
「転職理由を聞かれたら何て言えばいいの?」
「ネガティブな理由で退職したけど、正直に話したら印象が悪くなるかも……」
新しい職場を探す介護職員の方は、こうした悩みをもっているのではないでしょうか。
結論から言えば、たとえ前職をネガティブな理由で退職したとしても、ポジティブな表現に言い換えればOKです。
本記事では、これから転職先を探す介護職員の方に向けて、転職理由の伝え方を例文付きで紹介しています。
自分に合った職場の見つけ方もまとめていますので、長く働ける職場を見つけるために最後まで読んでみてください。
この記事の内容
介護職の転職理由トップ5
公益財団法人介護労働安定センターの令和5年度「介護労働実態調査」によると、介護職員が前職を退職した理由のトップ5は以下のとおりです。
- 人間関係に問題があったから
- 職場の理念や運営に不満があったから
- 他に良い仕事・職場が見つかったから
- 収入が少ないから
- 将来の見通しが立たないから
順番に見ていきましょう。
1.人間関係に問題があったから
まず、退職した理由として挙げられるのは人間関係です。介護の職場ではチームワークが欠かせません。その分、人間関係のトラブルが起こりやすいのも事実です。
令和5年度「介護労働実態調査」では、以下の項目が退職した理由の上位を占めています。00
- 上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった
- 上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、リーダーシップがなく信頼できなかった
- 同僚の言動(きつい言い方・悪口・嫌味・嫌がらせなど)でストレスがあった
引用:令和5年度「介護労働実態調査」|公益財団法人介護労働安定センター
こうした環境では、仕事そのものを嫌いになるかもしれません。介護の仕事を続けたいからこそ「周りの人たちと楽しく働ける職場を見つけよう」と考える方が多いのです。
2.職場の理念や運営に不満があったから
介護施設によって、経営理念や運営の方針は異なります。ご利用者様の自立支援を第一とする施設もあれば、安心感に満ちた、穏やかな暮らしの提供を最優先と考える施設もあります。
自分が考えるケアのあり方が職場の考え方と違うと「この職場では理想とする介護ができないのでは」と感じるかもしれません。違和感を放置して働き続けると、次第にモチベーションが下がっていくでしょう。
「もっと利用者さんに寄り添った介護がしたい」「介護職員の意見を大切にする職場で働きたい」という気持ちが、転職を考える理由になるといえます。
3.他に良い仕事・職場が見つかったから
深刻なトラブルではなく、今よりも自分に合う職場が見つかって転職する人も多いです。
介護の仕事は昼夜問わず、職員は多様なシフトに対応しています。子育てや家族の介護など、ライフスタイルによって働き方も変えなければならないケースもあるでしょう。
また、介護職員として成長できる環境を求めて転職する人もいます。資格取得を応援してくれる施設であれば、研修を職場で受けられたり、外部研修でも休みをもらいやすいです。
筆者が介護職員として勤務していた病院では、看護師や介護職員に対して資格取得を奨励しており、多彩な勉強会が開かれていました。外部機関での研修に参加する際も、シフトを調整してくれたため気兼ねなく参加でき、キャリアアップにつながりました。
4.収入が少ないから
収入の少なさを転職理由にする介護職員も少なくありません。
令和5年度「介護労働実態調査」では、介護職員の平均月給は22万5,914円です。

「やりがいはあるものの、収入面で不安が残る」という声は、介護職でもよく耳にします。生活の基盤として、安定した収入は不可欠です。仮に資格を取得しても、収入が変わらない職場では将来を見据えたキャリア形成は難しいでしょう。
国では「介護職員等処遇改善加算」の取得など、賃金引き上げを目的とした取り組みが推奨されています。そのため、収入アップを実現している介護職員もいます。
5.将来の見通しが立たないから
将来の見通しが立たないのも転職理由に挙げられます。
介護業界は、人が人を支える仕事です。そのため、将来なくなるとは考えづらく、将来性は高いと考えられるでしょう。職場の経営状況が介護職員の生活に大きく影響するため、場合によっては「この職場にいても未来がない」と感じるケースもあります。
