実務者研修の取り方を分かりやすく解説!取得するメリットや受講方法も紹介

「介護福祉士実務者研修はどうすれば受講できる?」
「介護福祉士実務者研修を受けたいけど、誰でも受けられる?」
このような疑問を抱えている方のために、本記事では介護福祉士実務者研修の受講方法や、資格取得のための条件などを分かりやすく解説します。

実際に受講した筆者の経験も交えながら、費用や初任者研修との違いも紹介します。受講しようか迷っている方は参考にしてください。

介護福祉士実務者研修とは

介護福祉士実務者研修は、質の高い介護サービス供給のために作られた介護資格です。
一般的には、「実務者研修」と省略して呼ばれることが多いです。

介護福祉士実務者研修は国家資格ではないため、無資格からでもカリキュラムを修了することで取得することができます。
国家資格の介護福祉士取得にも必要な資格になりますので、介護業界でキャリアを形成していくのであれば、取得して損はないでしょう。

介護福祉士実務者研修の取り方は?

介護福祉士実務者研修を取得するために知っておくべき内容は、以下の4つです。

  • 受講に必要な条件
  • 受講時間
  • カリキュラム
  • 費用

本章でそれぞれ解説していきます。

受講に必要な条件

介護福祉士実務者研修の受講に難しい条件はありません。無資格の方や、介護未経験の方でも受講可能です。

ただし、介護福祉士実務者研修の内容が難しいと感じる方も少なくありません。理由はカリキュラムの充実度にあります。
介護福祉士実務者研修は、介護士として働くために必要な知識や技術、考え方や制度などをより詳しく学べます。内容の専門性が高いため、知識や経験がない状態で受講すると理解するのに時間を要する可能性があります。
可能であれば、他の介護資格を先に取得するか、介護現場で働いてから受講すると、より理解が深まるかもしれません。

ご自身に合った方法で受講することをおすすめします。

受講時間

介護福祉士実務者研修は無資格者の場合、450時間の受講が義務付けられています。介護職員初任者研修、もしくはヘルパー2級を取得している場合は、320時間の受講で取得できます。

受講の方法として、通信コースと通学コースの2パターンから選ぶことが可能です。筆者は通学メインのコースを選択しました。疑問に感じたことを直接聞けたため、今でも仕事に活かされています。

スクールによっては受講を長期間で設けるものや、短期間で集中的に受講できるコースなど、多岐にわたるコースが用意されています。ご自身のライフスタイルに合ったスクールを選びましょう。

カリキュラム

介護福祉士実務者研修のカリキュラムは複数に分かれています。無資格者が取得する場合のカリキュラムは以下の内容です。

内容受講時間
人間の尊厳と自立5時間
社会の理解Ⅰ5時間
社会の理解Ⅱ30時間
介護の基本Ⅰ10時間
介護の基本Ⅱ20時間
コミュニケーション技術20時間
生活支援技術Ⅰ20時間
生活支援技術Ⅱ30時間
介護過程Ⅰ20時間
介護過程Ⅱ25時間
介護過程Ⅲ(スクーリング)45時間
発達と老化の理解Ⅰ10時間
発達と老化の理解Ⅱ20時間
認知症の理解Ⅰ10時間
認知症の理解Ⅱ20時間
障害の理解Ⅰ10時間
障害の理解Ⅱ20時間
こころとからだのしくみⅠ20時間
こころとからだのしくみⅡ60時間
医療的ケア50時間
※「医療的ケア」は50時間とは別に演習を修了する必要があります。

通信で学ぶ場合、介護過程Ⅲ(講義と演習)医療的ケアは必ず教室で受講する必要があります。他の受講配分は、スクールごとに違いがあるため、チェックしてみてください。

費用

介護福祉士実務者研修の受講にかかる費用はスクールによって異なります。その幅は3万円〜20万円と大きな差があります。
保有している資格次第で、既に受講しているカリキュラムが免除されるため、費用が抑えられる場合があります。複数のスクールを比較して決めるのがおすすめです。

介護福祉士実務者研修と介護職員初任者研修の違い

介護福祉士実務者研修と、介護職員初任者研修の違いを見てみましょう。

介護福祉士実務者研修介護職員初任者研修
受講時間450時間130時間
概要介護福祉士として必要な知識・技術の習得介護職員として働くうえでの基礎知識・技術を学ぶ

介護福祉士実務者研修は、より深掘りした介護スキルを学ぶカリキュラムです。
筆者が受講した感想としては、介護未経験の方が受講するには少し難しい印象を受けました。
不安な方は、まずは介護職員初任者研修から受講してステップアップすることをおすすめします。

