「サービス提供責任者ってどんな仕事をするの?」
「サービス提供責任者ってどんな人がなれるの?」
本記事では、このような悩みを抱えている方に向けて、サービス提供責任者の仕事内容について解説します。サービス提供責任者の1日の仕事の流れや、給料、資格や要件なども詳しく解説します。サービス提供責任者に興味がある方は参考にしてください。
この記事の内容
サービス提供責任者とは?
サービス提供責任者とはケアマネジャーが作成したケアプランを元に、訪問介護計画書を作成し、事業所のホームヘルパーが円滑に仕事できるように環境を整える仕事です。ケアマネジャーとホームヘルパー、ご利用者様の仲介役でもあるため重要な役割を担っています。
そのほかに、ホームヘルパーの業務管理や勤怠管理、職員の育成も行います。サービス提供責任者は一定以上のスキルや経験を活かして行う職種になります。
サービス提供責任者の仕事内容
サービス提供責任者の仕事は、ホームヘルパーの業務に留まりません。具体的に挙げると8つに分かれます。
- 訪問介護業務
- 訪問介護計画の作成
- ご利用者様の利用申込み対応
- ご利用者様のモニタリング実施
- 居宅介護支援事業者との連携
- ホームヘルパーの業務管理
- ホームヘルパーの勤務管理
- ホームヘルパーの技術指導
サービス提供責任者の仕事内容について1つずつ解説していきます。
訪問介護業務
一般的な訪問介護業務を行います。事業所が担当しているご利用者様のお宅へ訪問して、訪問介護計画書に則ったサービスを提供します。
サービス提供責任者は、ホームヘルパーと違う視点が必要です。
ご利用者様の様子を観察して、現在提供しているサービスが本当にご利用者様のためになっているか、考えながら仕事をする必要があります。
何も考えずに訪問介護業務を行うのではなく、ご利用者様やご家族様とコミュニケーションを密にとり、常にサービスの向上に勤める必要があります。
訪問介護計画の作成
訪問介護計画の作成もサービス提供責任者の仕事です。
訪問介護計画とは、ご利用者様に介護サービスを提供するうえで、どのようなサービスを提供するべきかを具体的に記載した計画書です。
訪問介護計画書はケアマネジャーの作成したケアプランを元に作成します。サービス提供責任者はそのケアプランを理解して、訪問介護計画書を作成します。ホームヘルパーは訪問介護計画書に沿ってサービスを提供することから、ご利用者様にサービス提供するための重要な仕事と言えるでしょう。
ご利用者様の利用申込み対応
訪問介護サービスの利用申込み対応もサービス提供責任者の仕事です。
ご利用者様のご家族が、事業所と契約をするときにサービス提供責任者が申込みの対応を行います。
利用申込みの契約時、大切な内容はしっかりと伝える必要があります。ご家族様と事業所の間で契約内容に認識の相違があると、後々トラブルになる可能性があるからです。特に重要な箇所を読み上げるなど工夫をすることも、サービス提供責任者に必要なスキルでしょう。
ご利用者様のモニタリング実施
ご利用者様のモニタリングもサービス提供責任者の仕事です。
モニタリングとは、ご利用者様の直近の様子を書類にまとめる仕事です。個人差はありますが、ご利用者様の様子は変化していきます。
その変化は極端なものから微々たるものまで幅広くあります。例えば、数ヶ月前まで1人で海外旅行に行っていたような方が、パートナーが亡くなったことで歩けなくなる事例もあります。逆に立てなかった方が立位をとれたという事例もあります。
モニタリングの実施回数は具体的には定められていません。しかし、ご利用者様の短期目標と長期目標に合わせた実施が必要です。
参考程度ですが筆者のいた事業所では、半年に一回の実施でした。訪問介護は、ご利用者様の変化に対応したサービス提供が必要です。その変化をしっかりとキャッチするようにしましょう。
ケアマネジャーとの連携
サービス提供責任者はケアマネジャーとの連携が必須になります。ケアマネジャーの作成したケアプランを元に、サービス提供責任者が介護計画書を作成するためです。
この連携がしっかりできていないと、ご利用者様が本当に必要としているサービスを提供できません。またホームヘルパーも何をすればいいかわからず、事業所が機能しません。ご利用者様に満足していただくためにも、ケアマネジャーとの連携は大切にしましょう。
ホームヘルパーの業務管理
ホームヘルパーの業務管理もサービス提供責任者の大切な仕事です。
ホームヘルパーが、介護計画書に沿ったサービスを提供できているかどうかの管理です。業務管理を行うことで、サービスの質低下の防止に繋がります。
常に管理するのは物理的に難しいため、定期的にサービス提供責任者が訪問に同行します。もしくはご家族様からクレームのあったホームヘルパーに同行して、その業務内容を確認することもありました。
最終目的は業務の改善を行うことです。そのため、事業所のホームヘルパーとも密にコミュニケーションをとり、困り事や仕事の様子などを聞いて解決に導く必要があるでしょう。
ホームヘルパーの勤務管理
