認知症とは?4つの種類と特徴を一覧で解説|介護現場で役立つケアのポイントも紹介

認知症は高齢者に多くみられる疾患であり、介護施設では認知症のある利用者様を支援する機会が年々増えています。しかし、「認知症にはどのような種類があるの?」「アルツハイマー型とレビー小体型では何が違うの?」「介護ではどのように接すればよいの?」と疑問を感じる方もいるでしょう。

認知症は種類によって原因や症状、適切なケア方法が異なるため、一人ひとりの状態に合わせた対応が欠かせません。また、介護職員には専門的な知識だけでなく、ご本人の気持ちに寄り添う姿勢も求められます。

本記事では、認知症の4つの代表的な種類と特徴を比較しながら、それぞれの介護のポイントをわかりやすく解説します。介護現場で実践したい認知症ケアの基本や、スキルアップに役立つ資格・おすすめの職場についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

この記事の内容

##認知症とは?

認知症とは、さまざまな病気や障害によって脳の働きが低下し、記憶力・判断力・理解力などの認知機能が継続的に低下することで、日常生活に支障をきたす状態を指します。加齢による物忘れとは異なり、食事をしたこと自体を忘れる、時間や場所が分からなくなるなど、生活への影響が大きいことが特徴です。

また、認知症にはアルツハイマー型認知症や血管性認知症など複数の種類があり、それぞれ原因や症状、適したケア方法が異なります。

介護職員は病気への理解を深めるだけでなく、ご本人の不安や気持ちに寄り添い、一人ひとりの状態に合わせた支援も欠かせません。
参考:日本認知症学会「認知症とは?認知症をきたす主な病気」

認知症への理解を深めるには、予防への取り組みを知ることも大切です。介護現場で実践されている認知症予防の事例については、以下の記事をご覧ください。

認知症の4つの種類と特徴を一覧表で比較

認知症にはいくつかの種類があり、原因や現れやすい症状、介護で意識したいポイントが異なります。まずは、代表的な4種類の特徴を確認してみましょう。

認知症の種類    主な原因特徴
アルツハイマー型認知症脳の変性患者数がもっとも多く、記憶障害が目立つ
血管性認知症脳血管障害段階的に症状が進行しやすい
レビー小体型認知症レビー小体の蓄積幻視や認知機能の変動がみられる
前頭側頭型認知症前頭葉・側頭葉の変性行動や人格の変化が目立つ

認知症は同じ診断名であっても、症状の現れ方や進行の程度には個人差があります。そのため、種類ごとの特徴を理解したうえで、ご本人の状態に合わせたケアを行うことが大切です。

ここからは、それぞれの認知症について、原因や症状、介護のポイントを詳しく解説します。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も患者数が多い種類です。ここでは、アルツハイマー型認知症の原因や症状、介護のポイントについて解説します。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβやタウタンパク質が蓄積し、神経細胞が徐々に障害されることで発症すると考えられています。加齢が最大のリスク要因ですが、遺伝的要因や生活習慣なども発症に関わる疾患です。

アルツハイマー型認知症の代表的な症状

アルツハイマー型認知症の初期段階では、新しい出来事を忘れるといった記憶障害が目立ちます。進行すると、時間や場所が分からなくなる見当識障害や、判断力・理解力の低下がみられ、日常生活に支障をきたす場面が増えていく恐れがあります。

アルツハイマー型認知症の介護のポイント

間違いを指摘したり否定したりするのではなく、ご利用者様の気持ちに寄り添った対応を心掛けましょう。生活リズムを整え、安心して過ごせる環境を整えることも、不安や混乱の軽減につながります。

アルツハイマー型認知症の方をケアした体験談

筆者が担当していたアルツハイマー型認知症のご利用者様は、「財布を盗まれた」「家に帰りたい」と不安を口にされることがありました。その際に否定するのではなく、「一緒に探しましょう」「ご家族に確認してみますね」と気持ちを受け止めることで、ご利用者様は徐々に落ち着きました。不安の背景に寄り添う、認知症ケアの基本姿勢の大切さを実感した経験です。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で発症する認知症です。血管性認知症の原因や症状、介護のポイントについても解説するので、認知症ケアの参考にしてください。

