看護助手から看護師になるには|最短ルートやメリットを解説

看護師になるためには、看護師の養成機関で3~4年の教育を受ける必要があります。新卒者や既卒者によって、資格を取得するためのルートはさまざまです。

本記事では、看護助手として働きながら看護師を目指す人に向けて、看護師資格を得る方法や看護師国家試験について解説しています。看護師に向いている人の特徴についても説明するので、参考にしてみてください。

看護助手と看護師の違い

看護助手と看護師には業務範囲や資格の有無など、明確な違いがあります。

【看護助手と看護師の違い】

項目看護助手看護師
資格不要必須
業務内容看護師のサポート、患者の身の回りのケア患者の診療、治療、看護業務全般
役割医療行為の補助や介護業務、環境整備患者の健康管理、医療行為の実施
年収318.4万円508.2万円
キャリアパス看護師や介護福祉士認定・専門看護師や管理職
※出典:厚生労働省 職業情報提供サイトjob tag|看護助手 / 看護師

看護助手は無資格・未経験者でもチャレンジできる仕事です。経験を積みながら、看護師へのステップアップがじゅうぶん狙えます。

看護助手から看護師へキャリアアップするルート

看護助手が看護師を目指すルートは大きく分けて2つあります。

本章では、2つのルートについて解説していきます。

看護助手として働きながら准看護師を目指す

看護助手として仕事を続けながら看護師になりたい人は、まず准看護師を目指すのがおすすめです。
准看護師とは、都道府県が認定する看護師資格で、国家資格の正看護師とはいくつか違いがあります。

【准看護師と正看護師の違い】

項目准看護師正看護師
看護師免許の
発行元
都道府県知事厚生労働大臣(国家資格)
受験資格・中学校卒業以上
・准看護学校(2年)修了
・高校卒業以上
・看護専門学校(3年)または
 大学(4年)修了
業務範囲医師や正看護師の指示のもとで業務をおこなう
※基本的に正看護師と業務内容は変わらない
医師の指示を受けつつ、自らの判断で業務をおこなう
※参考:日本准看護師連絡協議会|これから准看護士を目指す人へ

准看護師の養成機関は全日制だけでなく半日制があるため、勤務調整ができれば看護助手の仕事をしながら2年で准看護師の受験資格が得られます。准看護師試験の合格率は98.1%とかなり高く、学習を積み重ねていけばじゅうぶん合格を狙えるでしょう。

准看護師の資格を取得すれば、定時制や通信制の正看護師養成機関で2~3年学んだのち、看護師国家試験の受験が可能です。

学校によっては、週に3日の登校(終日)など、社会人にとって嬉しい体制をとっている学校もあります。何校かピックアップして比較してみましょう。

ただし、准看護師の養成機関はすべての都道府県にあるわけではなく、地域によっては准看護師を目指すのが難しい場合があります。

働き方を変えて正看護師の養成機関で学ぶ

「最短ルートで正看護師になりたい」と考える人は、全日制の看護師養成機関がおすすめです。

高校を卒業していれば、3~4年で正看護師にチャレンジできます。ただし、看護学校は平日の日中に授業があるため、フルタイムで働きながら通うのが難しいでしょう。

いったん仕事を辞めて働く道もありますが、生活するにはあまり現実的ではありません。土日のパートや夜間のアルバイトに切り替えるなど、働き方を変えることも検討してみましょう。

「今の職場で働いていたい……」という人は、上司への相談をおすすめします。勤務形態を見直したり、職場によっては看護師の資格取得を支援してくれたりする可能性もあるからです。
職種が変わったとしても、これまで通り同じ職場で貢献したいという熱意を伝えてみましょう。

看護助手から看護師になるメリット

看護助手が看護師になるメリットとして、収入アップが挙げられます。基本給だけでなく、資格手当もつき、年収が上がるためです。
また、看護師は慢性的な人手不足のため、就職に困らないのも特徴です。結婚や出産によるブランクがあっても、復帰しやすいのは大きなメリットといえるでしょう。

看護助手は病院やクリニックが主な職場ですが、看護師は訪問看護や介護施設、教育機関、企業などさまざまな場所で求人募集があります。多様な職場から選択でき、業務の幅が広がったり医療業界以外の知識も身についたりするのもメリットです。

