「AIの技術がどんどん発達しているけど、介護の仕事はなくならないの?」と不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。
AIは、正しく理解すれば不用意に恐れる必要はなく共存していけるものです。
本記事では、AI時代でも介護職員が必要とされる理由や、実際に活用されているAI・テクノロジーを紹介します。
記事を通してAIを正しく理解し、上手に共存するヒントをつかんでいきましょう。
この記事の内容
AIで介護の仕事はなくなる?
結論からお伝えすると、AIによって介護の仕事がなくなることはありません。
近年、生成AIの進化は著しく、その流れは介護業界にも広がっています。実際に、介護ソフトや介護ロボットなど、業務効率化を目的としたテクノロジーの導入が進んでいます。
こうした変化の中で、「AIによって一部の仕事がなくなるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。SNSなどでも「将来なくなる仕事」が話題になることがあり、介護職もその対象として挙げられるケースがあります。
では、なぜ「介護の仕事はAIに奪われるかもしれない」と考えられているのでしょうか。
次の項目で詳しく解説します。
AIで介護の仕事がなくなると言われる理由
介護の仕事がなくなると心配される理由のひとつは、AIによる自動化や効率化の進化です。
介護業界は慢性的な人手不足に悩まされており、それを補うツールとして導入が進められてきたのが介護向けAIです。
例えば、移乗介助をサポートする介護ロボットや、記録管理をスムーズにする介護ソフトなどがあります。
こうしたツールがさらに進化することで、人の手が必要な場面が減るのではないかと心配する人もいるのかもしれません。
AIに代替される可能性がある業務
介護はAIに奪われにくい仕事である一方、AIに代替される可能性のある業務もあります。
例えば、次のような業務です。
- 記録
- 移乗、移動
- 見守り
- 一部の話し相手
- 事務作業
これらの業務は、すでにAIが一部をサポートして運用している施設もあります。
完全にAIへ置き換えるというよりは、介護職員の管理のもとで業務をよりスムーズに進めるために活用されているといえるでしょう。
AI時代でも介護職員が必要とされる理由
AI時代でも介護職員が必要とされるのには、いくつか理由があります。
ここからは、その理由を3つ解説します。
感情に寄り添うケアはAIでは難しい
AIでは、ご利用者様の感情に寄り添ったケアをじゅうぶんにおこなうのは難しいかもしれません。
最近では技術の発達により、ある程度は寄り添うような言葉をかけられるAIも存在します。
しかし、ご利用者様の人生背景は一人ひとり異なりとても複雑です。
そのような場面で生きるのは、一般的な言葉ではなく介護職員の感覚や人生経験から生まれる関わり方でしょう。
ご利用者様のこれまでの歩みも含めて寄り添えるのは、人間である介護職員だからこそです。
状況に応じた柔軟な判断ができる
状況に応じて柔軟な判断ができることも、AI時代に介護職員が必要とされる理由の一つです。
介護現場では判断力が求められる場面が多く、ケースごとにAIが柔軟に対応するのはまだ難しい部分があります。
例えば、ご利用者様の言動から行動の背景を読み取る場面では、いくつもの仮説が立てられます。その中で重要になるのが、人間の感覚による気づきです。
「なんとなく嫌だ」といった言葉にならない不満や違和感は、人間だからこそ共感し、察知できることもあります。
AIをアドバイス役として活用することはできますが、病歴も含めて繊細な状況に置かれているご利用者様が多い介護現場では、最終的な判断は人間である介護職員が担います。
利用者様・ご家族との信頼関係を築ける
ご利用者様やご家族との信頼関係は、AIよりも介護職員のほうが築きやすいでしょう。
AIは高度な技術であり、多くの情報をもたらして私たちの選択肢を広げてくれる存在です。
しかし、AIは「ハルシネーション」と呼ばれる現象により、、事実とは異なる情報をあたかも正しいかのように提示してしまうことがあります。
このような特性があるため、現時点ではご利用者様やご家族から深い信頼を得るには不十分な面があります。介護現場では、状況や感情に寄り添いながら情報を見極めて対応する力が求められます。
そのため、最終的な判断や関わりの質という点では、人間である介護職員のほうが、ご利用者様やご家族から信頼を得やすいといえます。
介護現場で実際に活用されているAI・テクノロジー
