特別養護老人ホームの仕事内容|現役介護福祉士が給与やシフトも解説

特別養護老人ホームは、常に介護が必要な方に、食事や排泄などの日常生活上の支援を提供する入所施設です。
特別養護老人ホームの介護職員に興味のある方のなかには、仕事内容やご利用者様の特徴などがわからないという方もいるでしょう。

本記事では、特別養護老人ホームの仕事内容や基礎知識について解説しています。
働く際に確認しておきたいポイントについても触れているので、特別養護老人ホームを転職先として検討したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

特別養護老人ホームの仕事内容

特別養護老人ホームや、食事や排泄などの身体介助だけでなく、生活全般のお手伝いをする施設のため、業務範囲は多岐にわたります。
ここでは、主な仕事内容と、日勤・夜勤それぞれのスケジュールについて解説します。

主な仕事内容

特別養護老人ホームの介護職員の主な仕事内容は以下のとおりです。

身体介護食事や排泄、入浴、車椅子への移乗介助など直接利用者の体に触れておこなうため、専門的なスキルが求められる
生活支援掃除や洗濯、買い物、衣類の整理などの家事や通院、役所での手続きなど
記録ケース記録、ケアプラン実施状況、食事や排泄などの実施記録
レクリエーション施設で行うレクリエーションの企画・運営日々の活動だけでなく、母の日やクリスマスなどの季節行事もおこなう
家族対応面会時に様子報告、事故報告や物品を依頼するための電話連絡など

これらに加えて、事故対策や身体拘束・虐待に関する各種委員会活動にも参加する必要があります。
また、昨今は新型コロナウイルス対策として、手洗いやマスク着用、施設内の消毒など、より徹底した感染症対策が求められています。

家族との連絡については、施設によっては生活相談員が主に担当することもあるため、職種間での密な情報共有と連携が欠かせません。

日勤のスケジュール

特別養護老人ホームの介護職員の一般的な日勤のスケジュールは以下のとおりです。

時間仕事内容
9:00出勤、情報確認、朝食の片づけ
9:30申し送り
9:45排泄介助
10:30水分補給
11:00離床、レクリエーション
12:00食事介助、口腔ケア
13:00休憩
14:00記録入力
15:00おやつ介助
15:30カンファレンス
16:30申し送り、記録入力
17:00離床、夕食準備
17:30食事介助
18:00退勤

施設によってシフトの組み方はさまざまですが、日勤の場合、他に早番や遅番、非常勤スタッフがおり、入浴介助やその他の業務を分担しておこなっています。

夜勤のスケジュール

続いて、夜勤のスケジュールを見てみましょう。

施設によっては22時ごろから朝7時ごろまでのショート夜勤を導入している場合もありますが、ここでは従来のロング夜勤のスケジュールを紹介します。

時間仕事内容
16:00出勤、申し送り
17:30離床、夕食準備
17:30食事介助、口腔ケア
18:30就寝介助
20:00服薬介助、フロア清掃
21:00消灯、巡回
22:00夜勤者の夕食
23:00巡回、排泄介助
1:00巡回
2:00休憩
4:00巡回
5:00排泄介助
6:00起床介助、水分補給
7:00申し送り、朝食準備、食前薬介助
7:30食事介助、服薬介助
8:30記録入力
9:30退勤

特別養護老人ホームの夜勤は、看護師は勤務せず、介護職員のみになる施設が多いです。
そのため、事故や体調不良が起きた際は、他のフロアのスタッフと相談しながら対応を決めています。
また、介護職員だけで判断できない場合はオンコールで看護師や担当スタッフに連絡し、対応の相談をおこないます。

特別養護老人ホームで働くスタッフ

ここでは、特別養護老人ホームで働くスタッフの職種と役割について簡単に解説します。
以下の表は、特別養護老人ホームが配置しなければならない職種の一覧です。

職種員基準主な仕事内容
医師必要な数利用者の健康管理と療養上の指導
生活相談員利用者100人に対して1人以上利用者やその家族への相談援助
介護職員利用者3人に対して介護職員及び看護職員が1人以上利用者の日常生活上の世話
看護職員介護職員同様だがさらに以下の基準がある
  • 利用者30人まで・・・1人同50人まで・・・2人同130人まで・・・3人同130人以上・・・3人+利用者50人ごとに1人
  • 利用者の健康管理
    栄養士または
    管理栄養士
    1人以上利用者の食事・栄養管理
    機能訓練指導員1人以上身体機能や生活機能の維持・向上のためにリハビリをおこなう
    介護支援専門員利用者100人に対して1人以上ケアプランの作成、管理
    引用:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第2条

