ユニット型と従来型の違いを解説|向いている人の特徴7選も紹介

介護の仕事をしているとよく聞く「ユニット型」と「従来型」。特別養護老人ホームの求人でも見かけることが多いのではないでしょうか。

ユニット型とは、少人数のユニット内で介護サービスを提供する形態です。
ご利用者様の状態に合わせたケアをおこないます。基本的に個室でプライベートの時間を大切にした仕組みが特徴です。

従来型は、多数のご利用者様を複数の職員でケアします。日々の業務がほぼ固定化されており、介護職員の役割分担が決まっているため、効率的なケアが可能です。

本記事では、ユニット型と従来型の違いを具体的に解説しています。それぞれのメリット・デメリットや、向いている介護職員の特徴もまとめています。よければ最後まで読んで参考にしてみてください。

ユニット型と従来型の違い

ユニット型と従来型は、住環境に大きな違いがあります。ユニット型は個室、従来型は多床室が主流です。

【ユニット型】

※引用:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|厚生労働省

【従来型】

※引用:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|厚生労働省

住環境以外にも、さまざまな違いがあります。以下の表に、それぞれの細かい違いをまとめました。

項目ユニット型従来型
居室全室個室と共有スペース多床室(2~4人部屋)と共有スペース
職員配置【日中】
1ユニットにつき1人以上の介護職員を配置
【夜間】
2ユニットごとに1人以上の介護職員または看護職員を配置

※ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置するよう義務付けられている
ご利用者様3人につき、1人以上の介護職員または看護職員を配置
プライバシー個室により確保されているカーテンでの仕切りが多い
費用
(月額目安)
12~14万円8~9万円
生活環境1ユニットにつき10人前後
少人数の家庭的な雰囲気
1フロアにつき20~30人以上
複数の介護職員がケアを提供する

ユニット型のメリット

介護職員としてユニット型で働くメリットは以下のとおりです。

【ユニット型4つのメリット】

  • 判断力が身につく
  • 個別的なケアができる
  • チームワークが強くなる
  • ご利用者様との信頼関係が築きやすい

1つずつ解説していきます。

判断力が身につく

ユニット型では、1つのユニットを1〜2人の介護職員が担当します。職員の数が少なく、自分の判断で業務を進める機会が多い体制です。

そのため、業務の優先順位をつけたり、状況を観察し適切に判断したりする力が身につきます。自分の判断がご利用者様のQOL(生活の質)向上に直結し、やりがいを感じられるのもメリットです。

個別的なケアができる

ユニット型ではご利用者様の生活習慣や好みをつかみやすく、個別的なケアを提供できます。
大人数の中では埋もれがちなご希望にも対応できるため、ご利用者様が自分らしく暮らすためにサポートしやすい点が大きな魅力です。

チームワークが強くなる

チームワークが強まるのもユニット型のメリットです。ユニット型は、各ユニットの担当がある程度固定されています。毎日ほぼ同じメンバーで業務にあたるため、職員同士の距離が近づきます。そのため、お互いのフォローや業務のすり合わせがしやすいのが特徴です。

また「この利用者様はこんなことが好き」「この時間帯は不安定になりやすい」など、細かい情報も共有しやすく、コミュニケーションが活発になります。

ご利用者様との信頼関係が築きやすい

ご利用者様とじっくり向き合い、会話やケアを通じて信頼関係を築きやすいのも、ユニット型の大きなメリットです。

ご高齢の方は、自分の想いを表に出さない方も少なくありません。ユニット型では、一人ひとりと語らう時間が取りやすく、単なる介助だけでなく、精神的な関わりを深めやすい利点があります。

ユニット型のデメリット

次に、ユニット型のデメリットについても見てみましょう。

【ユニット型のデメリット】

  • 人手不足になりやすい
  • 夜勤での負担が大きい
  • 経験が浅いとプレッシャーを感じやすい

人手不足になりやすい

ユニット型は、人手不足になりやすい傾向があります。1つのユニットにつき担当の介護職員が決まっており、急な欠勤や退職があるとシフト調整が難しいからです。

施設によってはユニット1つに対して1人の介護職員が担当します。そのため、担当の介護職員が休むことになると代わりの介護職員にピンチヒッターを頼まなければなりません。