ご利用者様の人数が減り、経営が厳しくなると人員削減が進みます。すると、残った介護職員の業務量は増える一方です。心身への負担が大きくなり、このまま働き続ける未来が見えないと感じるケースも珍しくありません。
介護の仕事を長く続けるためには、健全な運営と安定した環境の職場選びが不可欠です。
面接官が転職理由を聞く4つのワケ
面接で転職理由を聞かれると、言葉に詰まる人もいるでしょう。前向きな理由でなければ「悪い印象をもたれるかも」と不安になるのも当然です。
【面接官が転職理由を聞く理由】
- 人柄や価値観を知りたい
- 介護職に対する意欲を見たい
- 長く働いてくれるかを見きわめたい
- 仕事内容や労働条件がマッチングするか確かめたい
転職理由そのものを知りたいのではなく、あなたがどのような人か知りたいのだと考えてみてください。転職理由の伝え方も変わってくるでしょう。
人柄や価値観を知りたい
面接で転職理由を聞くのは、面接官は応募者の転職理由から「どのような人柄か」「どのような価値観を持っているのか」を探ります。
【人柄や価値観を知るための質問例】
- 仕事で大切にしていること
- 問題が起こったらどのように対処するか
- 他の職員と連携するために心掛けていることは何か
介護の現場では、ご利用者様との関わりや職員同士の連携など、人間的な部分が影響する場面がたくさんあります。面接のときは、転職の理由だけでなく、あなたの人柄が伝わるエピソードを伝えましょう。
介護職に対する意欲を見たい
面接官は、介護職への意欲も見たいと思っています。どれくらいの熱量で介護の仕事に取り組んでくれるのかを、転職理由からくみ取ろうとしているのです。
【意欲を伝える例】
- 利用者さんに寄り添う介護がしたい
- 資格を取ってさらにスキルアップしたい
- 他の介護職員と協力しながらより良いケアを目指したい
介護職員としてどうなりたいかを伝えてみましょう。前向きな姿勢が伝わり好印象です。
長く働いてくれるかを見きわめたい
介護施設が採用活動において重視するポイントの一つが、長期的に働いてくれる人材かどうかです。
新しく入った介護職員が早期離職すると、業務を教えた分の時間や人件費が無駄になってしまいます。また、職員の入れ替わりが激しいと、ご利用者様に不安を感じさせるかもしれません。
長く勤める意思を示すには、転職理由をキャリアプランにつなげるのがおすすめです。介護福祉士やケアマネジャーなど、数年先を見越したビジョンを伝え「この施設で成長していきたい」と伝えましょう。
応募先の施設が実施している勉強会や研修などを挙げ「この施設ならさらに介護職員としてのスキルアップが叶うと考えました」など、前向きな姿勢をアピールすると好感をもってもらえます。
仕事内容や労働条件がマッチングするか確かめたい
採用後のミスマッチを防ぐために、転職理由を聞くケースもあります。
施設が考えていた条件と、応募者の希望にズレがあると「こんなはずじゃなかった…」となりがちです。応募者が後悔しないためにも、転職理由を聞いておきたいのが施設側の本音です。
転職理由を伝えるときは「夜勤が多いから」「レクリエーションが大変だから」など、業務に対する不満は控えておきましょう。
ネガティブな理由を伝えると「うちで働くのは難しいかも…」と思われるかも知れません。
労働条件に対して質問されたら、自分の体調も考慮しつつ「柔軟に対応できるよう調整します」とポジティブに回答するのがおすすめです。
ネガティブな転職理由の言い換え表現と例文
本章では、主な転職理由3つについて、面接での言い換え表現と例文を紹介します。
- 人間関係で転職する場合
- 給与への不満で転職する場合
- スキルアップできないと感じて転職する場合
転職理由は、そのまま伝えず応募先への意欲につなげるようにしましょう。例文を参考に、アレンジしてみてください。
人間関係で転職する場合
【例文】
前職では、職員間の意見交換が難しく、チームの連携に課題を感じていました。
他職種とも協力しながら、ご利用者様により良いケアを実践したいといつも考えています。
しかし、以前の職場では職員同士のコミュニケーションが不足しており、意見を出し合って課題解決に取り組む機会も少ない状況でした。そのため、何が「良いケア」なのかもあいまいになっていたように思います。
この経験から、これからはチームワークを大切にし、全ての職員が協力し合える環境で働きたいと考えるようになりました。