    これらの職種が、それぞれの専門性を発揮し、一人ひとりのご利用者様の生活を支えています。
    他にも、歯科衛生士のような配置義務のない職種を採用している施設もあります。
    また、食事の提供を給食会社に委託している施設が多いですが、自前のスタッフで調理して提供している施設の場合は、調理員の配置も必要です。

    特別養護老人ホームで働くにあたって必要な基礎知識

    働く場所を決める際に、仕事内容だけでなく、どんな背景のある職場なのかを理解することが大切です。
    本章では、特別養護老人ホームの基礎知識について解説していきます。

    特別養護老人ホームの特徴

    特別養護老人ホームは、常時介護が必要な高齢者のための公的な入所施設です。
    24時間体制で介護サービスを提供し、食事・排泄・入浴などの生活全般のケアをおこないます。

    民間の介護施設と比べて利用料が安価なのが特徴で、入所には要介護3以上という条件があります。
    ご利用者様の終の棲家となることも多く、長期的な関係性を築きながら介護を提供できる環境です。

    ユニット型と従来型がある

    特別養護老人ホームには、ユニット型と従来型の2種類があります。

    • 10人程度の少人数グループで生活する
    • なじみの関係で個別ケアを重視する
    • 全室個室
    • プライバシーが確保されているが、居室代は従来型より高い
    • 個別ケアを提供しやすいが、スタッフが自分一人になることもある
    ユニット型
    特別養護老人ホーム
  • 10人程度の少人数グループで生活する
  • なじみの関係で個別ケアを重視する
  • 完全個室
  • プライバシーが確保されているが、居室代は従来型より高い
  • 個別ケアを提供しやすいが、スタッフが自分一人になることもある
  • 従来型
    特別養護老人ホーム
  • 4人部屋が中心の多床室
  • 2人部屋や個室もある人の気配がある方がいい人にはよい
  • ユニット型よりも居室代が安い
  • 時間ごとに業務が決まっていることが多いが、ケアが画一的になりやすい
  • どちらの形態もそれぞれ特徴があるため、職場を選ぶ際は、自分がどういう働き方をしたいかによって選択するのがおすすめです。

    ご利用者様の特徴

    特別養護老人ホームのご利用者様は、原則要介護3以上の高齢者が対象です。
    脳梗塞後遺症や骨折、パーキンソン病などの身体的な障害を抱える方、認知症やうつ病といった精神疾患がある方など、複数の疾患を併せ持つケースが一般的です。

    そのため、食事・排泄・入浴などあらゆる場面で全面的な介助が必要となり、介護職員の専門的なスキルと十分な介助量が求められます。
    また、施設によって対応できる医療体制が異なり、吸引や経管栄養など医療依存度の高い方の受け入れを制限している施設もあります。

    特別養護老人ホームの介護職員として働く3つのメリット

    ここでは、特別養護老人ホーム介護職員として働くメリットについて、以下の3つを解説します。

    • 一人のご利用者様に長期間関われる
    • スキルが身につく
    • キャリアアップを目指せる

    ひとつずつ見ていきましょう。

    一人のご利用者様に長い期間関われる

    特別養護老人ホームの大半は、終の棲家として看取りまでケアできる施設のため、一人のご利用者様に長期間関わることができます。

    例えば介護老人保健施設は、在宅復帰を目指す施設のため、入所期間は原則3ヶ月程度、グループホームの場合は認知症の進行や身体機能の低下によって退所となることもあります。

    特別養護老人ホームの場合は、入所期間に制限はないため、一人ひとりの人生に寄り添った介護を提供できます。

    スキルが身につく

    入所の対象が要介護3以上の方のため、食事・排泄・入浴などに全面的な介助を必要とする方が多く、専門的な介護技術が日々の業務で自然と身についていきます
    さまざまな症状や状態の方への対応経験を積むことで、確実に介護スキルを向上させられます。

    キャリアアップを目指せる

    特別養護老人ホームは無資格でも働き始められます。
    また、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士と段階的に資格を取得することでキャリアアップが可能です。
    資格取得支援制度を設けている施設も多く、将来的にはユニットリーダーや主任として活躍することも目指せるでしょう。

    特別養護老人ホームの介護職員として働くデメリット3つ

    特別養護老人ホームで働く際には、メリットだけでなくデメリットもあります。

    ここでは、以下の3つのデメリットについて解説します。

    • 身体的・精神的にきつい
    • 不規則な生活になる
    • 慢性的な人手不足で育成が疎かになる

    身体的・精神的にきつい

    特別養護老人ホームには要介護度の高いご利用者様が多いため、移乗や入浴介助など、スタッフの体に負担のかかる作業が日常的に発生します。
    また、看取りケアや急な体調変化への対応などで、精神的にストレスを感じることもあります。
    そのため、休日はしっかり休む、気分転換するなどして、心も身体もリフレッシュさせる工夫が必要です。