夜勤での負担が大きい

夜勤の精神的な負担が大きい点もデメリットの1つです。従来型と違い、ユニット型は1人で夜勤を乗り切らなければならないケースがあります。2つのユニットを1人の介護職員が見守る場合も少なくありません。

複数のご利用者様を同時にトイレ誘導しなければならないパターンもあります。日中であれば、別ユニットの介護職員にヘルプを求められますが、夜勤では難しくなるのがデメリットです。

ただし、ショート夜勤を採用している施設であれば夜勤の勤務時間は短いため、心身への負担が軽減できるでしょう。

経験が浅いとプレッシャーを感じやすい

経験が浅い介護職員は、ユニット型の勤務でプレッシャーを感じやすい傾向にあります。ベテランの介護職員であれば、ご利用者様のちょっとした体調の変化や不安な様子をキャッチできますが、経験が足りないと難しいものです。

ユニット型は、1人で10人前後のご利用者様をケアします。
「自分の対応が遅れてトラブルになったらどうしよう」と心配になる介護職員もいるでしょう。初めて介護の仕事をする人や、ユニット型の勤務経験が少ない人は、精神面での疲れが大きくなりがちです。

従来型のメリット

ここからは、従来型のメリットについて解説していきます。

  • 安定したルーチンワークができる
  • 介護職員の負担が均等になりやすい
  • スピーディーなケアができる

順番に見ていきましょう。

安定したルーチンワークができる

従来型は、一日の流れが定型化されているケースが多く、新人職員でも業務を覚えやすいのがメリットです。ほかの介護職員がそばにいるため、わからないことをすぐ質問できます。
介護職の経験が浅い人でも心のゆとりができやすいでしょう。

介護職員の負担が均等になりやすい

従来型は、1つのフロアに複数の介護職員が勤務しています。シフトによって役割分担が決まっているパターンが多く、特定の介護職員に負担が偏りにくい点がメリットといえるでしょう。

急な欠勤があってもカバーしやすいため、業務が滞りにくい点も魅力です。突発的に発生する業務があっても、みんなで協力して乗り切れます。

スピーディーなケアができる

従来型は、ご利用者様へのスピーディーなケアができる点もメリットです。

シフトによって多少の人数の変動はあるものの、従来型は常にほかの介護職員と連携して業務にあたります。そのとき出勤している介護職員が、それぞれの役割をこなしつつ連携し、効率的かつ迅速に業務を進められるのが利点です。

業務の回転が早まれば、ご利用者様をお待たせすることなく、スムーズなケアにつなげられます。

従来型のデメリット

従来型のデメリットは以下のとおりです。

  • 個別対応が難しい
  • 利用者との関係が浅くなりやすい
  • 職員間の連携が複雑になりやすい

それぞれ解説していきます。

個別対応が難しい

ユニット型と違い、従来型は大勢のご利用者様のケアを並行するため、一人ひとりにじっくり関わる時間が少なくなりがちです。決められたスケジュールを進めるうちに、流れ作業のように感じる介護職員もいます。