介護現場では、すでにAIが活用されている事例がいくつかあります。
ここからは、その一部を紹介します。
介護現場に導入されたAI例
介護現場に導入されているAI機器の例を、以下にまとめました。
| 業務内容 | 導入例 |
| コミュニケーション | コミュニケーションロボット |
| 記録 | 介護ソフト、記録アプリ |
| 見守り | 見守りロボット、見守り機器 |
| その他 | 移乗サポートロボット、自動排泄処理装置など |
コミュニケーションや見守りの他、記録管理や排泄などの業務をAIが一部担っている施設もあります。
今後導入が進む可能性がある技術
今後導入が進む可能性があるのは予測型AIです。
現在でも、移乗や排泄などをサポートするAIはありますが、予測に基づいて対応するAIの導入はまだそれほど進んでいません。
しかし、AIはデータから傾向を読み取り、予測することを得意とするツールです。
今後、テクノロジーの進化によって行動履歴から傾向をつかみ、予測して対応するAIの導入が進む可能性があります。
AIによって変わる介護職員の働き方
ここからは、AIの導入により変化する介護職員の働き方を解説します。
業務負担の軽減
AIの導入により変化しやすいのが、介護職員の業務負担です。
現在導入が進んでいるAIは、業務負担の軽減を目的に開発されているものが多いためです。
例えば、現在導入されている介護系AIには次のようなものがあります。
- 移乗介助を手伝う介護ロボット
- 排泄検知や処理ができる自動排泄処理装置
- 介護記録を管理し簡単に共有ができる介護ソフト
- 離れた場所から高齢者を見守ることできる見守りロボット
これまで介護職員がおこなっていた業務の一部をAIが担うようになれば、介護現場の負担は軽減されるでしょう。
人手不足が問題視されている介護現場でも、AIをうまく活用することで無理のない運用につながります。
身体的負担の軽減
AIの導入により変化するのは、介護職員の身体的負担です。
介護現場に導入されるAIの中には、介護する側の身体的負担を軽減できるものもあるためです。
例えば、移乗・移動の一部をサポートする介護ロボットや、自動排泄処理装置などがこれにあたります。介護現場の課題の一つとして、介護職員の身体的負担の重さは長年指摘されてきました。
今後は便利な介護ロボットを活用することで、身体への負担を抑えながら働けるようになり、介護の仕事を続けやすくなるでしょう。
AI時代に活躍できる介護職員の特徴
ここからは、AI時代に活躍できる介護職員の特徴を3つ紹介します。
コミュニケーション力が高い
AI時代にも活躍できる介護職員の特徴の1つ目は、コミュニケーション力が高いことです。
感情の共有などの非定型的なやり取りは、AIには難しい人間特有の力だからです。
例えば、ご利用者様が泣いている場合、そのときの状況や人生背景などを踏まえた対応が必要になります。
ご利用者様の感情や背景に合わせた個別性の高いコミュニケーションができる介護職員は、AIには代替しにくい存在として重宝されるでしょう。
変化に柔軟に対応できる
AI時代にも活躍できる介護職員の特徴の2つ目は、変化に柔軟に対応できることです。
AIの発達により、今後は介護施設の運用方法も変わっていく可能性があります。その変化に対応できる柔軟性が、これからはますます求められるでしょう。
例えば、新しいAI機器の導入を嫌がるのではなく受け入れて使いこなそうとする姿勢です。
これからは変化を恐れず、常に新しいものを前向きに受け入れられる人が活躍しやすい時代になるでしょう。
学び続ける意欲がある
AI時代に活躍できる介護職員の特徴の3つ目は、学び続ける意欲があることです。
今後AIがさらに進化すれば、過去の知識やスキルだけで長期的に活躍し続けるのは難しくなるかもしれません。
なぜなら、求められるスキルは変わっていく可能性があるからです。
例えば、介護ソフトを活用しながら速やかに職員へ情報共有できるフローや動線をつくることなどが挙げられます。
AIをただ使うだけでなく、業務改善にどう生かすかを学び続けられる人は今後も活躍しやすいでしょう。
AI時代にとっておきたい介護の資格
AI時代だからこそ、取得しておきたいのが介護の資格です。
ここからは、特におすすめしたい3つの資格を紹介します。
介護福祉士
AI時代だからこそとっておきたい資格の一つが、介護福祉士です。介護福祉士は、AI時代でも就職に有利な資格といえます。
介護技術だけでなく、高齢者の疾患や心理特性などを専門的に学んだ人が取得できる資格であるためです。