看護師に向いている看護助手の特徴5選

看護助手の中でも、看護師に向いている人の特徴は大きく分けて5つあります。

【看護師に向いている看護時助手の特徴】

  • 思いやりがある
  • 忍耐力がある
  • チームワークを大切にする
  • 細やかな配慮ができる
  • 学び続ける姿勢がある

1つずつ解説していきます。

思いやりがある

まず、思いやりがある人は看護師に向いています。
患者様は不安を抱えている人が多いため、気持ちに寄り添う姿勢が何よりも大切です。

筆者が働いていた病院では、患者様の小さな心の動きに寄り添える看護師がたくさんいました。
患者様の中には、辛抱強く痛みや不安を口に出さない方もいます。しかし、看護師は患者様の表情や声の調子から、不安な気持ちやリハビリが進まない焦りを感じ取り、親身になって話を聞いていました。

忍耐力がある

忍耐強い人も、看護師に向いている人の特徴です。看護の現場では、体力的にも精神的にも厳しい場面があるため、粘り強い対応が求められます。

また、感情的になる患者様やご家族様の対応をしなければなりません。看護師は自分の感情をコントロールしながら、じっくり相手の話を聞く忍耐力が必要です。

チームワークを大切にする

チームワークを重んじる人も看護師向きです。

看護師は、多くの職種とチームを組んで患者様のケアにあたります。それぞれの立場や価値観と向き合いながら、患者様の回復に向けて進まねばなりません。

【看護師と他職種がチームを組む例】

褥瘡対策チーム看護師が患者様の皮膚の状態を確認して医師や管理栄養士と情報を共有する。
カンファレンスで、適切な栄養を摂るための食事や適切な体位交換のタイミングなどをチームで検討し、実践する。
緩和ケアチーム看護師は医師の指示のもと、患者様の痛みや不安を軽減するためのケアを提供しつつ、患者様とご家族様の心理的サポートをおこなう。
状態に応じてリハビリスタッフが介入し、心地よいリラクゼーションを目的としたリハビリを設ける。
栄養管理チーム看護師は、患者様の食事について細かく観察し、管理栄養士やリハビリスタッフと協力してより良い食事計画を立てる。
患者様の食物アレルギーや嗜好を踏まえ、その人にあった栄養摂取ができるように都度カンファレンスで見直しを図る。

チームでの医療は自分の意見だけを押し通すのではなく、チームのメンバーを尊重しながら患者様の治療に向き合う意識が大切です。

細やかな配慮ができる

看護師は、小さなことに気を配れる人も向いている仕事です。多くの患者様と関わる中でも、さりげない配慮は患者様の心を癒すきっかけになります。

【患者様の変化に配慮する例】

入院中の患者様がいつもと違う様子で、言葉も少なく笑顔に元気がない。
受け持ち看護師がさりげなくベッドサイドに座り「今日は少しお疲れですか?」と声をかけると、患者様は「家族に迷惑をかけていないか心配で…」と打ち明けた。
看護師は「ご家族も○○さんが元気になるのを一番望んでいますよ」と伝え、不安な気持ちに寄り添った。

見落としがちなことにも気がついたり、相手の立場に立って考えられる人は看護師として適性があります。

学び続ける姿勢がある

常に、知識や技術をアップデートしようと考える人も看護師向きです。
医療・看護の技術は絶え間なく進歩しています。より良い看護につなげるには、常に新しい情報を取り入れて、自分を向上させなければなりません。

看護助手から看護師を目指すのであれば、普段から看護に関する本を読んでおくと良いでしょう。前もって知識を頭に入れておくと、学校に入ったときもあまり戸惑わずに学習を進められます。

看護師を目指す際にあると良いスキル

ここからは、看護師を目指す人が持っていると良いスキルについて解説していきます。

  • コミュニケーション能力
  • 観察力
  • 時間管理能力
  • 基本的な医療知識
  • ストレスマネジメント
  • ITスキル

1つずつ見ていきましょう。

コミュニケーション能力

患者様やご家族様、同じ看護師や看護助手、医師、リハビリ職など、あらゆる立場の人と関わるため、コミュニケーション能力は看護師にとって必要なスキルです。
分かりやすい説明や根拠を述べたり、相手の想いを汲み取る力が求められます。

例えば、患者様の治療計画に携わるときは、カンファレンスで看護師としての意見をきちんと伝えながらも他職種の考えも受け入れる意識が大切です。互いの価値観や患者様への想いを共有する姿勢が、より良い治療につながります。