    不規則な生活になる

    特別養護老人ホームは24時間体制の施設のため、早番・日勤・遅番・夜勤といったシフト制での勤務となります。
    勤務時間が日によって異なるため、規則正しい生活リズムを保つことが難しく、休日も土日に限らないため、家族や友人との予定を合わせにくいという課題があります。

    慢性的な人手不足で育成が疎かになる

    介護業界全体の人手不足を反映し、多くの施設が派遣スタッフや外国人労働者に頼らざるを得ない現状があります。
    なかには、カイテクやタイミーといった単発アルバイトに頼らざるを得ない施設も増えており、人員不足により新人職員への教育体制が十分に整っていない施設もあります。
    採用の面接の際は、施設の雰囲気を確認するとともに、新人研修の体制や入職後の育成環境について質問してみるのも良いでしょう。

    特別養護老人ホームで働く前におさえる3つのポイント

    特別養護老人ホームで働く際のメリットでメリットを理解したうえで、働く前におさえておきたいポイントについて解説します。

    一定の介護技術が求められる

    特別養護老人ホームには要介護3以上の方が入所されているため、食事・入浴・排泄など専門的な介護技術が必要となります。
    ただし、入職時から完璧な技術は求められておらず、多くの職員は日常業務をこなしながら徐々にスキルを習得していきます。

    夜勤がある

    特別養護老人ホームは24時間体制で介護サービスを提供する施設のため、正規職員の場合、夜勤は避けられない業務のひとつです。
    回数にすると1ヶ月に4〜6回程度の夜勤があることが多いでしょう。
    夜勤業務があると生活が不規則になるため、日頃の健康管理が大切になります。

    24時間体制で介護サービスを提供する施設のため、夜勤は避けられない業務の一つです。通常、月に4〜6回程度の夜勤があり、昼夜逆転の生活リズムになることもあるため、規則正しい生活習慣と自己管理能力が重要になります。

    無資格でも働けるが、資格をとるのがおすすめ

    無資格でも働き始めることは可能ですが、資格保有者は業務の幅が広がり、給与面でも優遇されます
    働き始めるときには無資格でも、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修、介護福祉士へとステップアップすることで、資格手当がつくだけでなく、より専門的なキャリアを築くことも可能です。

    特別養護老人ホームの介護職員の給与

    介護職員は給料が低いと社会的に認識されていますが、実際の給与はどの程度なのでしょうか。
    本章では、特別養護老人ホームで働く介護職員の給与や主な手当について解説します。

    特別養護老人ホームで働く介護職員の平均給与

    厚生労働省がおこなっている調査によると、特別養護老人ホームで働く常勤の介護職員の平均給与は以下のとおりです。

    平均給与348,040円
    介護福祉士の場合360,840円
    無資格者の場合291,940円
    参考:厚生労働省 令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(P157)

    国は介護人材確保のため介護職員等処遇改善加算を導入しており、基本給や手当の引き上げを進めています。
    これにより、介護職員の待遇は改善傾向にあります。

    なお、介護職員の年収に関する記事は、以下の記事を参照してください。

    介護職員の平均年収は?年収アップの6つの心得を解説!

    介護職員の主な手当

    特別養護老人ホームの介護職員に支給される手当には以下のようなものがあります。

    • 資格手当
    • 夜勤手当
    • 通勤手当
    • 住宅手当
    • 扶養手当
    • 処遇改善手当

    施設独自に手当を設定している場合もあるため、入職の前に確認できると良いでしょう。

    まとめ

    本記事では、特別養護老人ホームの仕事内容や、働く前に理解しておきたい基本知識やメリットデメリットなどを解説しました。
    特別養護老人ホームの特徴を理解して働くことで、スキルアップやキャリアアップを見込んだ働き方ができるでしょう。

    自分に合った施設探しをするには、転職支援サイトを活用するのもひとつの方法です。
    「介護転職のミカタ」では、6万件の求人を保有しています。
    専門のコンサルタントが施設探しから入職までのサポートをしてくれるため、安心して転職活動を進められます。

    サービス利用は無料なので、まずは登録してみるのはいかがでしょうか。

    この記事を書いたのは・・・

    さとひろ/Webライター

    保有資格:ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師
    介護業界で22年の経験をもつ、特別養護老人ホームの現役ケアマネジャー兼生活相談員。介護職員・ケアマネジャー・生活相談員としての経験をもとにわかりやすい記事を執筆します。