介護業界の給与が安いとはよく耳にしますが、実際の平均年収はどうなのでしょうか?
令和4年度の厚生労働省の調べによると介護職員の平均年収は357万円です。
この額は、一般企業の平均年収である458万円と比べると約101万円低い事になります。
そのため一般企業と比べると、まだまだ介護職員の平均年収が低いことがわかります。
年収が高い人、年収が低い人はどんな特徴があるのか、4つの視点から細かく解説していきます。
本記事を見て、「そもそも自分はまだ平均年収まで届いていない…」と思った方や、「一般企業の平均年収に少しでも近づきたい!」と思った方、ご安心ください。
本記事の後半では年収アップの心得もわかりやすく解説していきます。
この記事の内容
資格別の平均年収は変わる?
介護職員は、資格によって平均年収が大きく変わる職種です。
無資格者の平均年収と介護福祉士の平均年収は約74万円も違います。
細かい資格毎に平均年収を厚生労働省の調べを元に見ていきましょう。
資格の取得方法もあわせて解説していきます。
無資格者の平均年収
介護の資格をお持ちでないまま、介護職員として従事されている方の平均年収は、324万円となっています。
一般企業の平均年収が458万円ですので、134万円の差があることがわかります。
そのため、他業種から介護業界に転職する方は注意が必要です。
介護職員初任者研修の平均年収
介護職員初任者研修をお持ちの方の平均年収は、363万円となっています。
こちらは介護職員として働く場合は取得をしていた方が良い資格になります。
良い理由として介護としての基礎知識を学べるだけでなく技術等の取得も可能な資格だからです。
一般企業の平均年収と比較すると95万円の差がありますが、無資格の介護職員と比較すると39万も違います。
他業種から介護業界に転職を考えている方は、初任者研修を取得してからの就業をおすすめします。
ただ、資格取得に時間と費用がかかりますので、事前にしっかりと下調べをしておきましょう。
介護職員初任者研修を取得するためには何をすればいいの?
介護職員初任者研修は、130時間のカリキュラムを修了したうえで筆記試験に合格すれば取得できる資格となっています。
取得するにあたって学歴、職歴、国籍など特に制限なく受講が可能です。
選ぶスクールによっても変わりますが、中学生でも取得が可能です。
所要期間としては、コースにも寄りますが大体1ヶ月〜4ヶ月での取得が可能です。
学習期間は130時間のカリキュラムを修了後筆記試験に合格し取得といった流れになります。
費用はどのくらいかかるの?
費用に関してはスクールによって違いますが最安3万円代〜13万円代と幅があります。
資格支援制度の充実した施設もありますので、詳しいことは各施設や転職エージェントに聞いてみましょう。
介護福祉士実務者研修の平均年収
介護福祉士実務者研修をお持ちの方の平均年収は363万円となっています。
介護福祉士実務者研修とは、国家資格の”介護福祉士”を目指すために必要な資格です。
以前はホームヘルパー1級などと呼ばれていました。
年収面だけを見ると、介護職員初任者研修と大きく差はありませんが、国家資格の介護福祉士を取得するためには必須の資格となるのため、将来的に介護福祉士の取得を目指す方におすすめです。
介護福祉士実務者研修をとるためには?
介護福祉士実務者研修を取得するためには、20科目450時間のカリキュラム+医療的ケアを学習する必要があります。初任者研修の資格を取得している方は130時間分のカリキュラムが免除となります。
所要期間としては最短で2ヶ月(初任者研修を持っている場合)〜6ヶ月ほどです。
費用はどのくらいかかるの?
スクールや自身の所有資格によって変動はありますが5万前後〜20万前後となります。
こちらも初任者研修と同じく資格支援制度の対象になる場合もあります。
また、転職の際はその施設に資格支援制度があるかは確認しておきましょう。
介護福祉士の平均年収
介護福祉士をお持ちの方の平均年収は398万円となります。
介護福祉士とは、
『介護福祉士資格は、介護に係る一定の知識や技能を習得していることを証明する唯一の国家資格です。介護の世界には資格がたくさんありますが、介護福祉の専門職である介護福祉士が唯一の国家資格です。』
(引用:公益財団法人 日本介護福祉士会 介護福祉士とは)
とあるように、介護福祉士は国家資格であり、介護職員の中では一番平均年収の高い資格となっています。
では介護福祉士になるためには何をすればよいのでしょうか。
介護福祉士になるためには?
