有料老人ホームの仕事内容とは?働くのに向いているのはどんな人かも解説

「有料老人ホームの仕事内容って、何があるんだろう?」
「有料老人ホームはどんな方が入居しているのかな?」
「転職先に、有料老人ホームってどうかな?」
と、考えたことはありませんか?

本記事では、有料老人ホームとはどういったところか、また介護職員の仕事内容は何があるのかを解説します。

本記事を読めば、有料老人ホームの基本的な知識や、仕事内容が理解でき、転職先として興味がわくのではないでしょうか。

有料老人ホームとは

はじめに、有料老人ホームがどういった場所なのかをみていきましょう。

厚生労働省が定義する有料老人ホームとは、以下のうちいずれか(複数も可)のサービスを提供していることとなっています。

  • 食事の提供
  • 介護(入浴・排泄・食事)の提供
  • 家事の供与
  • 健康管理

有料老人ホームの特徴は、施設運営の自由度が高く、独自の方針があることです。

有料老人ホームには、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームがあります。
では、2種類の有料老人ホームの違いを見ていきましょう。

介護付き有料老人ホーム住宅型有料老人ホーム
【支援内容】・介護サービスの提供
・余暇活動
・機能訓練
・食事や生活援助サービス
 (掃除・洗濯・買い物など)を提供する
・外部サービスによる支援
(デイサービス・ヘルパーなど)
【入居対象】要支援・要介護ともに対象
(一部要介護のみの施設もあり)
介護度に制限は無い
自立度の高い人が多い


前述した通り、それぞれの施設では決められたコンセプトのもとで運営をしている施設も多くあります。
以下は、施設のコンセプトとしての例です。

  • 食事に力を入れているので、既製品よりも手作りが多い
  • リハビリの指導員を何人も配置しており、ご入居者様の希望にあわせてリハビリを提供できる
  • レクリエーションで楽しいイベントがある
  • 外出の機会が多い

このように、それぞれの施設は自由に運営を行い、個々に差別化を図っているといえます。

有料老人ホームの仕事内容って?

次に、有料老人ホームの仕事内容を紹介します。
今回は、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの仕事内容に絞って紹介していきます。

主な仕事内容

介護職員が、ご入居者様に対して行う仕事内容は多岐にわたります。
以下で、詳細を説明します。

身体介護(食事・排泄・入浴)

食事・排泄・入浴の介助は、ご入居者様の身体機能にあった方法で行います。

【食事】

自分で食べられるが、お膳を運ぶなどの準備ができない方には、職員がお茶をついだり、配膳をしたりと支援をします。
また、手先を動かせず口まで運べない方には、ご入居者様の口の中へ食事を運ぶ全介助で支援します。

【排泄】

トイレに行って1人で排泄が出来る方に対しては、排泄回数や状態の確認をします。
尿意や便意がなくオムツをしている方に対しては、ベッドに臥床介助をしてからオムツ交換をし、片付けるまで全介助をします。

【入浴】

高齢になると足もとのふらつきから転倒しやすいため、床が濡れている浴室などでは必ず見守りをし、転倒リスクの軽減をしていく必要があります。
衣類の準備は自分でできる方にはやってもらいます。
衣類の着脱から洗身までは、必ず職員が見守っている状態です。
また、一連の動作を自立している人は少ないため、どこかの行程で職員が支援しています。

身体介護は、ご入居者様の身体機能にあった介助方法で支援しています。
住宅型有料老人ホームでは外部のヘルパーが対応するため、対応時間内に終了できるよう進めなければなりません。

生活支援(掃除・洗濯・買い物)

生活支援については、ご入居者様によっては自分でする方もいらっしゃいます。
特に、主婦経験のある女性はすすんで拭き掃除をしたり、洗濯機を使用したり、外出して買い物をする方も多いです。そういった方には、見守りや動作指示で支援しています。

大体の施設が外部の業者でサポートしていますが、職員が対応することもあります。

健康管理(毎日のバイタルチェック・服薬介助)

ご入居者様の健康管理については、介護職員と看護職員で管理します。
毎日決まった時間のバイタルチェックや服薬介助は、時間帯を分けて分担作業しています。

筆者の勤務していた有料老人ホームでは、朝の血圧測定と昼食時の服薬介助は看護職員、朝食時と夕食時の服薬介助や転倒事故時のバイタルチェックは介護職員と決められており、漏れが無いように対応していました。

24時間の見守り

有料老人ホームでは認知症の方も入居されているため、施設内を徘徊されたり、異食など危険行動がみられます。
そういった場合には、職員が必ず見守りをします。
職員の目が届く範囲にいてもらったり、居室にいる場合はセンサーを使用します。
ご入居者様が安全に暮らせるように、24時間の見守りができる体制をとっています。

緊急時の対応

有料老人ホームでは、医療従事者が常駐しているわけではありません。
そのため介護職員は、緊急対応のマニュアルを頭に入れておく必要があります。

各施設にあるマニュアルは、緊急時に介護職員がおこなう手順がしっかりと書かれていることがほとんどで、その通りに動けば適切な対応になります。
実際に緊急時に居合わせたら、落ち着いて対応ができるような心構えが重要です。