血管性認知症の原因

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などによって脳の血流が障害され、神経細胞がダメージを受けることで発症します。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、発症リスクを高める要因とされています。

血管性認知症の代表的な症状

記憶障害に加え、判断力や注意力の低下なども主な症状です。また、脳の障害を受けた部位によっては、手足の麻痺や歩行障害、言語障害などの身体症状を伴うこともあります。症状が段階的に進行しやすいことも、血管性認知症の特徴です。

血管性認知症の介護のポイント

認知症の症状には個人差があるため、できることと介助が必要なことを見極めることが大切です。残っている能力を活かしながら支援し、転倒予防や再発予防のために体調や生活習慣の変化なども注意深く観察しましょう。

血管性認知症の方をケアした体験談

筆者が担当していた血管性認知症のご利用者様は、脳梗塞の後遺症で右半身に麻痺がありました。寝たきりでコミュニケーションも難しかったのですが、こちらの声かけに頷いたり瞬きをしたり反応を示していました。返答はなくても、こちらから積極的にコミュニケーションを図ることの大切さを学べた経験です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、認知機能の低下に加え、幻視やパーキンソン症状がみられることが特徴の認知症です。アルツハイマー型や血管性などとは異なるレビー小体型認知症の原因や症状、介護のポイントについて見ていきましょう。

レビー小体型認知症の原因

レビー小体型認知症は、脳内の神経細胞に「レビー小体」と呼ばれる異常なタンパク質が蓄積することで発症します。神経細胞の働きが低下し、認知機能だけでなく運動機能や自律神経にも影響を及ぼします。

レビー小体型認知症の代表的な症状

実際には存在しない人や動物が見える幻視や、日によって認知機能の変動が目立つことが特徴です。また、手足が震えたり、動作が遅くなったりするといった、パーキンソン症状が現れることもあります。

レビー小体型認知症の介護のポイント

レビー小体型認知症のケアでは、幻視を「見えていない」と否定せず、ご本人の不安な気持ちに寄り添うことが大切です。また、転倒しやすい傾向があるため、室内環境を整え、安全に生活できるよう配慮しましょう。

レビー小体型認知症の方をケアした体験談

筆者が担当していたレビー小体型認知症のご利用者様は、幻視がある方で、よく「天皇様がお部屋にいるのでお茶を出してあげて」と言われました。その際は幻視の内容を頭ごなしに否定せず、「お部屋にどなたかいらっしゃるように見えるのですね」と不安な気持ちを受け止めました。そのうえで、ご本人が安心できるように声をかけ、環境を整えました。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、記憶障害よりも行動や人格の変化が目立ちやすい認知症です。前頭側頭型認知症の原因や症状、介護のポイントについて解説するので、今後の認知症ケアの参考にしてください。

前頭側頭型認知症の原因

前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉の神経細胞が障害され、脳が萎縮することで発症します。詳しい原因は解明されていませんが、一部の患者では遺伝的要因が関与すると考えられています。

前頭側頭型認知症の代表的な症状

社会的なルールを守れなくなる、同じ行動を繰り返す、感情の変化が乏しくなるなど、行動や人格の変化が目立ちます。また、言葉が出にくくなるなどの言語障害がみられる場合もあるでしょう。

前頭側頭型認知症の介護のポイント

困った行動と決めつけるのではなく、病気による症状であることを理解して対応することが重要です。無理に行動を制止するのではなく、生活リズムを整えながら安心して過ごせる環境づくりを心がけましょう。

前頭側頭型認知症の方をケアした体験談

筆者が担当したご利用者様は、同じ時間になると施設内を何度も歩き回ることがありました。当初は制止することもありましたが、決まった時間に散歩を取り入れることで落ち着いて過ごせるようになりました。行動を抑えるのではなく、背景を理解して対応することの大切さを学んだ経験です。