厚生労働省のデータによると3つのルートに分かれます。
各ルート毎に解説していきます。
実務経験ルート
① “3年以上の介護等の業務に関する実務経験を経た後に、国家試験に合格して資格を取得する方法”というルートがあります。
すでに介護の仕事をされている方で介護福祉士を目指す方はこちらのルートから資格を取得しましょう。
養成施設ルート
②”厚生労働大臣が指定する介護福祉士養成施設等において必要な知識及び技能を修得して資格を取得する方法”となります。
福祉系高校ルート
③”福祉系高校を厚生労働大臣が定める教科目及び単位数を修めて卒業した後に、国家試験に合格して資格を取得する方法平成25年度までに特例高等学校等(通信課程含む)に入学した者を含む”といったルートがあります。
(引用:厚生労働省第3回福祉人材確保対策検討会(H26.7.1)資料1 介護福祉士資格の取得方法について)
費用は?
介護福祉士国家試験の受験費用に関しては18,380円となっています。
受けて合格した際に登録料が9,000円かかります。
研修を受ける初任者研修や実務者研修と違い試験を受けるだけになりますので費用は3万円前後となります。
介護福祉士取得についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も見てみてください。
勤続年数によって平均年収はどう変わるの?
では年収の話に戻りましょう。
資格でも年収の差があったように勤続年数によっても平均年収は変わります。
参考資料は月給ですが、×12ヶ月で年収換算として見ていきましょう。
令和4年12月(月収) | 年収換算 | |
全体【平均勤続年数:8.7年】 | 318,230円 | 3,818,760円 |
1年(勤続1年~1年11か月) | 281,990円 | 3,383,880円 |
2年(勤続2年~2年11か月) | 297,630円 | 3,458,280円 |
3年(勤続3年~3年11か月) | 303,510円 | 3,571,560円 |
4年(勤続4年~4年11か月) | 311,850円 | 3,642,120円 |
5年~9年 | 346,510円 | 3,742,200円 |
10年以上 | 346,510円 | 4,158,120円 |
このデータによると、継続1年〜1年11ヶ月の方の平均年収は338万円。
金属10年以上の方の平均年収は415万円と、77万円もの差があります。
以上の事から、勤続年数が長い方は年収が高い傾向にあります。
施設形態別平均年収はどう変わるの?
資格、勤続年数と見てきましたがそもそも施設形態によって平均年収に違いはあるのでしょうか。
結論、違いがあります。
施設ごとの平均年収を、表にまとめました。
施設形態 | 平均年収 |
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) | 4,170,240円 |
介護老人保健施設 | 4,059,360円 |
介護医療院 | 3,853,400円 |
特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム 等) | 3,766,200円 |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 3,519,240円 |
小規模多機能型居宅介護 | 3,497,280円 |
訪問介護 | 3,813,600円 |
通所介護 | 3,320,160円 |
通所リハビリテーション | 3,661,200円 |
給与を比較すると、介護老人福祉施設が一番高く、417万円となっています。
通所介護と比べると85万円も差があることがわかります。
介護老人福祉施設の平均年収が高い3つの要素
施設ごとの年収を見ると介護老人福祉施設が高い事が分かります。
ではなぜ平均年収が高いのでしょうか。3つの要素に分けて解説していきます。
介護老人福祉施設での仕事内容
仕事が大変なため、給与が高いと考えます。
介護業界でのお仕事は基本的に大変と言われますが、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は特に大変と言われています。
大変と言われる理由として、介護度が高いことがあります。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は原則、要介護3以上の方が入居しています。
