無資格から介護職を始めるには?認知症介護基礎研修の義務化ってなに?徹底解説!

無資格から介護職を始めるにはどうしたらいいの?と疑問に思う人もいると思います。

介護職は、未経験からでも活躍しやすい職種です。
しかし、2024年4月より、無資格の介護職員に対して「認知症介護基礎研修」の修了が義務化されました。

本記事では、無資格から介護職を始める流れや、認知症介護基礎研修について解説していきます。
無資格から介護職を始めたいと考えている方や、これから資格を取得したい方はぜひ参考にしてください。

 

この記事の内容

介護職は無資格からでも就職できる

結論から言うと、無資格のまま介護施設に入職することは可能です。
ですが、無資格の介護職員と有資格の介護職員で、携われる業務が異なってきます。
また、給与にも差が出てきます。

無資格の介護職員ができる業務

無資格の介護職員が携わることが出来る業務には、身体介護、生活援助、事務仕事等があります。

介護施設内での身体介護

無資格者の場合は、介護施設内で有資格者の監督のもとであれば身体介護をすることが出来ます。
身体介護は、食事介助や入浴介助、排泄介助、移乗介助といった、ご利用者様の身体に直接触れて行う業務を指します。

有資格者の監督のもと行わなくてはいけない為、1人でご利用者様の自宅を訪問して介護を行う訪問介護では身体介護に従事することはできません。

介護施設内での生活援助

生活援助は、料理や洗濯、掃除といったご利用者様が通常の生活を送ることが出来るようにサポートする業務です。直接ご利用者様の身体に触れない介護で、介助の専門的な知識を有している必要が無いことから無資格者でも従事することが出来ます。

身体介護と同様に、1人でご利用者様の自宅を訪問する訪問介護では、基本的に従事することは出来ません。

事務作業・送迎業務

事務所内での電話対応や、備品の発注・管理等は無資格者であっても従事することが出来ます。

また、送迎業務も基本的には資格が無くてもできます。
ですが、ご利用者様が車に乗り降りする際に移乗介助が必要になる場合もあるため、施設によっては有資格者でないと従事できない場合もあります。

無資格の介護職員ができない業務

無資格の介護職員は、喀痰吸引などの医療的ケアや、1人でおこなう訪問介護業務には従事することが出来ません。
ご利用者様の安全が最優先になるためです。

 

無資格で介護職を続けていくには「認知症介護基礎研修」の受講が必須

2024年4月から、無資格者が介護職員として勤務するには「認知症介護基礎研修」を受講することが義務化されました。
本章では、取得が義務化された背景を解説していきます。

入職から1年以内の受講もしくは、資格の取得が必須に

無資格のまま介護施設に入職することはこれまで通り可能です。
なぜかというと、無資格者の場合は入職から1年間の受講猶予期間が設けられているからです。

そのため、介護職員としての勤務を継続するには、入職から1年間の間に認知症介護基礎研修を受講するか、資格を取得する必要があります。

「認知症介護基礎研修」義務化された背景

義務化になった背景としては、高齢者の増加が挙げられます。
内閣府が公表した「令和5年版高齢社会白書」によると、2030年には総人口の約1/3を高齢者が占める見込みとなっています。

高齢者数の増加に付随して、認知症患者の数も増え続けています。
日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2025年には約675万人と、5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。


※引用:公益財団法人生命保険文化センター

高齢者数の増加、認知症患者数の増加に対して、政府が策定したのが認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)です。
施策のひとつとして、認知症の人の生活を支える介護の質の向上、スキルの向上を目的に新任の介護職員向けに認知症介護基礎研修の受講が義務化されました。

認知症介護基礎研修は、2001年より全国で開始された「認知症介護実践者等養成事業」の中に位置づけられた、介護初任者を対象とする公的な研修です。
認知症介護の基本を学ぶための入門的な研修のため、無資格から介護職を始めたい方の入門としてもぴったりの研修です。

 

受講にかかる時間や費用

オンラインでの受講が主流

受講方法としては、eラーニングによるオンライン受講が主流となっています。
自治体により、オンライン配信を含む集合型研修で実施される場合もあります。
各自治体が指定した実施団体にて受講することになりますので、該当する自治体などのホームページにて確認が必要です。

受講にかかる時間

1日で終了できるカリキュラムです。
eラーニングの場合は、動画視聴時間は約150分。視聴後に、復習のための確認テストがあります。
オンライン配信を含む対面式の場合は、講義3時間、演習3時間の合計6時間で行われます。

受講にかかる費用

自治体により異なりますが、3,000円〜5,000円の場合が主です。
「介護職員初任者研修」の受講には4〜10万円ほどかかるため、比較すると安価に取得できると言えます。