患者様と良好な関係を築いたり、他職種とスムーズな連携をとったりするには、相手を尊重しながら関わっていく姿勢が不可欠です。

観察力

看護師には観察力も求められます。患者様の小さな変化が、深刻な病気につながる可能性もあるからです。

【患者様の変化が新たな病気の発見につながる例】

看護助手から「患者様が『頭が重い』と訴えている」と報告を受け、看護師が対応した。
声かけへの反応が鈍く、右手の動きが悪いと気づき、すぐの意思へ報告し、検査を実施した。
軽度の脳梗塞が見つかったため即座に処置をおこなった結果、後遺症を最低限に抑えられ、現在は回復に向かっている。

患者様の治療には、ささいな変化も見逃さない観察力が欠かせません。

時間管理能力

医療の現場では、限られた時間の中で多くのタスクをこなす必要があるため時間管理能力は必須です。

看護師は、患者様の急変や突発的な入院などにも迅速に対応しなければなりません。

日勤であれば、朝の申し送りが終わるとすぐにおむつ交換や当日の入退院に備えた準備があります。
また、受け持ちの患者様に検査の予定があれば定刻通りに検査室まで移送し、ナースコールの速やかな対応も必要です。

もちろん他のスタッフと連携して業務を進めますが、急な予定変更や医師からの指示など、予期せぬ事態となるケースはあります。そのため、時間を見ながら効率よく仕事を進めるスキルは看護師にとって大切です。

基本的な医療知識

医療の知識を少し持っておくだけでも、看護師の勉強が進めやすくなります。

看護助手の人は、日ごろから看護師と働いているため医療職としての見方や処置の現場などを見る機会が多いです。そのため、まったく医療の知識がない人よりもスムーズに看護師の勉強を進められるでしょう。

これから看護師を目指す人は、職場の看護師と積極的に関わり、看護師の業務がどういったものか観察するのがおすすめです。

ストレスマネジメント

看護師は自分のストレスマネジメントができると働きやすいです。
医療現場は毎日が忙しく、イレギュラーな事態も起こります。そのたびに動揺したり苛立ってしまっては、業務に支障をきたしてしまいます。

頭の中で考え込むだけでは、具体的なストレス要因はなかなかはっきりしないものです。
ストレスを感じたら、紙に内容を書き出したり家族や友人に話したりして、アウトプットの時間を作ると心が軽くなります。話すうちに、自分がなぜストレスを感じたのかが見えてくるでしょう。

自分がどのようなときにストレスを感じるのか、普段から客観的にとらえる意識を持つことが大切です。

ITスキル

看護師にはITスキルも大切です。最近は電子カルテが主流で、病院によっては専用の端末でリアルタイムの情報共有ができる職場が増えています。

【ICTを推進している病院の例】

病棟内の職員がそれぞれ専用のiPhonを持ち、離れた場所にいる医師と患者様の様子を共有したり、別フロアのリハビリスタッフとミーティングの予定を確認しあったりして、効率的な医療ケアに繋げている。

ITスキルを磨けば、パソコンや専用のシステムにも戸惑わずに業務に取り組めるでしょう。

まとめ

看護助手から看護師にキャリアアップするにはさまざまなルートがあります。
働きながら看護師の勉強を進めるなら、まず准看護師を取得するのがおすすめです。

のちのち正看護師を目指すのであれば、専門機関で2~3年間学ぶ必要があります。しかし、准看護師の養成機関は働きながら通えるところが多く、社会人でも資格が取りやすいのが特徴です。

最短コースで正看護師を狙うなら、全日制の専門機関や看護大学で3~4年学べば国家試験の受験資格が得られます。
看護師が求められるスキルの中には、コミュニケーション能力や観察力など、看護助手と共通するものがあります。看護助手の経験がある人は、看護師を目指すには有利といえるでしょう。普段の業務で患者様との関わりにも慣れているため、他の仕事をしている人よりも看護師に近い存在でもあります。

働き方・学び方に悩んだら、迷わず職場に相談してみてください。
医療機関の中には、看護助手から看護師への転身を目指す人を支援してくれる職場もあります。

「もっと患者様の支えになりたい」という気持ちを大切に、看護師への道を進んでいきましょう。

この記事を書いたのは・・・

佐藤 恵美/Webライター

保有資格:介護福祉士/社会福祉士
回復期リハビリ病棟で7年勤務したのち、社会福祉士を取得し、
生活相談員を経験。現在はフリーのWebライターとして活動中。