介護職員同士のコミュニケーションについて、以下の疑問を持っていませんか?
- 介護業界って人間関係が悪いの?
- 介護職員同士のコミュニケーションのコツは?
- コミュニケーション(人間関係)がうまくいかないときの対処法は?
介護職員同士の関わりで活かせるコミュニケーションスキルや、コミュニケーションを学ぶ方法などを知りたい方もいるでしょう。
本記事では、介護職員同士のコミュニケーション事情やコミュニケーションを円滑にするコツなど、介護職員同士のコミュニケーションに不安を持っている方に役立つ内容を解説します。
この記事の内容
介護職員同士のコミュニケーションの実態とは?
介護職員同士のコミュニケーションの実態について、現役介護職員の筆者の経験をもとに紹介します。
介護現場では、ご利用者様の情報を共有しながら仕事を進めなければいけません。そのため、職員同士のコミュニケーションが重要です。
たとえば、夜勤で出勤した職員は、日勤の職員から昼間の様子を聞くことで状況を把握できます。一方、日勤で出勤した職員は、夜勤の職員から夜間の様子を聞いた上で仕事を開始します。
また、情報共有を円滑にするためには、職員同士の日頃の挨拶や何気ない会話による信頼関係の構築も大切です。
仕事と関係ない世間話やちょっとした愚痴なども、職員同士の距離が縮まることを考えると必要かもしれません。
コミュニケーションが乏しい職場は、ご利用者様の情報共有がスムーズにできないだけでなく、情報の伝達不足により介護サービスの質が下がる恐れもあるでしょう。
介護職員同士のコミュニケーションを円滑にするコツ
介護職員同士のコミュニケーションを円滑にするコツは、以下の3つです。
- 相手の意見を否定しない
- 相手の話をじっくりと聞く
- 非言語コミュニケーションを意識する
それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。
相手の意見を否定しない
介護業界をはじめ、組織というのはさまざまな価値観を持った人が働いています。当然、相手の意見に共感できないこともあるでしょう。
しかし、自分と意見が違うからといって、相手の意見を否定するのは良いコミュニケーションとは言えません。
自分の考えと異なるさまざまな価値観がある中でも、相手の意見を尊重することで、コミュニケーションは円滑に進むでしょう。
相手の話をじっくりと聞く
相手の話をじっくりと聞くことも、円滑なコミュニケーションにおいて非常に重要です。人間は、自分の話をじっくりと聞いてくれる相手に好感を抱きます。
コミュニケーションは一方通行ではなく、言葉や意志のキャッチボールです。いつも自分の話ばかりして相手の話を聞こうとしないと、円滑なコミュニケーションはできません。
介護職員同士の信頼関係を築くためにも、相手の話にじっくり耳を傾ける、傾聴スキルが求められるでしょう。
非言語コミュニケーションを意識する
ただ挨拶や会話をするだけでなく、非言語コミュニケーションも意識することでコミュニケーションは円滑になります。
非言語コミュニケーションにはさまざまなものがあります。それぞれの気をつけるべきポイントは以下のとおりです。
非言語コミュニケーションの種類 | 気を付けるべきポイント |
表情や姿勢などの動作 | ・笑顔で姿勢よく挨拶する ・相手の目を見てうなずきながら話を聞く |
身だしなみや服装などの見た目 | ・清潔感のある身だしなみを心がける ・においケアに気を遣う |
握手や抱擁などのスキンシップ | ・いきなりなれなれしくしない ・身体に触れる際は相手に許可を求める |
清潔感のある身だしなみを意識して笑顔で話すだけでも、相手に与える印象はよくなります。
介護職員同士のコミュニケーションを円滑にするためにも、上記のような非言語コミュニケーションにも気を遣いましょう。
コミュニケーション(人間関係)がうまくいかないときの対処法
介護労働安定センターの「令和5年度介護労働実態調査」によると、介護職員の退職理由の第1位が「人間関係に問題があったため」です。適切なコミュニケーションによる良好な人間関係の維持は、介護現場の大きな課題と言えます。
コミュニケーション(人間関係)がうまくいかないときは、以下3つの対処法が効果的です。
- 第三者に協力してもらう
- 苦手な職員とは距離を置く
- 思い切って職場を変える
それぞれ具体的な内容を確認しましょう。
なお以下の記事では、介護職員同士の人間関係の改善ポイントを紹介しているのでご覧ください。
第三者に協力してもらう
マンツーマンのコミュニケーションが苦手でも、複数人であればスムーズに話せる方もいるでしょう。そういった方は、同僚や上司などの力を借りて、複数人でのコミュニケーションを図るのがおすすめです。
たとえば、介護職を始めたばかりの頃は先輩職員が同行してくれるため、先輩職員をきっかけにさまざまな職員とコミュニケーションが取れます。
はじめのうちに自分のことを知ってもらうことで、その後のコミュニケーションも円滑に進みやすくなるでしょう。
苦手な職員とは距離を置く
