介護士が直面するセクハラ問題|経験談と具体的な対処法

「介護士として働きたいけどセクハラ被害に遭ったら嫌だ」「実際に介護現場でセクハラに遭っていてどうしたら良いかわからない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
セクハラは人権侵害であり、許されざるべき行為ですので、悩んでいるのであればすぐに解決していきたいところです。

そこで、本記事では、元介護士の筆者の経験を元に介護士がセクハラに遭いやすい理由や対処法などを紹介していきます。
記事を読んで、セクハラ被害を予防し、安心して働けるようにしていきましょう。

介護士がセクハラに遭うことはある?

「介護士がセクハラに遭うことはありますか」と聞かれることがあります。

結論から申し上げますと、介護士でセクハラに遭った経験のある人はいます。
介護現場のセクハラ被害は、近年多くの事業所で嘆かれる問題であり、切っても切れない課題であるというのが現状です。
実際に筆者もご利用者様から体を触られたり卑猥なことを言われたという経験がありました。

一方でセクハラへの対策を事前にしており、被害に遭わなかった介護士もいます。

介護現場のセクハラ被害に遭わないため、また遭ったとしてもそれ以上悪化させないためには、予防や対処法が大切なのです。

介護士のセクハラ経験談

筆者の話になりますが、実際にセクハラに遭ったことがあります。

夜間、ご利用者様の居室を訪問した際に、腕を強い力で摑まれ、体を触られながら卑猥な言葉を言われたという経験がありました。
そのときは怖くなり、とっさに腕を振り払ってその場を去りました。
後日、上司に相談すると異動を提案してくれましたが、慣れているフロアで働きたい気持ちや他の職員にも迷惑をかけると思ったため、それを断りました。
再びそのご利用者様の介助をすることになったのですが、1対1の密室は危険だと判断し、他の職員に同席してもらう形で介助にあたりました。
また、夜勤中は他のフロアの職員に介助を変わってもらうようにしたのです。
その後、筆者のみで介助に入ることもありましたが、優しい声掛けを心がけながらも隙を見せないような態度を心がけました。
すると最初は卑猥な言葉で声をかけていたご利用者様も次第に、セクハラのような発言をしなくなりました。

筆者の場合は、たまたまご利用者様が筆者が一定の距離感を保つようになったことに気づいてくれて収まりましたが、それだけでは解決しないケースも多くあります。
そういった場合は、ご自身を責めるのではなく、上司や同僚に相談して、協力してもらうようにしましょう。
一人で抱え込まないことが大切です。

介護士がセクハラに遭いやすい理由3つ

介護士はセクハラに遭いやすいと言われることもあります。
それにはいくつかの理由が存在します。
そこで、介護士がセクハラに遭いやすい理由を3つにまとめてみました。

  • 密室の機会が多い
  • 密着する機会が多い
  • 病気によるものかの線引きが難しく否定しづらい

以下で1つずつ解説していきます。

密室の機会が多い

ご利用者様に介護ケアをする際、密室になる機会が多いため、セクハラに発展してしまう可能性があります。
密室で1対1になると、ご利用者様によっては気が大きくなり、セクハラをしようとする気持ちが芽生えてしまうこともあるからです。

例えば、部屋を訪問した際やトイレ介助で密室になったときなどです。
密室になることでセクハラ被害に遭いそうになったら他の職員に応援を呼ぶなどして対策しましょう。

密着する機会が多い

介護士はご利用者様と密着する機会が多いのもセクハラに遭いやすい原因の一つです。
密着することでパーソナルスペースがより近距離になり、隙をつかれやすくなるからです。

例えば、入浴介助中や移乗介助中などは近距離になりやすく、セクハラが発生してしまう可能性があります。
密着することでセクハラに遭いそうになったら、早めに他の職員に相談するようにしましょう。

病気によるものかの線引きが難しく否定しづらい

ご利用者様の行動の理由がわかりづらいのも、セクハラに遭いやすい原因の一つです。
介護現場にいるご利用者様は、認知症や精神的な疾患を患っている方も多く、セクハラに感じる行動が「故意」のものか「疾患」によるものかの区別がつきにくいです。
そのため、嫌な気持ちになっても「疾患によるものかもしれないから私さえ我慢すればいい」と誰かに救いを求められず、結果、追い詰められてしまう可能性もあります。

そういった状況を防ぐためには、まずご利用者様の疾患や性格の理解を深め、それでも違和感を持ったら他の職員に相談するようにしましょう。

疾患の症状による行動だったとしても、あなたが我慢しなければならないということはありません。
職員同士で連携して問題を解決していけたら理想的です。

介護士がセクハラに遭ったときの対処法3つ

セクハラに遭ったとき、どうしたら良いかわからないと不安になる方もいるでしょう。
そこで、ここからは介護士がセクハラに遭ったときの対処法を3つ紹介していきます。

  • 上司に相談する
  • 密室にならないように他の職員に付き添ってもらう
  • 危険性が高い場合はすぐに他の職員を呼ぶ

1つずつ見ていきましょう。

上司に相談する

介護現場でセクハラに遭ったらまずは上司に相談しましょう。
一人で抱え込んだり、同僚に愚痴を言ったりするだけでは、事態は解決せず余計に悪化してしまう可能性があるからです。
上司に相談するときには、状況や協力してほしいことなどをご自身の中で整理しておくとスムーズです。