初任者研修は、介護職員としてキャリアをスタートする際に、最初に受講する研修です。介護の基礎知識や技術を身につける目的で、実施されています。以前は「ホームヘルパー2級」として位置付けられていましたが、ホームヘルパー2級は2013年で廃止され、介護職員初任者研修へ移行となりました。

受講に特別な条件はなく、介護職員以外の方も受講可能です。研修はスクールや特定の介護施設、福祉系の専門学校などで実施されています。

初任者研修を修了することで、食事や入浴などの身体介護に関する技術が身につきます。また、訪問介護やサービス付き高齢者向け住宅など、初任者研修の資格が必須である施設への就職の幅も広がるでしょう。さらに、研修終了者には資格手当が支給される場合が多く、給与が上がる可能性があります。

初任者研修について詳しく知りたい方は、【介護職員初任者研修の取り方は?費用や期間も詳しく解説】の記事をご確認ください。

介護福祉士実務者研修を取得するメリット

介護福祉士実務者研修を取得することで、メリットと感じるものは以下の4つです。

  • 給与が上がる
  • 転職に活かせる
  • 仕事の幅が広がる
  • 介護福祉士の受験資格を取得できる

それぞれ解説していきます。介護福祉士実務者研修を取得するか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

給与が上がる

介護福祉士実務者研修の資格を取得すると、資格手当が増え給与が上がることがあります。
資格手当は全国一律ではなく、勤務先によって違います。気になる方は、取得する前に求人票を確認したり、面接の際に確認するといいでしょう。

転職に活かせる

介護福祉士実務者研修の資格を取得することで、介護業界での転職に活かせます。
筆者も何度か転職を経験していますが、面接の際に資格の有無を確認されることがほとんどで、上位の資格を持っている方が優遇される印象を受けました。

以上の理由から、転職活動をより有利に進めたい方は、介護福祉士実務者研修を取得することをおすすめします。

仕事の幅が広がる

介護福祉士実務者研修の資格を取得すると、介護職員として仕事の幅が広がります。介護福祉士実務者研修のカリキュラムが、より深い介護知識を学ぶ資格になっているためです。職場でも役職に推薦されるきっかけになったり、その先のキャリアアップも考えられます。

また、訪問介護事業所にてサービス提供責任者として働くことも可能になります。
サービス提供責任者の仕事に興味がある方は、下記の記事もご参照ください。

介護福祉士実務者研修は権威性もあるため、介護業界でキャリアアップを考えるのであれば、資格取得をおすすめします。

介護福祉士の受験資格を取得できる

介護福祉士実務者研修を取得すると、介護福祉士の受験資格として認められます
介護福祉士実務者研修を取得して介護福祉士の試験を受ける受験ルートは、介護職員にとってオーソドックスな受験ルートです。

仕事をしながら受験する方は、ライフスタイルに合わせた勉強プランを組むことをおすすめします。

介護福祉士は、介護関連の資格の中で唯一の国家資格です。福祉系の国家資格として、社会福祉士、精神保健福祉士とともに「3福祉士」と呼ばれています。

介護福祉士の受験資格を取るには、実務者研修の修了以外にも、以下のルートがあります。

  • 大学や専門学校などの養成施設を卒業する
  • 福祉系の高校を卒業する
  • 外国人の場合は、経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補者として来日し、日本の介護施設で3年以上の実務経験を積む

試験の合格率は8割を超えており、しっかりと勉強すれば合格できる可能性はじゅうぶんにあると言えるでしょう。

介護福祉士の資格を取得することで、高度な知識や技術が身に付くだけでなく、リーダーのポジションを任されるなど、キャリアアップの機会も増えます。また、資格手当も初任者研修や実務者研修より高額となる場合が多いため、給与が上がる可能性は高いでしょう。

介護福祉士について気になる方は、【介護福祉士の取り方は4通り!資格取得のルートと試験の概要を解説】の記事をご確認ください。

介護福祉士実務者研修を取るうえで大変なこと

介護福祉士実務者研修を取得するためには、ライフスタイルに合った取得方法を考える必要があります。取得するうえで、大変なことは以下の3つです。

  • 費用がかかる
  • 勉強時間が必要になる
  • 仕事と両立する必要がある

ひとつずつ解説します。

費用がかかる

介護福祉士実務者研修の取得には、費用がかかります。
取得するための費用は、保有している資格によって変動します。無資格でも取得できますが、スクールによっては20万円前後かかる場合もあります。

費用を払うのが困難な場合、受講費用を抑える方法もあります。詳細は実務者研修の受講費用を抑える方法や制度の章で解説しています。気になる方は一読ください。

勉強時間が必要になる

介護福祉士実務者研修を取得するためには、カリキュラムを修了する必要があります。カリキュラムは現在の保有資格によって変動しますが、最長で450時間の受講が必要です。