免除される対象者

下記の資格保持者・研修修了者は、すでに認知症ケアの知識やスキルが身についているため受講を免除されます。

  • 医師、歯科医師、薬剤師
  • 看護師、准看護師
  • 介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事社研修修了者、介護職員基礎研修課程または訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者
  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師
  • 管理栄養士、栄養士
  • 社会福祉士、介護支援専門員、精神保健福祉士   等

※出典:社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター

認知症介護基礎研修で学べる内容

概要

認知症介護基礎研修の学習内容は、認知症への理解や基本的な対応方法、介護技術などです。認知症介護基礎研修のカリキュラムは、序章と4つの章で構成されています。

序章:認知症を取り巻く現状
第1章:認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
第2章:認知症の定義と原因疾患
第3章:認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
第4章:認知症ケアの基礎技術

各章ごとに確認テストを実施し、合格すると次の学習に進むことが出来ます。
全ての章を修了後、修了証書が付与されます。


※引用:社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター

研修の目的

認知症の人を取り巻く現状、病状に関する基礎的な知識を学び、認知症ケアの基礎的な技術に関する知識と、それらを踏まえた実際の対応方法を身につけます。
学習前に認知症に関する知識を確認する問題が出されます。

序章:認知症を取り巻く現状

認知症や認知症介護に関する 国の考え方や方向性を、実際の取り組みを理解しながら学習します。
特に、認知症を取り巻く社会が今後、どのような姿をめざしているのかを理解します。

第1章:認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方

認知症ご本人の声や生活の様子を通して、ご本人やご家族を主体とした考え方や捉え方を学びます。
認知症の古い認識と現在の違いを知り、本人を中心とした視点を身につけます。

第2章:認知症の定義と原因疾患

認知症と老化の違い、様々な認知症の特徴について学びます。
認知症の種類によって 原因、症状にはどのような特徴があるのかについて、アニメーション事例を通して学習します。

第3章:認知症の中核症状と行動・心理症状の理解

アルツハイマー型認知症を例に、認知症の中核症状と行動・心理症状や、中核症状が本人の心理や生活にどのように影響するのかを学びます。
また、望ましい生活環境や、健康をサポートする方法について学びます。

第4章:認知症ケアの基礎技術

認知症の治療に関する知識を学び、認知症の人への関わり方の具体的な方法を学びます。
認知症の症状ごとの関わり方や、複数のスタッフで関わるチームケアの考え方、そして認知症の方をケアする家族介護者に関する支援方法についても学びます。

 

「認知症介護基礎研修」を受講するメリット

認知症介護基礎研修を受講することで、認知症に対する理解が深まったり、ケアの基礎知識が身に着くといったメリットがあります。以下にて詳しく解説していきます。

認知症ケアの知識が身に着く

認知症介護基礎研修を修了すると、認知症ケアの知識や考え方を習得することができます。
そのため、根拠に基づいた質の高い接遇や介護サービスを提供できるようになります。
また、仕事に対する自信につながるためご利用者様への接遇も向上するでしょう。

選べる施設の幅が広がる

無資格から入職しても1年間の受講猶予がある研修ですが、募集要項として無資格の場合は認知症介護基礎研修修了を必須に設定している施設も少なくありません。
研修を修了することで選べる施設の幅が広がり、希望の条件で働ける可能性が高くなるでしょう。

 

さらなるキャリアアップ!資格取得を目指そう!

「認知症介護基礎研修」は介護職の入門編ともいえる研修です。
介護業界では、資格を取得することでキャリアアップを叶えることが出来ます。

介護全般に活かせる代表的な資格は、「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修」「介護福祉士」の3種類です。

「介護職員初任者研修」の概要

介護職員初任者研修は、介護の入門の位置づけの資格です。
研修を修了することで、ご利用者様の身体に直接触れる身体介護を1人でできるようになります。

介護職員初任者研修の受講要件

受講要件は無いため誰でも受講が可能です。
未経験でも、取得すれば「有資格者」として就職が出来るため、選考で有利になる可能性があります。

介護職員初任者研修と認知症介護基礎研修の違い

介護職員初任者研修は、介護職員として長期的に就業することを目指し、幅広い知識や技術を習得していきます。

一方、認知症介護基礎研修は短期間で認知症の方々との適切な関わり方を学べます。
研修にかかる時間、費用も異なるため、介護職員初任者研修の方が上位にあたる資格と言えます。

認知症介護基礎研修は、修了しても無資格者と同一の給与提示の求人が主となります。

「介護福祉士実務者研修」の概要

介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の上位にあたる資格です。より実践的な医療的ケアや介護過程の展開などを学べます。