往診クリニックとの連携

有料老人ホームは、往診クリニックとの連携が重要です。
なぜなら、ご入居者様は、体調不良時に自分で外出して病院にいくことが困難だからです。

体調不良時には適切な診断と処置が必要になるので、看護職員や介護職員はご入居者様をしっかりと観察し、必要事項を往診クリニックに伝えるようにしましょう。

外出支援

ご入居者様にとって、外出は気分をリフレッシュできる貴重な機会です。
外出の目的は、買い物や外食、病院受診などがあります。

介護付有料老人ホームでは生活相談員が担当することが多いですが、住宅型については外部の訪問ヘルパーが対応することになります。
外出時に介護職員が注意する点は、ご入居者様の体調管理です。
車酔いはしていないか、血圧は上がっていないか、気温は適切かといったことに常に注意することで、ご入居者様は無事にリフレッシュされて帰って来られます。

イベント企画

有料老人ホームの生活は、日々同じように過ぎていきますが、その中でご入居者様は施設で行われるイベントを楽しみにされています。
介護職員は、ご入居者様が楽しく施設生活を送ることが出来るように定期的なイベントの企画をします。
毎月のイベントや年中行事など、ご入居者様が楽しめそうなイベントを企画するのも大切な仕事です。

介護職員の1日のスケジュール

次に、有料老人ホームの介護職員の1日の流れを紹介します。
筆者がケアマネジャーとして勤務していた有料老人ホームを例として紹介します。

【介護付有料老人ホームでの一例】

日勤帯8:30~17:30夜勤帯17:30~9:00
8:30~全体申し送り
フロア申し送り
17:15~全体申し送り
フロア申し送り
8:45~入浴介助17:30~食事介助
 →服薬介助
10:30~排泄介助18:00~口腔ケア
 →臥床介助
11:45~昼食準備20:00~就寝介助
 →眠前薬服薬介助
12:00~食事介助21:00~消灯・巡視
12:30~口腔ケア
 →排泄介助
22:00~排泄介助
13:00~排泄介助
 →臥床介助
0:00~巡視・記録記入
14:00~レクリエーション
イベント
2:00~排泄介助
15:00~臥床介助
 →おやつ
3:00~記録記入
15:30~記録記入4:30~雑務
14:45~排泄介助5:30~排泄介助
 →起床介助
16:30~軽作業7:00~朝食準備
17:00~夕食準備7:30~朝食介助
 →服薬介助
17:15~申し送り8:00~口腔ケア
 →排泄介助
8:30~全体申し送り
フロア申し送り

※早番・遅番も含めて大まかに記載しています。

こちらはあくまで一例で、施設によってもっと細かくマニュアル化されていたり、その日出勤している職員の人数で仕事内容を変動させる場合もあります。

介護付有料老人ホームの仕事内容

介護付有料老人ホームは、介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設で、介護度の高い方も安心して入居できる施設です。

介護職員は、24時間体制でどのご入居者様に対しても、必要な介護サービスを提供します。
食事であれば、配膳から食事介助まで支援しますし、排泄であれば、衣類の着脱から寝たきりのオムツ交換まで行います。

また、24時間の勤務交代制で常にご入居者様の見守りをおこなっています。
ご入居者様は、フロアでテレビをみている方もいれば、軽作業をされている方もおられます。

ですが、認知症のご入居者様に関しては、安全に生活してもらうために、職員が見守りできる範囲にいてもらわなければいけない場合もあります。

つまり、マンツーマンで見守りをするということです。

こういった面においては、介護職員が「どうやってご入居者様の安全を確保するか考え抜くこと」で、経験や事例を身につけることができ、成長するポイントになるともいえます。

介護付き有料老人ホームで働くスタッフ

次に、多職種との連携についてみていきます。

有料老人ホームで働く他の職種は以下です。

職種主な仕事内容員配置
生活相談員・家族や医療との連携、送迎業務
・入居者の入退去対応
・営業活動
入居者100人に対し1人
看護職員・外傷の手当
・往診クリニックとの情報共有
・服薬管理
介護職員とあわせて
要支援10人に対して1人
要介護3人に対して1人
機能訓練指導員・入居者の身体の状態を評価し、リハビリや運動を指導する施設に1人以上
計画作成担当者
(ケアマネジャー)
・入居者のケアプラン作成
・介護保険などの手続き
施設に1人以上
栄養士・栄養管理
・厨房への食形態の変更指示
・食事変更
配置基準無し


このように、介護職員と他職種は密に連携することで、ご入居者様に対してよりよい介護サービスを提供するよう努めています。

住宅型有料老人ホームの仕事内容

住宅型有料老人ホームは、生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。

介護職員は、訪問ヘルパー事業所から介護サービスを提供しにきているという仕組みになっています。
ですが、基本的には介護付有料老人ホームと同様に個々の居室を訪問し、食事・排泄・入浴についての介護サービスをすると考えていいでしょう。