筆者は通学コースで受講しましたが、直接質問できる環境のため、疑問点をすぐに解消できる点がメリットだと感じました。学び方は通学通信かで大きく変わるため、ご自身に合った勉強方法で実施することをおすすめします。

仕事と両立する必要がある

介護福祉士実務者研修を取得しようとする人の境遇はそれぞれ違います。例えば仕事をしながら資格をとる方は、時間管理をしながら両立に努めなければいけません。筆者も、仕事終わりに課題を行い、休みの日に授業に参加していました。

仕事によりますが、介護現場で働いてからの勉強は肉体的、精神的に辛いものがありました。無理なく学べるコースを選んで、両立できる環境づくりに努めましょう。

介護福祉士実務者研修の受講費用を抑える方法や制度

介護福祉士実務者研修を取得するためには受講費用を払う必要があります。受講費用は高額なた費用の捻出が困難な方もいるかもしれません。
そのような方のために、受講費用を軽減できる方法が存在します。方法は以下の5つです。

  • 資格取得支援制度のある施設へ入職する
  • スクールの支援制度を利用する
  • 国や自治体の支援制度を利用する
  • 貸付金制度
  • 教育訓練給付金制度

介護福祉士実務者研修を取得したいけれど、費用が高くて諦めようとしている方は、ぜひ参考にしてください。

方法詳細
資格取得支援制度のある施設へ入職する介護福祉士実務者研修の取得支援制度がある会社へ入職し、会社が提示している条件を満たすことで、資格取得にかかる費用を全額、もしくは一部負担してくれる制度。
スクールの支援制度を利用するスクールによっては、資格を取得したあと、スクールが運営する介護現場に入職することで費用が免除となるところもある。
スクールごとに詳細が違うため、確認が必要。
国や自治体の支援制度を利用する居住している自治体が運用している支援制度。
自治体によって詳細が違う為、各自治体のホームページなどの確認が必要。
貸付金制度各都道府県の社会福祉協議会が運営している制度。
貸付金の上限額・最大20万円の免除が可能。
教育訓練給付金制度働く人のキャリアアップを支援する厚生労働省の制度。下記の2種類ある。詳細は教育訓練給付金制度を参照ください。
・一般教育訓練給付貴院受講費用の20%が支給
(上限10万円)
・専門実践教育訓練給付金受講費用の50%が訓練受講中6ヶ月ごとに支給
(年間上限40万円)

介護福祉士実務者研修を取得するための支援制度は充実しています。上記の制度を使用して、ご自身の生活に合った制度の利用を検討してみてください。

介護福祉士実務者研修に関するよくある質問

本章では介護福祉士実務者研修を受講するうえで、よくある質問を紹介します。介護福祉士実務者研修の受講について悩んでいる方は参考にしてください。

介護福祉士実務者研修のカリキュラムは難しいですか?

介護福祉士実務者研修の授業は、完全に介護未経験の方が受けると内容を理解することが難しい可能性があります。
実際に数ヶ月ほど介護経験を積んでから受講するのと、知識ゼロの状態で受講するのとでは、スタートラインが違います。

介護福祉士実務者研修の授業では、ADLやトランスといった専門用語も出てくるため、可能であれば介護経験を積んで受講することをおすすめします。経験を積むのが難しい場合は、配布される教科書などで予習してから受講するとよりスムーズに学べますよ。

介護福祉士実務者研修はどこで受講できますか?

介護福祉士実務者研修は、国から認定された養成施設で受講できます。

介護福祉士実務者研修について検索して、お住まいの地域でライフスタイルに合ったスクールを選ぶといいでしょう。

まとめ

介護福祉士実務者研修は、質の高い介護サービス供給のために作られた資格で、介護福祉士国家試験の受験要件の一つにもなっています。

取得するためには、最大450時間のカリキュラムの修了が必要です。そのため、働きながら取得を検討する場合は、スクールやコース選びが重要となってくるでしょう。

介護福祉士実務者研修を受講することで、より実践的な知識・技術を学ぶことが出来ます。ご利用者様へのケアの質が高まったり、対応に余裕が出るなど、スキルアップも実感できるかもしれません。

他にも、担当できる業務の幅が広がったり、他の職種へチャレンジ出来たりと、キャリアアップに繋がる場合も多くあります。

無資格からでも挑戦できるため、介護業界で長期的な就業を考えている方は、ぜひ介護福祉士実務者研修に挑戦してみてください。

この記事を書いたのは・・・

かきざき/Webライター

保有資格:介護福祉士/終活ガイド1級/エンディングノートセミナー講師/食品衛生責任者
介護福祉士として介護職を13年経験。ライター歴3年。
特養でのユニットリーダー経験や、珍しい定期巡回の経験を活かして記事執筆しています!