護施設のおやつレクリエーションにおすすめのメニューを、カテゴリー別にご紹介します。

  • 季節の行事に合わせたおやつ
  • 飲み込みやすいおやつ
  • 食材アレンジで簡単に作れるおやつ
  • 定番人気おやつ

1つずつみていきます。

季節行事に合わせたおやつ

施設生活を送られるご利用者様が、楽しみにされている季節の行事に合わせた、おやつレクリエーションを開催するのもいいでしょう。

季節行事おすすめ食材おやつアイディア
1月お正月おもちおはぎ
2月バレンタインデーチョコレートチョコレートムース
チョコレートケーキ
3月ひなまつり桃の缶詰ひし餅をモチーフにしたゼリー
4月いちごいちご大福
5月こどもの日ちまき、柏もち
スポンジケーキ、カステラ
ちまき
柏もち
こいのぼりをモチーフにしたカステラ
6月ブルーベリー
オレンジ
レアチーズケーキ
ムース
7月メロン
スイカ
ゼリー
ムース
フルーツポンチ
8月かき氷
アイスクリーム
くだものを使ったパフェ
9月お月見豆腐白玉月見だんごを模したぜんざい
10月ハロウィンかぼちゃマフィン
11月さつまいもスイートポテト
12月クリスマススポンジケーキクリスマスケーキ

上記の表にあるおやつを参考に、ご利用者様それぞれの食事形態にアレンジしながら、提供してみてください。
季節の行事の他にも、開設記念行事など施設独自のイベント時にもおやつレクを開催することで、ご利用者様により楽しんで頂けます。

飲み込みやすいおやつ

介護施設には、一般の食事形態では誤嚥に繋がるリスクがあるご利用者様もいらっしゃいます。

おやつレクリエーションでは、そういったリスクがあるご利用者様にも楽しんで参加頂けるよう、飲み込みやすいおやつメニューも考えていくことが大切です。

  • ゼリー
  • ムース
  • アイスクリーム
  • パンナコッタ
  • シャーベット
  • ジェラート
  • プリン
  • ババロア

上記は、咀嚼機能や嚥下機能が低下しているご利用者様も、安全に食べることができます。

飲み込みやすいおやつもたくさんのバリエーションがあるため、さまざまな食材を試してみるといいでしょう。

食材アレンジでかんたんに作れるおやつ

食材を簡単にアレンジしておいしく作れるおやつは、準備する負担が少なく実施しやすいです。

食材アレンジメニュー
食パンフレンチトースト、パンプディング
フルーツ缶フルーツポンチ、フルーツ寒天
バウムクーヘンケーキ、フレンチトースト
ホイップクリーム・あんこどらやき、あんこ巻き
ようかんあんみつ、ぜんざい
ジュースクリームソーダ、ゼリー

既製品を使用しても、アイデア次第ではとてもおいしいおやつになりますので、ぜひ使用してみてください。

定番人気おやつ

高齢のご利用者様が大好きな定番おやつも人気があるため、定期的におやつレクで実施するのをおすすめします。

  • ぜんざい
  • コーヒーゼリー
  • どら焼き
  • さつまいもきんとん

高齢者に人気のあるおやつの1つは、和菓子です。
和菓子のメニューの中で特に人気があるおやつは、あんこを使用したものです。
あんこを使ったおやつはご利用者様に好まれるため、さまざまなアレンジ方法を試してみてもいいでしょう。

おやつレクはご利用者様の楽しみのひとつ!

介護施設でのおやつレクは、ご利用者様が楽しみにしている行事の1つのため定期的に開催することをおすすめします。

ご利用者様はおやつをただ食べるだけではなく、自分で調理することで、できたおやつをさらにおいしく食べる事ができます。
変化がなくメリハリのつきにくい施設生活において、普段とは違う取組みで楽しみを提供できればご利用者様の生活の質の向上が図れます。

おやつレクは、介護施設で生活されているすべてのご利用者様が参加でき、楽しめる内容が企画できるよう考慮してみるといいでしょう。

この記事を書いたのは・・・

小玉 有紀/Webライター

保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/介護事務士
福祉系専門学校を卒業したのち、老健で介護福祉士として6年勤務。生活相談員を経験したのち、ケアマネージャーとして5年経験。現在は育児のかたわらライターとして活動中。