貴施設は、定期的なカンファレンスや毎月の全体会議で、現場の職員から出る意見を重視されているとお聞きしました。
私も、ご利用者様のために積極的に意見を出し、学びながら成長していきたいと考えています。これまでの経験を活かし、チームの一員として貢献できればと思い、応募いたしました。
「人間関係が悪かったから辞めた」ではなく、「チームワークを大切にしたい」と前向きに伝えるのがポイントです。
給与への不満で転職する場合
【例文】
前職では、ご利用者様に寄り添った介護を心がけ、業務改善にも積極的に取り組んできました。視界、給与体系が一律で、努力やスキルアップが給与に反映されにくい環境だったため、モチベーションの維持が難しくなっていました。
私は、頑張りが評価され、スキルアップやより良い介護につながる環境で働きたいと考えています。貴施設では、資格支援制度が充実しており、スタッフの成長を応援する体制が整っているとお聞きしました。
私も介護福祉士の資格取得を目指し、専門性を高めながら、ご利用者様の生活の質をより向上させたいと考えています。
介護職員として成長しながら長く働ける職場を探しており、貴施設のキャリアアップ支援に魅力を感じました。新しい環境でさらにスキルを磨き、貴施設に貢献できるよう努めたく、応募いたしました。
「給与に不満があった」とストレートに伝えず「努力が評価される環境を求めている」と言い換えるのがおすすめです。
スキルアップできないと感じて転職する場合
【例文】
前職では、日々の業務に誠実に取り組んできました。とても楽しく働いておりましたが、さらに知識や高度な介護技術を身に着け、介護職員としての専門性を強めたいと感じるようになりました。
しかし、以前の職場では研修制度やスキルアップの機会が限られていました。
私は、最新の技術やご利用者様の気持ちに寄り添うケアを学び続け、より質の高い介護を実践したいと考えています。
貴施設では、毎月の勉強会だけでなく、他の施設と協力して規模の大きな介護研修も開催しておられます。私も何度か参加させていただき、レベルの高さに感動いたしました。
これからも、認知症ケアやリハビリに関する知識を深め、ご利用者様の自立支援や穏やかな暮らしをサポートしていきたいです。
貴施設で介護に関する学びをさらに深め、ご利用者様に最適なケアを提供できるよう努めていきたいと思っております。
「スキルアップできない」とそのまま伝えず、「より質の高い介護を実践したい」と言い換えましょう。
「ご利用者様により良いサービスを提供したい」という視点も含めるとさらに好印象です。
自分に合った転職先に出会うためのチェックポイント
令和5年度「介護労働実態調査」によると、新しい職場に転職した理由として挙げられる主な理由は以下のとおりです。
- 通勤が便利
- 仕事の魅力ややりがい
- 人間関係が良い
- 労働環境が良い(残業が少ない、有給休暇をとりやすい、シフトがきつくない)
- 仕事と家庭(育児・介護)の両立を支援してくれる
優先順位は人それぞれですが、これらの条件を満たす職場であれば長く働けるでしょう。
「そうは言っても、なかなか探すのが難しい……」と感じるかと思います。
そこで本章では、簡単なチェックポイントを4つ紹介します。
【転職先のチェックポイント】
- 給与
- 労働条件
- 通勤距離
- 人間関係
1つずつ解説していきます。
給与
介護職員の給与は、基本給だけでなく、資格手当や夜勤手当で大きく変動します。事前に確認しておきましょう。
また、処遇改善加算によっても給与は変わります。令和6年6月から、これまでの処遇改善にかかる加算が一本化され、加算率の引き上げがおこなわれています。令和7年度から、2.0%のベースアップが実現するようにと整備された制度です。
処遇改善加算にはⅠ~Ⅳの区分があり、事業所が満たす要件や取り組みの内容によって加算額が変わります。可能であれば面接のときに尋ねてみましょう。
長く働くうえで、収入の確保は必須といえます。自分のスキルやキャリアを考えて、納得できる給与額か確認するのがおすすめです。
「お金のことは聞きづらいな」と感じたら、転職エージェントに聞いてもらうと良いでしょう。転職活動に関わる面倒な手続きや、応募先への質問も代行してくれます。
労働条件
労働条件もチェックしましょう。夜勤の有無や早出・遅出といった変則勤務は、ライフスタイルに大きく影響するからです。求人票や面接の場で、夜勤の頻度や勤務形態を確認するのをおすすめします。