(やむを得ない事情により特別養護老人ホーム以外での生活が困難であると判断された場合は要介護度1、2でも可)
要介護の認定は、コンピューターによる判定にくわえて、「介護認定審査員」が判断します。
要介護度は1〜5まで分かれており、5に近くなるほど日常生活が困難です。
要介護3以上が入居条件になっているため、日常生活が困難な利用者が多いことから介護職員の負担が大きくなります。
国からの処遇改善金等
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は重度の介護を必要とする方が多いため国からの処遇改善金も他施設に比べて多く付随して介護老人福祉施設が高いという理由にもなります。
また、人手不足の影響もあり定着率を上げるための施策として国からの支給が多いのだと考えます。
夜勤手当
夜勤手当の有無で年収は大きく変わります。
介護老人福祉施設には夜勤があります。
手当の額は施設によってさまざまですが、1回の夜勤で10,000円以上手当が出ることもあり、年収が高い理由の一つになります。
職種別平均年収
最後に職種によって平均年収は変わるのかを見ていきましょう。
結論働き方でも年収は大きく変化します。
介護職員と、介護現場で働く他の職種ごとの年収を細かくご紹介します。
介護職員
介護職員の平均年収は冒頭にお伝えした通り3,572,439円となっています。
生活相談員・支援相談員
生活相談員・支援相談員の平均年収は4,107,960円となります。
生活相談員とは入所、通所をしている利用者が良い環境で過ごせるようにご家族との相談や援助等を行う業種です。
通所施設の生活相談員として従事する場合は身体介助等を行う場合もありますので比較的幅広い業務に対応します。
介護職員のスキルアップとして従事される方も多く、夜勤が無いため働き方を変えたい方にもピッタリでしょう。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員の平均の年収は4,341,240円となります。
介護支援専門員(ケアマネージャー)(次回からケアマネと呼ぶ)はケアマネジメントを担う専門職です。
介護認定を受けた利用者の相談や心身の状態からケアプランを作成したり、施設との連携等行い円滑に進めることが仕事内容になります。
ケアマネになるためには、
①介護福祉士、看護士、社会福祉士など国家資格を持ち業務経験が通算5年以上
②介護支援専門員実務研修受講試験に合格する + 32時間の実務経験
以上の要件を満たさなければケアマネの資格を取得できないため、非常に難易度は高い資格となっています。
ただその分平均の年収は高いことが分かります。
200人以上の介護職員を見てきたプロが知る!収入UPのための6つの心得
本記事を読んで、自分の年収が平均より低い方と感じた方も多くいるかと思います。
私が見てきた介護職員の方々で平均年収に届いていない方も多く見てきました。
そんな方の為に少しでも年収を上げるための心得を簡単に6つに分けて解説します。
現在の職場で継続をしてみる(勤続年数を伸ばす)
先ほどお伝えした通り、勤続年数が長いと平均年収が高くなることは理解頂けたかと思います。
そのため平均に届いていない場合でも年収を上げるならば一旦はその職場で頑張ってみることが重要です。
介護職の業界は年々需要が出てきています。昨年度に比べ介護職員の平均年収は令和3年度から令和4年度で198,600円上がっています。
(参照:厚生労働省 令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要)
そのため今後介護業界は給与が上がっていくことが予想できます。
勤続年数が長いとそれだけ優遇を頂けることもありますので現職で継続をしていくことをお勧めいたします。
資格を取得する
介護福祉士の平均年収は398万と平均を超えています。
そのため介護福祉士を取得することで平均の年収を超えることができますので取得をオススメします。
また、ケアマネの資格を取得することで平均年収は434万と一般企業の平均年収にも近づきます。資格の要件を満たすようでしたら積極的に取得をしていきましょう。
働き方を変えてみる
年収アップの為には働き方を変えることも一つの手です。
日勤帯のみで働いている方は夜勤を混ぜたフルシフトに変えてみたり、早番遅番、土日祝日出勤等を行ってみると手当が加算され、年収のアップに繋がります事があります。