そのため、介護福祉士を持っていることで一定の高齢者理解や介護ケアのスキルがあることをアピールできるでしょう。
AI時代になっても、介護福祉士を持っているだけで就職時に一定の信用を得られる可能性があります。
ケアマネジャー
AI時代にとっておきたい資格として、ケアマネジャーも挙げられます。
ケアマネジャーは、AIが進化しても最終的な判断者として重要な役割を担う可能性が高いからです。
確かに今後のAIの進化によって、ケアマネジャーが行ってきた業務の一部は簡易化されるかもしれません。
しかし、記事内でもお伝えしているようにAIはハルシネーションを起こすことがあります。
そのため、最終的に介護ケアの方針を決定するケアマネジャーの存在は不可欠です。
AI時代でも福祉の仕事を続けたいと思ったら、ケアマネジャーの取得を目指すのもひとつの選択肢でしょう。
実務者研修
AI時代だからこそ、実務者研修の取得もおすすめです。
実務者研修は介護系資格の中では上位資格のひとつとされており、将来的には介護福祉士の取得も目指せます。
介護福祉士と同様に、一定レベルの知識やスキルがあることの証明にもなります。
また、一定のカリキュラムを修了すれば資格取得につながるため、比較的チャレンジしやすい点も魅力です。
介護系資格をまず取りたいと考えている方にもおすすめです。
介護職員がAIと共存していくためのポイント
ここからは、介護職員がAIと共存していくためのポイントを解説します。
AIに任せる業務と人が担う業務を理解する
介護職員がAIと共存していくためには、AIに任せる業務と人が担う業務を分けて考えることが大切です。
なぜなら、AIには仕組み上の限界があり、過信しすぎると大きなミスに繋がることがあるからです。
例えば、ハルシネーションはその一例です。
事実に基づかない内容をもっともらしく生成するため、疑わずに任せきりにしてしまうとトラブルにつながる可能性があります。
AIに任せるのは情報収集や整理などにとどめ、最終的な判断は人間である介護職員が担うなど役割をはっきりとわけておく必要があります。
テクノロジーに対する知識を身につける
AIと共存していくためには、テクノロジーに対する知識も身につけておきたいところです。
AIの特性やリテラシーを理解しておくことで、情報漏洩などのトラブルを防ぐことにつながります。
例えば、AIに質問するときに不必要な個人情報を入力しないといった視点は重要です。また、リテラシーがあればより効率的にAIを活用できるようになります。
ご利用者様への介護ケアの質をさらに高めるためにも、AIをよく理解してうまく活用していけるとよいでしょう。
違和感やトラブルに気づく力を養う
AIと共存するうえで大切なのは、違和感やトラブルに気づく力を養うことです。
生成AIは完璧なものではなく、ときに誤った出力をすることがあります。そのズレに早く気付けるかどうかがトラブルの拡大防止につながります。
例えば、AIの挙動がいつもと違うと感じたときに、その小さな異変を放置せず、職員に相談したり業者へ連絡するなどの対応ができることが理想です。
AIと共存する中でトラブルが起こる可能性はありますが、その際も焦らず適切に対応できるようにしておきましょう。
まとめ
AIは今後もさらに発達し、介護業界にもさまざまな変化をもたらしていくと考えられます。しかし、必要以上に不安に感じる必要はありません。
AIをうまく活用することで、業務の効率化や負担の軽減につながり、介護職員にとっても働きやすい環境づくりが進んでいくでしょう。
また、AIと人がそれぞれの強みを生かして関わることで、ご利用者様に対してより質の高い介護ケアを提供できるようになります。
これからのAI時代においても、介護職員は欠かせない存在です。AIと共存しながら、今よりも無理のない働き方ができる仕事として、介護の価値はさらに高まっていくといえるでしょう。
介護の仕事に興味をもった方は、新しい一歩として検討してみるのもひとつの選択肢です。
「介護転職のミカタ」では、AIを活用して業務改善を進めている施設や、働きやすさに配慮された求人も多数取り扱っています。
情報収集からでも構いませんので、介護職特化のエージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いたのは・・・

中村 亜美/Webライター
保有資格:介護福祉士
特別養護老人ホームでユニットリーダーとして11年程勤務。
その後はフリーライターとして活動中。在宅介護者や介護事業者、介護職員向けのコラム・取材記事を執筆している。