自分がコミュニケーションを円滑にしようと意識しても、どうしても合わない職員は存在します。「この人なんか苦手だな」と思う職員は、無理に仲良くせず、ある程度距離を置きましょう。
ただし、苦手だからといってまったく話さないと仕事に支障が出るため、最低限の挨拶や業務にかかわる情報共有はしなければいけません。
苦手な職員とは距離を置くことで、人間関係のトラブルを未然に防げるでしょう。
思い切って職場を変える
職場環境の関係で、苦手な職員がいても距離を置けず、トラブルに発展する可能性はあります。
どうしても人間関係が改善されず、コミュニケーションもうまくいかないのであれば、職場を変えるのがおすすめです。
まずは、社内で異動が可能かを上司に相談しましょう。
異動が難しい場合は、思い切って転職したほうがいいかもしれません。
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介護職員が活かせるコミュニケーションスキル
以下3つのコミュニケーションスキルは、介護の現場でも活かせるでしょう。
- オープンクエスチョン
- ミラーリング
- マッチング
各スキルの詳細と、どのような場面で活かせるか見ていきましょう。
オープンクエスチョン
オープンクエスチョンとは、簡単にいうと「制約を設けず自由に回答できる質問」のことです。たとえば、「〇〇についてどのように思いますか」や「休みの日は何をしていますか?」などの質問です。
オープンクエスチョンを活用すれば、相手のさまざまな一面を知るきっかけになり、コミュニケーションの活性化につながります。
一方、「〇〇は好きですか?」や「AとBどちらがいいですか?」といった、イエスやノーなど回答に選択肢がある質問のことをクローズドクエスチョンと言います。
はじめのうちはクローズドクエスチョンで相手のことを徐々に知り、少しずつオープンクエスチョンにしていくことで、コミュニケーションが円滑に進むでしょう。
ミラーリング
ミラーリングとは、相手の行動やしぐさを真似して、相手が自分に対し親近感を感じるように働きかけるコミュニケーション術のことです。
介護職員が活かせる具体的なミラーリングには、以下のようなことがあります。
- 相手が笑ったら自分も笑う
- 相手が頷くタイミングで自分も頷く
- 相手が身を乗り出したら自分も身を乗り出す
ミラーリングを実践できるということは、相手に興味を持ちしっかりと観察できている証拠です。
すべての行動やしぐさを真似するのはふざけているように見えるため、適度に相手の雰囲気にあわせてコミュニケーションを図ってみましょう。
マッチング
マッチングとは、相手の口調や話すテンポなど、目に見えない部分を真似して相手に合わせるコミュニケーション術のことです。
会話する際は、なんとなく話すのではなく、話す口調やテンポ以外に、ボリュームやリズムなども合わせることで、相手に好印象を与えられます。
ミラーリングと同様、相手の雰囲気を感じ取りながら、相手に合わせたコミュニケーションを心がけましょう。
介護職員がコミュニケーションを学ぶ方法
介護職員がコミュニケーションを学ぶ方法は、以下の3つです。
- 介護系資格を取得する
- 外部セミナーに参加する
- さまざまな人と関わる機会を持つ
それぞれの具体的な学び方について確認しましょう。
介護系資格を取得する
介護系の資格を取得することで、コミュニケーションの基本的な知識やスキルを学べます。
たとえば、介護職員初任者研修では「介護におけるコミュニケーション技術」というカリキュラムがあります。研修内容はご利用者様に対するコミュニケーション技術ですが、介護職員同士でも応用可能です。
筆者は介護職員初任者研修の講師をしておりますが、コミュニケーション技術を伝える際は、生徒同士でグループワークをし、具体的なコミュニケーション技術を体験してもらっています。
外部セミナーに参加する
外部のコミュニケーションに関するセミナーに参加するのも、効果的な学習方法です。介護とは関係ない業界でも、人とかかわる仕事であれば介護の現場に活かせます。
筆者は実際に、以下のようなコミュニケーションに関する外部セミナーに参加しました。
- 一流ホテルマンのおもてなしの極意
- クレーム対応で相手の気分が良くなる話し方
- 元アナウンサーによる伝わる話し方のコツ
さまざまなセミナーに参加して、コミュニケーションに関する視野が広がりました。
セミナーに参加しただけではコミュニケーションスキルは高くなりませんが、自分の足りない部分に気づくきっかけになります。
さまざまな人と関わる機会を持つ
職場の人だけでなく、さまざまな人とかかわる機会を持つことで、コミュニケーションスキルは向上します。
たとえば、家族や友人と他愛もない話題を話すことで、自分の思いを素直に言語化する力が養われます。
異業種交流会のような場所に足を運び、介護業界以外の話を聞くことができれば、コミュニケーションスキルだけでなく、さまざまな価値観も学べるでしょう。
介護職員のコミュニケーションに関するよくある質問
介護職員のコミュニケーションに関するよくある質問は、以下の3つです。
- コミュニケーションが苦手な人は介護職員に向いていない?