ホームヘルパーの勤務管理もサービス提供責任者の仕事です。
勤務管理とは、出勤日や勤務に関することです。サービス提供責任者は自身の勤務管理や仕事だけでなく、職員の勤務状況を把握して訪問先を割り振ります。
勤務管理を把握することで、手の空いている職員に連絡して、助けてもらうこともありました。そのためサービス提供責任者は、事業所に勤務している職員の勤務状況を把握して稼働する必要があります。
ホームヘルパーの技術指導
ホームヘルパーの介護技術指導も、サービス提供責任者が行います。
サービス提供責任者は一般職員の介護技術や仕事の質など、全体的に物事を把握できる人が推薦されやすいです。そのため一定レベルか、それ以上の介護技術が求められます。
介護技術のスキルがあることを前提としてサービス提供責任者になるため、一般職員の技術指導も任される場合が多いです。職員の中には訪問介護が初めての方もいます。職員の成長が事業所のサービス向上につながるため、サービス提供責任者は技術指導のスキルも必要になります。
サービス提供責任者の1日のスケジュール
サービス提供責任者の仕事内容は幅広いです。
一般的な1日のスケジュールを表にまとめて紹介します。
時間 | スケジュール内容 | ||
8:30 | 事業所出勤 | ||
8:40 | その日の訪問先把握・スケジュール確認 | ||
9:00 | ケアプランを元に訪問介護計画書作成 | ||
10:00 | その他事務作業実施 | ||
11:00 | ご利用者様の担当者会議に参加 | ||
12:00 | お昼休憩 | ||
13:00 | 訪問介護業務実施(2~4件) | ||
16:00 | 事業所に帰着 | ||
16:10 | 担当者会議の資料を元に訪問介護計画書など資料作成 | ||
17:00 | 事業所の職員に技術指導 | ||
17:30 | 退勤 |
サービス提供責任者のスケジュールは、事業所によって違いが幅広いです。
また、業務によっては突発的にスケジュールが変更になることもあります。臨機応変な対応力も、サービス提供責任者に求められるスキルと言えるでしょう。
サービス提供責任者の仕事に必要な資格と要件
サービス提供責任者として仕事をするために、必要な資格と要件があります。その資格は以下の4つです。
- 介護福祉士
- 介護福祉士実務者研修修了者
- (旧)介護職員基礎研修修了者
- 訪問介護員養成研修1級課程
サービス提供責任者の仕事内容は、一般のホームヘルパーに比べると知識と経験が必要です。
訪問介護業務の他に、職員の技術指導の指導力や、ご利用者様やご家族、ケアマネジャーとのコミュニケーション能力も求められるため、介護技術以外のスキルも必要になります。
サービス提供責任者の給料は?
サービス提供責任者の月収は、平均33〜34万円程度でした。
一般のホームヘルパーと比べても、月収は多いほうだと言えます。しかし、平均的な金額なので勤める事業所や地域によっては違いがあるでしょう。
また、保有している資格によっても給料が変化するため、その点も理解しておくといいでしょう。
※出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
サービス提供責任者として働くメリット
サービス提供責任者は仕事の幅が広く、ホームヘルパーとして働くだけでは身につかないことも多くあります。そのためサービス提供責任者として働くメリットは、大きく分けて4つあります。
- 介護技術が上がる
- 介護以外のスキルが身につく
- キャリアアップにつながる
- 介護現場以外の視野が広がる
本章でそれぞれ解説します。気になる方は参考にしてください。
介護技術が上がる
サービス提供責任者は一定の介護技術を求められる仕事です。ご家族やご利用者様からすれば、役職を聞くだけで介護ができる人だと信頼されます。またケアマネジャーや、看護師など他職種からも一定の信頼を寄せられるでしょう。
そのため、介護技術のスキルアップは積極的に行う必要があるため、介護技術が向上します。
スキルアップのために外部研修などを受講するのもおすすめです。
介護以外のスキルが身につく
サービス提供責任者になると、介護技術以外のスキルも上達します。身につくスキルは以下の3つです。
パソコンスキル | 訪問介護計画書の作成など、事務作業が増えることで向上する | |
コミュニケーション能力 | ご利用者様以外にも、ケアマネジャーや看護師など他職種と話す機会が増えるため身に着く | |
職員への指導力 | 職員の介護技術の指導や、ご利用者様とのかかわり方など、自身のスキルを活かして指導する機会が増えるため身に着く |
これらのスキルは、業務をこなしていく中で自然と身についていきます。わからないことや、困ったときは迷わず職場の上司に相談しましょう。
キャリアアップにつながる
サービス提供責任者になることはキャリアアップにつながります。ホームヘルパーをしているだけでは経験できない仕事が多く、介護以外の経験も積めるからです。また自分の仕事だけでなく、職員の指導なども行うため全体を見る視野が広がります。