介護付有料老人ホームとの異なる点は、介護職員がご入居者様の居室に訪問する日時はルート表などで決められており、その他は必要に応じて(ナースコールなど)適宜訪問するといったところです。

このように、制度上の仕組みに違いはありますが、介護職員が提供する介護サービスは介護付有料老人ホームと同様に身体介護から生活支援までになります。

住宅型有料老人ホームで働くスタッフ

では、次にどんな職種が働いているか確認していきます。

介護付有料老人ホームについては人員配置の基準がありましたが、住宅型有料老人ホームは法令上の規定はなく、以下の職種の配置を示すという表現になっています。

  • 管理者
  • 生活相談員
  • 栄養士
  • 調理員

ご覧のように、配置的には生活支援のための職種が主となっています。

ですが、実際は外部の訪問介護サービスや往診の医療サービスを利用して、寝たきりのご入居者様や医療依存度の高いご入居者様も住まわれている現実があります。

近年の高齢化により、住宅型有料老人ホームも終末期ケアのニーズが高まり、”終の棲家”として選ばれる傾向にあるということです。

そういった場合を想定して、配置として示されてはいませんが、往診医から指示を受け、看護職員と介護職員が連携して対応する住宅型有料老人ホームが多くなっているといえます。

有料老人ホームに向いている人

本章では有料老人ホームで働くのに向いている人の特徴を紹介します。

  • 柔軟な対応ができる
  • マナーや接遇がきちんとできる
  • 緊急時には落ち着いて対応ができる
  • 効率よく仕事に取り組める

1つずつ見ていきましょう。

柔軟な対応ができる

ご入居者様は、身体機能や認知機能や境遇などがそれぞれ違います。
そのため、介護職員に要望することも多種多様になってきます。

介護職員は、ご入居者様からの1つ1つの要望に誠実に対応する必要があります。
その対応を億劫に思わず、ご入居者様第一主義で奉仕できる心を持っている人が向いているといえます。

マナーや接遇がきちんとできる

有料老人ホームは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設よりも待機期間が短いことから、ご入居者様は自分の好むコンセプトを探し、入居にメリットがある施設をじっくり選び納得してご入居されます。

そういったご入居者様に対して、期待を裏切ることなく「入居してよかった」と思ってもらえるようなマナーや接遇できちんと対応ができる人が向いているといえます。

緊急時には落ち着いて対応ができる

有料老人ホームでは、ご入居者様の緊急時(体調不良時)に医療従事者がその場にいることが少ない施設です。
看護職員は、日勤帯に配置されることはあっても、夜間帯ではオンコール対応となることがほとんどだからです。

そのため、緊急対応時には介護職員などその場にいる職員で迅速な対応をしなくてはいけません。
そういった場面において、動揺することなく、落ち着いて適切な処置ができる人は向いているといえます。

効率よく仕事に取り組める

有料老人ホームは、多床室もありますが個室の場合がほとんどです。
筆者の経験上、介護職員にとっては個室よりも多床室の方が仕事の効率がよくなる場合が多いと感じています。

例えば、排泄介助のためオムツ交換をする場合です。
まず居室に入るためにすべての用具を持って、居室の扉を開けます。
介助が終了すると、またすべての用具を持って居室の扉を開け、退出します。
この一連の動作に効率の悪さを感じました。
多床室の方が扉の開け閉めなどで余分な時間を取られることなく、立て続けに介助が可能です。
その反面、個室になると1室1室出たり入ったりする手間があり、効率が上がりません。

そのため、常に効率を考え、要領よく仕事に取り組める人が向いているといえます。

有料老人ホームの給与や残業について

では、みなさんが気になる、有料老人ホームの介護職員の給与や残業について解説します。

給与の比較

有料老人ホームで働く介護職員の平均月収をご紹介します。
さらに、保持している資格別に比較してみます。

資格均月収
介護福祉士330,650円
実務者研修286,680円
介護職員初任者研修298,220円
社会福祉士347,810円
介護支援専門員(ケアマネジャー)361,010円

上記のように、有料老人ホームでは資格別に給与も異なります。

さらにほかの施設の給与と比較したい方は、こちらの記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

まとめ

有料老人ホームでの仕事は、施設ごとに特色がありオリジナリティもあります。
多職種との連携が多い職場のため、自身のスキルによりよい影響を与え、有益なキャリア形成ができるといえます。

転職の経験がなく、1つの施設で働いてきた人には、ぜひ個性豊かな有料老人ホームへの転職もおすすめします。

「介護転職のミカタ」では、さまざまな求人を紹介していますので、転職をお考えの方は一度相談してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたのは・・・

小玉 有紀/Webライター

保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/介護事務士
福祉系専門学校を卒業したのち、老健で介護福祉士として6年勤務。生活相談員を経験したのち、ケアマネージャーとして5年経験。現在は育児のかたわらライターとして活動中。