- 介護職員にとって最も重要なコミュニケーションスキルは?
- 介護職員同士のコミュニケーションがうまくいかない要因は?
それぞれの質問にわかりやすく回答しているので、ぜひ参考にしてください。
コミュニケーションが苦手な人は介護職に向いていない?
コミュニケーションが得意なほうが介護職に向いているのは確かです。ただ、コミュニケーションが苦手だからといって、介護職に向いていないわけではありません。
なぜなら、コミュニケーション以外にも、介護職には以下のような業務を淡々と行う場面があるからです。
- 食事の準備や物品補充
- 意思疎通ができないご利用者様の介助
- 掃除や洗濯などの単純作業
意思疎通ができないご利用者様の介助では、言葉のキャッチボールが行われるわけではなく介護職員が一方的に声をかけるため、コミュニケーションが苦手でも問題ありません。
また、夜勤専従という働き方であれば、ご利用者様や職員同士でのコミュニケーションの機会も少ないでしょう。
介護職員にとって最も重要なコミュニケーションスキルは?
介護職員にとって最も重要なコミュニケーションスキルは、話すことではなく、相手の話をじっくり聴くことです。ただ聴くのではなく、相手の話に耳を傾ける傾聴力が大切です。
傾聴はカウンセリングの場面でも活用されており、相手の話を肯定し、相手の立場に立って理解しようとする態度が求められます。
話を聴くことは、介護職員同士の人間関係を良好に保つ上でも重要ですし、ご利用者様の悩みを傾聴すれば、介護職員が心の拠り所になれるでしょう。
介護職員同士のコミュニケーションがうまくいかない要因は?
介護職員同士のコミュニケーションがうまくいかないのは、以下のような要因が考えられます。
- 相手の話を真剣に聞いていない
- 自分の意見を押し付けている
- 相手の意見を否定している
- 笑顔で挨拶していない
- 報連相ができていない
介護の現場は、日々状態が変化するご利用者様の情報をこまめに共有しなければいけません。そのため、介護職員同士での報連相(報告・連絡・相談)が適切に行われないと、仕事にも支障が生じます。
また、介護職はストレスの溜まりやすい仕事のため、自分に余裕がなくなり、他人に対してキツい態度を取ってしまう可能性もあるでしょう。
まとめ
介護職員同士のコミュニケーションを円滑にするためには、まず相手の考えを否定せず、じっくりと話を聞くことが大切です。
また、自分の見た目や声のトーン、話を聞く態度などを客観的に分析し、相手に不快感を与えないコミュニケーションを意識しましょう。
介護現場では、ご利用者様の生活を支えるために、こまめな情報共有が求められます。そのため、介護職員同士で少しずつコミュニケーションを取りながら信頼関係を構築し、コミュニケーションを円滑に進めることが大切です。
ぜひ、本記事で紹介したコミュニケーションスキルを実践で活かしていただき、介護職員同士の円滑なコミュニケーションに活かしましょう。
この記事を書いたのは・・・
津島 武志/Webライター
保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/社会福祉士
業界17年目の現役介護職兼ケアマネージャー。
さまざまな介護系メディアでWebライターとしても活動し、多くの検索上位記事を執筆。
介護職以外に転職メディア「介護士の転職コンパス」や自身のライフスタイルを発信するYouTubeチャンネル「TAKEBLOG」等を運営。