介護職が実践したい認知症ケアの基本

認知症ケアでは、症状だけでなく、ご利用者様の気持ちや生活背景を理解したうえで、一人ひとりに合った対応をすることが大切です。ここでは、介護職として日々の支援で意識したい認知症ケアの基本について解説します。

否定せず本人の気持ちを受け止める

否定されることで不安や混乱が強まり、興奮につながる場合があります。まずは「そうだったんですね」「心配でしたね」と気持ちを受け止め、安心してもらえるような声掛けを意識することが欠かせません。

安心して過ごせる環境を整える

認知症の方は環境の変化に不安を感じやすい傾向があります。生活リズムをできるだけ一定に保ち、居室や共有スペースなどをわかりやすく整えることで、混乱や転倒の予防につながります。安心して過ごせる環境づくりは、認知症ケアの基本の一つです。

ご利用者様のペースやできることを尊重する

介護を急ぎすぎたり手伝いすぎたりすると、ご利用者様の不安や自信の喪失につながります。時間がかかってもご本人のペースを尊重し、自分でできることは見守りながら支援しましょう。できることを続けてもらうことは、認知機能や身体機能の維持にも役立ちます。

一人で抱え込まず周囲と連携する

認知症ケアでは、介護職員だけで対応しようとするのは大変です。ご家族や医師、看護師、ケアマネジャーなどと情報を共有し、チームで支援することが大切です。ご利用者様の様子や変化を共有することで、より適切なケアを提供できます。

認知症の種類に関わらず個別性を大切にする

同じ種類の認知症でも、症状や生活歴、性格は一人ひとり異なります。そのため、「アルツハイマー型だから」「レビー小体型だから」と決めつけるのではなく、ご利用者様の状態をよく観察し、その人に合ったケアを考えることが重要です。個別性を尊重した支援が、安心した生活につながるでしょう。

認知症ケアをもっと学びたい介護職員におすすめの資格

認知症ケアの知識や技術は、経験だけでなく資格や研修を通じて体系的に学ぶことも大切です。ここでは、認知症ケアの実践力向上につながる代表的な資格・研修などを見ていきましょう。

実務者研修

実務者研修は、介護職として必要な知識や技術を体系的に学べる資格です。認知症の基礎知識や認知症の方へのコミュニケーション方法、介護技術なども学べるため、未経験者から経験者まで幅広い介護職員におすすめです。

実務者研修の取得を検討している方は、以下の記事が参考になります。

介護福祉士

介護福祉士は、介護分野で唯一の国家資格です。認知症ケアに関する専門知識だけでなく、利用者様一人ひとりに合わせた支援方法や多職種との連携についても学べます。現場での信頼性向上やキャリアアップを目指す方にもおすすめです。

介護福祉士の取得方法について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

認知症ケア専門士

認知症ケア専門士は、認知症ケアに特化した民間資格です。認知症の症状や心理、ケア技術について専門的に学び、より質の高い支援を目指せます。認知症ケアに強みを持ちたい介護職員に適した資格です。
参考:一般社団法人日本認知症ケア学会「認知症ケア専門士」

認知症介護実践者研修

認知症介護実践者研修は、認知症介護の実践力向上を目的とした研修です。事例検討や演習を通じて、利用者様の状態に応じたケア方法を学べます。グループホームのような認知症対応型サービスで働く介護職員におすすめの研修です。
参考:認知症介護情報ネットワーク「認知症介護実践研修情報」

認知症ケアをもっと学びたい介護職員におすすめの職場

認知症ケアの経験を積みたい場合は、認知症の利用者様と関わる機会が多い職場を選ぶことも大切です。施設ごとに役割やケアの内容は異なるため、自分が身に付けたいスキルに合った職場を選びましょう。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