ご利用者様の個性やニーズを把握しづらく、画一的なケアに陥るリスクがある点はデメリットといえるでしょう。

利用者との関係が浅くなりやすい

従来型は、その日によって職員の担当する業務が変わりやすく、ご利用者様との関係が深まりにくいデメリットがあります。

【シフトの例】
月曜日:日勤で入浴担当
火曜日:早出でフロア担当
水曜日:休み
木曜日:夜勤
金曜日:明け
土曜日:休み
日曜日:日勤でフロア担当

常に同じ業務につくわけではないため、ご利用者様とのコミュニケーションが少ない日もあります。関係性が深まりづらく、個別的なケアが難しいケースもあるでしょう。

職員間の連携が複雑になりやすい

一つのフロアに複数の職員が勤務する従来型は、情報共有のタイミングがずれやすいデメリットもあります。

誰がどのご利用者様にどのようなケアをおこなったかが分からないと、細かな注意点が伝わらず抜け漏れの可能性が高まるでしょう。

また、介護職員の数だけ価値観や業務に対する考え方が違うため、指示系統が明確でない施設ではコミュニケーションの質が下がるケースもあります。

ユニット型に向いている人の特徴7選

ユニット型に向いている人の特徴は以下の7つです。

  • 注意力が高い人
  • 柔軟に対応できる人
  •  幅広い業務に対応できる人
  • 家庭的な雰囲気で働きたい人
  • じっくり利用者と関わりたい人
  • チームワークを大切にできる人
  • コミュニケーションが得意な人

1つずつ解説していきます。

注意力が高い人

ユニット型に向いているのは、注意力が高い人です。少ない人数でユニットを担当するため、個々の介護職員にご利用者様の変化を見逃さない注意力が求められます。

たとえば、体調不良があっても認知面が低下している人の場合、うまく言葉にできないかもしれません。そうしたとき、介護職員がいち早く対応すれば、状態の悪化を食い止められる可能性が高まります。

柔軟に対応できる人

ご利用者様の体調や気分は日々変化するため、柔軟に対応する力が不可欠です。1人で1ユニットのご利用者様をケアするには、個々の希望を聞き取り、臨機応変に対応しなければなりません。

常にご利用者様の目線に立ち、柔らかな発想で業務に取り組める人はユニット型に向いています。

幅広い業務に対応できる人

さまざまな業務に対応できる人も、ユニット型向きです。

少人数のチームでケアをおこなうユニット型では、日常生活の援助だけでなく、行事の企画や介護記録など、幅広いタスクに携わります。専門分野だけでなく多面的な業務を任されるぶん、やりがいを感じる場面も多いでしょう。

ユニット型は、多様な業務にも丁寧に対応できる人が向いています。

家庭的な雰囲気で働きたい人

家庭的な雰囲気の中で働きたい人も、ユニット型が向いているといえます。一緒に食卓を囲んだり、共用スペースで談笑したりと、家族のように寄り添いたいと考えている人は、ユニット型が働きやすいでしょう。

アットホームな空気で、温かい関係を築きやすいのがユニット型の魅力です。

じっくり利用者と関わりたい人

ユニット型では、一人ひとりのペースや好みに合わせてケアをおこなうため、ご利用者様と深く関わる機会が多いです。

日々の会話やサポートを通じて、じっくりと信頼関係を育めるでしょう。ご利用者様が歩んできた人生を知り、その人に合わせたケアを提供するのがユニット型の特徴です。

「数をこなす」のではなく、「質を高める」ケアをしたい人には最適といえます。

チームワークを大切にできる人

ユニット型は少人数のご利用者様に対するケアをおこないますが、介護職員自身も1ユニットに1~2名と少なめです。そのため、各ユニットを担当する介護職員同士の連携が欠かせません。

お互いの得意分野を活かし、苦手分野をサポートしながら、普段のケアを分担する場面もあるでしょう。
そのため、チームワークを重視し、情報共有や助け合いが自然にできる人ほど活躍します。

コミュニケーションが得意な人

コミュニケーションもユニット型に適性があります。ユニット型はご利用者様との距離が近く、会話の機会も多いため、コミュニケーションスキルが大切です。

言葉だけでなく、表情や仕草から相手の気持ちを汲み取る力が求められます。また、介護職員同士での関わりもケアの提供に影響します。

笑顔で声をかけたり、相手の話をしっかり聞いたりするなど「伝え合う力」を大切にできる人には働きやすい職場です。

従来型に向いている人の特徴7選

従来型に向いている人は、以下のような特徴をもつ人です。

  • マルチタスクが得意な人
  • 効率よく業務を進めたい人
  • 忙しくても冷静さを保てる人
  • 段階的に仕事を覚えていきたい人
  • ルーチンワークが苦にならない人
  • 先輩のそばで介護技術を習得したい人
  • 複数の職員と連携して仕事がしたい人