夜勤ができない理由としてご家庭の事情もあるかと思いますが、シフトの調整を頂き月に2回でも出ますと年収は12万〜30万程変化しますので調整をしてみると良いかもしれません。
外部の講習等積極的に参加をしてみる
医療に携わる施設等は感染症対策など専門的に学ぶ講習が用意されていたりします。
このような講習は全員参加の他に希望者のみ受けられる講習が準備されていることがあります。そういった講習に参加する事で周りから意欲のある方だと評価を頂けることもあります。
上司とのコミュニケーションをしっかり取る
介護業界は営業会社等と違い、ノルマや売上目標がそもそも無いため(管理者や生活相談員、ケアマネの場合は売り上げを追うこともある)、昇進の評価基準として人との繋がりや上司からの信頼等が重要になる場合があります。
そのため、上司とのコミュニケーションは非常に重要です。
上司から急な仕事をお願いされても快く仕事を受けたり、周囲が上司の悪口を言っていても自分は参加しない等、日々の態度から評価が上がることがありますのでぐっと我慢をすることも重要です。
管理者や本社の人に相談をしてみる
年収が平均よりも低い場合は施設全体の方針でそもそも低いのか、自分の仕事への姿勢や効率で年収が上がるのかを確認してみましょう。
前者であれば給与の改善が難しい場合が多いですが、後者であれば自分の仕事の仕方次第で年収が変わることもあります。
管理者にどういった姿勢で取り組み、どのような資格を取得すれば年収が上がるのか直接聞くのも良い手です。
その際は、聞き方も重要になります。
ただ『年収を上げてほしい』と伝えても断られる可能性が高いです。
『家庭の事情で給与を上げたいと考えているが、自分はどういった事をすれば給与が上がるのか?』など、事情を伝えれば検討してくれる可能性もあるのでチャレンジしてみましょう。
それでも改善されない場合は転職を考えてみよう!
現職に長く勤めても給与が上がらないことが分かったり管理者や本部の方に相談しても変わらない場合はいっその事転職をするのが良いです。
転職エージェントを使う際は給与や今後の展望などしっかりと聞いた上で転職をしましょう。ご自身で転職を行う場合は施設のHPを確認しスキルアップが可能かや、給与がどのくらいになりそうかを確認しましょう。
面接で給与だけを聞くのはNG
まず前提として、転職エージェントを使っている場合は給与の事はエージェントに任せましょう。場合によっては給与の交渉等もしてもらえる事がありますので、自身で交渉するのではなく、エージェントに任せた方がスムーズに進む可能性が高いです。
ご自身で転職活動を行う場合は、給与を事前に知る方法がネットの情報や求人表等でしかありません。そのため、詳しいことが聞きたい場合は面接で聞くしかありません。
ただ、面接で逆質問の際、給与の事だけを聞いてしまうのはNGです。
不動産や営業などは給与をモチベーションに売り上げを作る場合もあり、良い方向に転ぶこともありますが、介護業界は給与の事を聞きすぎると好印象を持たれないケースがあります。
もちろん給与は生活をしていくうえで重要なものですが逆質問の際に『給与はいくらですか?』と聞くより『利用者はどのような人が居るのか』という部分や『どのような人がリーダーになっているのか』を聞く方が印象が良いです。
少し古いデータではありますが『平成26年度介護労働実態調査(特別調査)』の介護人材の採用”27のQ&A”』によると面接時に確認する『採用面接チェックリスト』の中に『給与などの条件面だけを重視した志望動機ではないか?』という項目があることから給与ばかり聞く人はあまり好印象ではないということがわかります。
お金ばかり気にする人だと思われると今後給与の高い施設が家の近くで出た場合すぐに転職をするのではないか?と思われてしまい、短期の離職に繋がる事が懸念させることもありますので面接の際の逆質問は注意しましょう。
詳しくはこちらの記事でも解説していますのでご参照ください。
まとめ
今回は介護職員の平均年収や年収アップについて解説しました。
本記事を読んで様々な視点から介護職員の平均年収をご理解頂き、参考にしていただければと思います。
また、年収を改善する6つの心得を参考に、皆様の年収が上がる事を祈っています。
この記事を書いたのは・・・
介護転職のミカタ編集長・O
保有資格:図書館司書
介護・保育・障害領域の人材紹介会社にて、キャリアアドバイザーを経験。
現在はマーケティングチームの係長&コラム編集長として活躍中