また、有給休暇の取得率や残業の有無も、長く働くうえでは大切なポイントです。さらに、福利厚生や育児・介護支援制度が充実しているかも確認が必要です。結婚や出産、あるいは家族の介護問題に直面したときでも、無理なく働ける体制が整っている職場を選びましょう。
通勤距離
通勤距離も大切です。通勤にかかる距離や時間が長いと、少しずつストレスが溜まります。介護の仕事は身体的な負担もあるため、通いやすさも職場選びのポイントとして考えてみてください。
- 歩いて通える距離がいい
- 自転車で15分くらいの距離までならOK
- 自家用車や公共交通機関を使うので少し遠くてもいい
住んでいる地域や、交通手段によって通勤距離の許容範囲はさまざまです。車をもっている人は、マイカー通勤の可否も確認しましょう。
大きな法人では異動の可能性もあります。
異動がある場合、異動先として考えられる事業所の地域や、通勤手当の上限などもわかると安心です。
筆者が所属していた法人は地域で最も大きな法人で、異動もありました。通勤距離が伸びたため、交通手段を自転車から車に変えた人も多かったです。
人間関係
介護業界で転職を考える理由として、最も多いのが人間関係への不満です。失敗を避けるためにも、人間関係に関するリサーチは欠かせません。
求人票の内容では、人間関係の良し悪しはわかりません。内部の様子を知るには施設見学がおすすめです。普段の雰囲気や、業務の様子を実際に見れば、自分に合う職場か判断しやすいでしょう。転職先の人間関係で悩まないために、居心地の良さを見きわめる意識が大切です。
施設見学が難しい場合は、転職エージェントを介して、実際に働いている介護職員の声を教えてもらう手もあります。
介護職の転職理由に関するよくある質問
ここからは、介護職の転職理由でよくある質問に回答していきます。
転職理由を伝えるときに注意すべきことは何ですか?
転職理由を伝えるときは、嘘をつかず正直に伝えるのが鉄則です。その際、ポジティブな表現を意識しましょう。
「人間関係が悪かった」「給与が低かった」といったネガティブな理由をそのまま伝えると、面接官に悪い印象を与えかねません。
「より良い環境で成長したい」「新しいスキルを身につけたい」など、前向きな言葉に言い換えると好印象です。また、退職の理由と志望動機もセットで伝えると説得力が増します。
介護職員としてステップアップするための転職だとアピールしましょう。
異業種から介護職に転職する理由はどう伝えたらいいですか?
異業種からの転職理由を伝えるときは、介護職でしか得られないメリットや、仕事で活かせるスキルを伝えましょう。
【異業種から転職する理由の例文】
①事務職の場合
「事務職で培った注意力を活かし、ご利用者様の生活をサポートする仕事をしたいと考えました」
②営業職の場合
「コミュニケーション力を活かし、ご利用者様やご家族様と信頼関係を築く喜びを感じられる介護職を選びました」
③販売職の場合
「介護の仕事はご利用者様と直接かかわるため、接客での細やかな気配りを活かせると考えました」
異業種での経験を介護職でどう活かせるのか、具体的にアピールするのがコツです。
まとめ
介護職の転職理由は、人間関係や給与面、将来への不安などさまざまです。もし面接で転職理由を聞かれたら、嘘は言わず、ネガティブな理由をポジティブに言い換えましょう。大切なのは、転職を機に介護職員として成長したいという姿勢を伝えることです。
面接官は、あなたの人柄や仕事への意欲を知りたいと考えています。転職理由を前向きな言葉に置き換え、キャリアプランや応募先の強みと関連づけて話すと良いでしょう。
また、自分に合った転職先を見つけるには、給与や労働条件、人間関係などのチェックが必要です。なかなか自分では確認が難しい点もあるため、転職をサポートしてくれるサービスを利用するのがおすすめです。
「介護転職のミカタ」では、新しい環境への転職を考える人に向けたサポートを提供しています。施設に聞きづらい待遇面や人間関係なども、あなたに代わってしっかり調べてくれるので安心です。
希望に応じて面接にも同行してくれるので「転職理由を聞かれたらどうしよう……」と悩む必要はありません。
サービスは無料なので、気軽に連絡してみてください。
この記事を書いたのは・・・

佐藤 恵美/Webライター
保有資格:介護福祉士/社会福祉士
回復期リハビリ病棟で7年勤務したのち、社会福祉士を取得し、
生活相談員を経験。現在はフリーのWebライターとして活動中。