順番に見ていきましょう。

マルチタスクが得意な人

従来型、とくに大規模な施設では、同時に複数のタスクをこなす場面が多いです。シングルタスクでは時間内に業務が終わらないこともあるでしょう。

従来型は集団ケアが基本となるため、時間管理や優先度の判断ができる人ほどスムーズに業務が進みます。慌ただしい環境でやりがいを感じられるタイプの人は従来型向きです。

効率よく業務を進めたい人

効率を重視する人も従来型を選ぶとよいでしょう。

決まったスケジュールで動くことの多い従来型では、1人が複数の業務を受け持つことがあります。「時間を有効に使いたい」「一定のペースで業務を進めたい」という人にとっては、働きやすい環境といえるでしょう。

段取りを考えて、無駄なく動くのが好きな人にぴったりです。

忙しくても冷静さを保てる人

集団ケアが主体の従来型では、想定外の事態が重なり、忙しくなるパターンが少なくありません。そのときに落ち着いて対処できる人は、従来型向きです。

複数のご利用者様から同時に声がかかったとしても、焦らず優先度を考えて動ける冷静さが求められます。忙しさをバネにして、成長を楽しめる人にとってはやりがいの大きい職場です。

段階的に仕事を覚えていきたい人

介護職の経験が浅く、これから仕事を徐々に覚えたいと考えている人は、従来型を選ぶとよいでしょう。

従来型の多くは、マニュアルやルールが整備されています。指示や指導が受けやすく、段階的に業務の習得が可能です。

最初は簡単なところからスタートし、徐々に業務範囲を広げたい人には働きやすい環境と言えるでしょう。

ルーチンワークが苦にならない人

ルーチンワークに抵抗がない人も従来型に向いています。
たとえば、食事やトイレ誘導、おむつ交換、入浴などは、決まった時間におこなうケースが多いでしょう。

変化の多い現場よりも、ある程度固定されたプロセスで働きたい人にとっては、従来型の働き方が合っています。

先輩のそばで介護技術を習得したい人

従来型は、同じフロアに介護職員が多く集まるため、先輩の介護技術を間近で見る機会が多いです。わからないことがあれば、すぐに相談しやすい環境といえます。

周囲の動きを見て業務のコツをつかみたいという方にとって、従来型は学びやすい職場です。実践を重ねながら自分のスキルを高めたい人に向いています。

複数の職員と連携して仕事がしたい人

従来型では、大勢のスタッフが協力し合う場面が多いため、多様な人と関わるのが好きな人に向いています。

介護職員が多いと役割分担ができて負担は軽減されます。しかしその分、ほかの介護職員との連携が必要です。連携ミスを防ぐには、声をかけ合いながら動く必要があり、密なコミュニケーションは欠かせません。

介護職員だけでなく、医療職やリハビリ職などの職員と意見を交わしながら働けるので、チームとしての仕事にやりがいを感じる人に合っています。

まとめ

本記事では、ユニット型と従来型の違い、それぞれのメリット・デメリット、向いている人の特徴をまとめました。

ユニット型は個別性が高く、じっくり利用者と関われる魅力があります。従来型は、効率的なチームケアを学べる点が魅力です。

どちらを選ぶかは「どんな介護がしたいか」「どんな環境で成長したいか」で変わります。

もし「自分にはどちらが向いているのかわからない」と思ったら、お気軽に「介護転職のミカタ」にご連絡ください。

専任のスタッフが、丁寧にご希望をヒアリングします。サービスは無料で利用できるので、いつでもお問い合わせください。

この記事を書いたのは・・・

佐藤 恵美/Webライター

保有資格:介護福祉士/社会福祉士
回復期リハビリ病棟で7年勤務したのち、社会福祉士を取得し、
生活相談員を経験。現在はフリーのWebライターとして活動中。