例えば、
「〇〇様から〇〇のようなことをされるのに困っています。できれば落ち着くまで一人介助は避け、二人介助で対応できるようにシフトを調整していただけないでしょうか。」
などと伝えると良いでしょう。

上司もあなたが何に困っていてどのようなサポートを求めているかがわかると、対策をしやすいからです。
状況やお願いしたいことはできるだけ具体的に伝えるようにしましょう。

密室にならないように他の職員に付き添ってもらう

密室にならないように他の職員に付き添ってもらうのも対処法としては適切です。
セクハラ被害に一度遭うと、密室で1対1になるのが嫌になることもあるでしょう。
セクハラは多くの場合、密室で起こりますのでそれを防ぐために二人きりにならない工夫も大切です。

例えば、就寝介助は二人で行うなどです。
他の職員に協力してもらいたい旨を事前に伝えておくと安心でしょう。

危険性が高い場合はすぐに他の職員を呼ぶ

密室でセクハラ被害の予感がしたら、すぐに他の職員に応援を頼みましょう。
ご利用者様であってもセクハラはあってはならない行為です。
被害に遭ってしまえば、精神的なダメージを負いますので、悪化を防ぐためにもその場で応援を呼ぶことをおすすめします。
すぐに他の職員に応援を呼べない場合は速やかにその場から離れるようにしましょう。

セクハラに遭わないための対策

セクハラ被害に遭うと心に傷を負ってしまいます。
そうならないためにも、セクハラを防止できる対策を理解しておきたいところです。

そこで、ここからはセクハラに遭わないための対策を紹介していきます。

セクハラめいたことを言われたら毅然とした態度で接する

セクハラめいたことを言われたら毅然とした態度で接するということが大切です。

セクハラをする人は相手のリアクションを面白がる傾向にあります。リアクションせず毅然とした態度を貫くことで、相手に「セクハラをしても面白くない」と認識させるのです。

しかし、何もリアクションをしないままセクハラ行動がエスカレートしてしまうパターンもあります。
ご自身で接し方を工夫してみても上手くいかない場合は無理せず、上司にすぐに相談しましょう。

対策とは言っても状況や相手により効果が発揮できない場合もあるため、「自分の曖昧な態度が悪かっただけ」などとご自身を責めるのはやめましょう。
大切なのはご自身で溜め込まないことです。

一定の距離感を大切にする

一定の距離感を保つこともセクハラ防止に大切です。

ご利用者様と仲良くなりすぎて、親密になり、そこにつけ込んでセクハラをされる可能性もあるからです。
一度距離感が近づきすぎると、そこから調整するのは難しくなります。
理想的なのは最初から適度な距離感を保つことです。

ご利用者様が親密な距離感を好む場合、一定の距離を保つのは難しく感じるかもしれません。
特に優しいタイプの介護職員はつけ込まれやすくなるため、注意が必要です。

この距離感も難しく感じる場合は上司や同僚に相談し、近づきすぎていると感じたら間に入ってもらうのも一つの手です。

服装に乱れがないか注意する

セクハラ防止にはご自身の身だしなみチェックも大切です。

服装が乱れていて隙をみせると、そこにつけ込まれる可能性があるからです。

特に介助時は、かがんだり、しゃがんだりすることが多いため、その際に肌が露出しないかチェックしておくと良いでしょう。
かがんだときの胸元が気になる方はポロシャツ、しゃがんだときの腰回りの露出が気になる方は股上の深いズボンを着用することがおすすめです。

指定のユニフォームがある場合で露出が気になる方は、その旨を上司に相談してみましょう。

まとめ

介護現場でセクハラ被害に遭うと、仕事自体が嫌になってしまう可能性があります。
せっかく「好きな仕事」で介護業界に入職したのに、そのような事態になってしまっては辛いです。

筆者も介護現場のセクハラ被害の話はよく聞いてきましたが、解決のポイントは、一人で抱え込まないことであり、他の職員に協力してもらうことだと思います。
本記事を参考に、セクハラを防止し、悩んでいる方は一人で抱え込まず、他の職員に協力してもらうようにしましょう。

周りを上手く巻き込んで、セクハラ問題と向き合っていくことが大切です。

この記事を書いたのは・・・

中村 亜美/Webライター

保有資格:介護福祉士
特別養護老人ホームでユニットリーダーとして11年程勤務。
その後はフリーライターとして活動中。在宅介護者や介護事業者、介護職員向けのコラム・取材記事を執筆している。