介護職員以外と関わる機会も増えるため、さまざまな視点も身につきます。ただ出世するだけでなく、知識が広がることでご自身の仕事にも良い影響を与えるでしょう。
介護現場以外の視野が広がる
サービス提供責任者になることで、介護現場以外の職種と関わる機会が増えます。他職種と話すことは、ご自身の視野が広がる良いきっかけです。視野が広がることで、ご自身の介護観に良い影響を与えることがあります。
筆者の知人には、介護士から看護師、理学療法士になった方もいます。視野が広がることで向学心や探究心が深まり、別の業界で働ている方もいるため、視野の広げることは大切と言えるでしょう。
サービス提供責任者として働くデメリット
サービス提供責任者で働くメリットがある一方、働くことでデメリットに感じることもあります。サービス提供責任者として働くうえで感じやすいデメリットは、以下の3つです。
- 業務の負担が大きくなる
- 責任が大きくなり負担に感じる
- 休日でも業務連絡がくる可能性がある
それぞれ解説します。サービス提供責任者になる上で、参考にしてください。
業務の負担が大きくなる
ホームヘルパーのときより、業務負担が増えることがあります。
ホームヘルパーのときより行う業務の幅が広がるためです。ただ訪問だけしていれば良いわけでなく、書類の作成をしたり、他の職種と話す機会が増えます。
また担当者会議などでご家族と話すことも増えるため、業務量は増えるでしょう。ただし、どの業務もご自身のキャリア形成に活かすことができます。
サービス提供責任者になることは、キャリアアップの重要な1歩目と言えるでしょう。
責任が大きくなり負担に感じる
サービス提供責任者になると、ホームヘルパーのときより責任ある仕事を任されるようになります。例えばご利用者様の個人情報の扱いなどです。契約書類や、担当者会議の資料なども扱いに気をつけなければいけません。
また職員の指導にも責任があります。特に介護技術の教え方を間違えると、誤った介護でご利用者様に被害をもたらすことも考えられます。その一方で、教えた介護技術で感謝されることもあります。その功労はサービス提供責任者として嬉しいものとなるでしょう。
サービス提供責任者は責任も重いですが、業務を行なった後の「ありがとう」は、やって良かったと思えるうれしい一言になります。
休日でも業務連絡が来る可能性がある
サービス提供責任者になると、大切な業務連絡などが休日に来る可能性があります。サービス提供責任者しか知り得ない情報や、急ぎの電話などはその可能性が考えられます。
しかし、プライベートは大切に過ごしたいという方もいると思います。そのときは、一定の業務を、勤務している職員にお願いするといいでしょう。信頼できる職員に事前に情報共有して対応をお願いしておくと、プライベートも充実したものになります。
そのために、日々の人材育成も欠かせない仕事になります。どのようにしてプライベートを維持しながら仕事を回すか、考えながら取り組むと良いでしょう。
サービス提供責任者についてよくある質問
ここまで、様々な角度からサービス提供責任者について解説してきました。
本章では、サービス提供責任者についてよくある質問を2つ取り上げました。現場の経験談を元に回答するので、興味がある方は1つの事例として参考にしてください。
サービス提供責任者の仕事はしんどいですか?
サービス提供責任者の仕事は、勤務する事業所によって差があります。勤務する事業所の管理者が、どのように事業所を運営しているかでサービス提供責任者の大変さが変わってくるでしょう。
勤務する前であれば、面接で質問したりネットの情報もリサーチして臨むことをおすすめします。実際に着任したときは、ケアマネジャーや看護師など、他職種との関係性を大切にすることをおすすめします。
未経験でもサービス提供責任者になれますか?
サービス提供責任者になるための要件を満たして、訪問介護を経験していれば未経験でもサービス提供責任者になれます。ただし、要件を満たしておらず訪問介護も未経験だと、なるのは難しいでしょう。
介護経験がないと、ご利用者様やご家族が悩んでいる事柄を理解して、解決策を提示するのが難しいからです。要件を満たした上で一定のスキルを身につけることが必要です。
まとめ
サービス提供責任者は、ホームヘルパーと比べて業務の幅が広く、新鮮な仕事が多いです。仕事が新鮮で楽しい一方、人によっては悩みが出てきて辛いこともあるでしょう。しかし、介護で仕事をしていくのであれば経験して損なことはありません。
筆者も、訪問介護で培った臨機応変な対応力や、職員への指導力などが今の仕事でも活きています。介護業界以外でも無駄にはならないので、ぜひ挑戦することをおすすめします。
この記事を書いたのは・・・
かきざき/Webライター
保有資格:介護福祉士/終活ガイド1級/エンディングノートセミナー講師/食品衛生責任者
介護福祉士として介護職を13年経験。ライター歴3年。
特養でのユニットリーダー経験や、珍しい定期巡回の経験を活かして記事執筆しています!