グループホームは、認知症の方が少人数で共同生活を送る施設です。ご利用者様一人ひとりとじっくり関わりながら、生活全般を支援できるため、認知症ケアを実践的に学びたい方に適しています。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームには認知症の利用者様も多く入所しており、身体介護と認知症ケアの両方を経験できます。重度の認知症の方と関わる機会も多く、幅広い介護スキルを身につけたい方におすすめです。

以下の記事では、実際に特別養護老人ホームで働いた介護職の経験をもとに、仕事内容や給与についてなどの情報をわかりやすくまとめています。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームでは、自立している方から認知症の方まで、さまざまな利用者様を支援します。認知症ケアだけでなく、接遇や個別ケアなども学びやすく、多様な経験を積める職場です。

有料老人ホームの仕事内容や向いている人の特徴など、詳しくは以下の記事をご覧ください。

認知症に関するよくある質問

最後に、認知症についてよくある疑問を解決しましょう。認知症の種類や治療、遺伝との関係など、介護職として知っておきたい基本的なポイントをわかりやすく解説します。

一番多い認知症は?

最も多い認知症はアルツハイマー型認知症です。認知症全体の半数以上を占めるとされており、初期には新しい出来事を忘れるなどの記憶障害が目立ちます。そのほか、血管性認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
参考:日本認知症学会「認知症とは?認知症をきたす主な病気」

認知症は治る?

現在の医療では、多くの認知症を完全に治すことは難しいとされているのが実情です。ただし、薬物療法やリハビリテーション、適切な介護によって、症状の進行を緩やかにしたり、生活の質(QOL)を維持したりすることは期待できます。

また、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)や軽度認知症では、脳内のアミロイドβに働きかけるレカネマブ(レケンビ®)やドナネマブ(ケサンラ®)が使用される場合があります。ただし、投与には検査結果や健康状態などの条件があるため、事前に確認しましょう。
参考:厚生労働省「抗アミロイドβ抗体薬について」

認知症は遺伝する?

認知症の多くは遺伝だけが原因ではなく、加齢や生活習慣、環境など複数の要因が関係すると考えられています。一部の若年性アルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症では遺伝子の影響が認められることがありますが、家族に認知症の方がいるからといって必ず発症するわけではありません。

認知症と加齢によるもの忘れの違いは?

加齢によるもの忘れは、体験の一部を忘れることが多く、ヒントがあれば思い出せる場合があります。一方、認知症では体験そのものを忘れてしまい、日常生活に支障をきたすことが特徴です。もの忘れの程度だけでなく、生活への影響があるかどうかも重要な判断ポイントです。

認知症の方にやってはいけない対応は?

認知症の方に対して、頭ごなしに否定したり、叱ったり、無理に訂正したりする対応は避けましょう。 ご利用者様にとっては現実として認識している出来事を否定されると、不安や混乱、不信感につながることがあります。

筆者も現場で認知症ケアに携わる際は、上記のようなやってはいけないことを避けることで、穏やかに過ごしていただけていると感じています。

まとめ

認知症は、アルツハイマー型認知症・血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症など種類によって原因や症状、必要なケアが異なります。そのため病名だけで判断するのではなく、ご利用者様の生活歴や性格、現在の状態を理解し、一人ひとりに合わせた支援を行うことが大切です。

認知症ケアの知識や経験を深めたい方は、グループホームや特別養護老人ホームなど、認知症ケアに力を入れている職場を選ぶことで、より実践的なスキルを身につけられるでしょう。

介護転職のミカタでは、認知症ケアを学べる職場や資格取得支援制度が充実した求人も多数ご紹介しています。認知症ケアの専門性を高めたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いたのは・・・

津島 武志/Webライター

保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/社会福祉士
業界17年目の現役介護職兼ケアマネージャー。
さまざまな介護系メディアでWebライターとしても活動し、多くの検索上位記事を執筆。
介護職以外に転職メディア「介護士の転職コンパス」や自身のライフスタイルや介護系コンテンツを発信するYouTubeチャンネル「かいご職TV」等を運営。