介護福祉士実務者研修の受講要件

こちらも初任者研修同様受講要件は無いため、誰でも受講が可能です。
国家資格の介護福祉士を受験するためには、実務者研修の取得が要件の1つになります。

「介護福祉士」の概要

介護福祉士は、介護業務に携わるための資格の中で、唯一の国家資格です。
ご利用者様の状況に応じた介護サービスの提供を行えるほか、給与アップやキャリアアップにつながる資格です。

介護福祉士国家資格の受験要件

介護福祉士になるには、介護福祉士国家試験の受験要件を満たしたうえで筆記試験に合格する必要があります。
働きながら資格を取得するには、「実務経験ルート」で受験資格を得る必要があります。
「介護福祉士実務者研修の修了」「介護業務の実務経験3年以上」という2つの要件を満たす必要があります。

介護福祉士の資格の取得方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

無資格者と有資格者の給与の違い

無資格者と有資格者だと、給与にも違いが出てきます。

厚生労働省の、「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」を見てみると、令和4年12月時点の介護職員の平均給与額の状況は下記になります。
※認知症介護基礎研修修了者は無資格者と同一です。

令和4年12月
有資格者介護福祉士331,690円
実務者研修302,500円
初任者研修302,910円
無資格者270,530円
※引用:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」

比較すると、無資格者と初任者研修修了者の間でも32,380円の差があることがわかります。
給与を上げるには、資格を取得してから就職する、もしくは、まずは無資格もしくは認知症介護基礎研修を受講して介護職に就き、仕事をしながら資格取得を目指して経験を積んでいくのがおすすめです。

介護職で年収を上げていく6つの心得

介護職員全体で見ると、平均年収額は357万円と言われています。
この平均年収額は一般企業に勤める会社員の平均年収額と比較すると約101万円低く、介護職員の給与水準が一般企業と比較してまだまだ低いことがわかります。

また、同じ介護職員の中でも、保有資格や勤続年数、勤務先の施設形態、働き方によって年収に大きく違いが出てきます。

自分は今後どれくらいの給与を貰えるのか?そもそも年収が高い施設を選ぶには?とお考えの方は、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてお読みください。

よくある質問介護の仕事は無資格だと大変?

介護職は、無資格・未経験からでも経験を積めば活躍することが出来る職種です。
無資格でも生活援助や事務作業、送迎業務、監督のもとでの身体介助など、出来る業務が様々あります。仕事に慣れるまでは大変な部分があるかもしれませんが、経験を積めば活躍できるでしょう。

介護業界では、キャリアアップに向けた資格取得が推奨されている場合が多いため、まずは仕事を始めてみてから資格を取得するかどうかを検討するのもおすすめです。

研修を受けずに働くにはどうしたらいい?

介護保険の対象外となる病院での勤務においては、認知症介護基礎研修の受講義務はありません。研修を受けずに介護業務に携わるには、病院で看護助手として勤務することがおススメです。

ただし、病院によっては現場の質向上のため、職員への研修の実施を行っている場合もあります。

看護助手の仕事とは

看護助手は、病院にて看護師のサポートを行う仕事です。業務内容としては、病棟にもよりますが、身体介助や環境整備、移乗介助などが主です。原則、看護師長および看護職員の指導の下、指示を受けて業務を行うことになります。

医療行為は出来ませんが、無資格でも勤務が可能なため、看護学生や主婦など、幅広い年齢層が活躍しています。

そもそも看護助手とは?

看護助手は、病院やクリニックにて看護師のサポートを行う仕事です。看護補助者やナースエイドなどとも呼ばれます。
主な業務内容としては、病棟にもよりますが身体介助や環境整備、移乗介助などが主です。
原則として、看護師長および看護職員の指導の下、指示を受けて業務を行うことになります。

看護助手は介護職員と同様の介護業務を請け負う場合が多いですが、資格取得や認知症介護基礎研修の受講をしないままでも継続して勤務することが出来ます。
医療行為は出来ませんが、無資格でも医療業界に貢献できる数少ない職種のため、看護助手や主婦など、幅広い年齢層が活躍しています。

仕事内容や働き方についてはの詳細は、以下の記事にてご紹介しています。

無資格から介護職員として就業することは可能ですが、1年以内に認知症介護基礎研修を受講するか、介護職員初任者研修などの資格を取得する必要があります。

まとめ

介護職は、未経験からでも活躍することが出来る職種です。
将来どんなキャリアを描いていきたいか?を考えて、研修の受講や資格の取得にも積極的にチャレンジしてみましょう。

この記事を書いたのは・・・

介護転職のミカタ編集部・Y

保有資格:栄養士
介護・保育・障害領域の人材紹介会社にて、キャリアアドバイザーを経験。現在はマーケティングと人事を掛け持ちし、コラム編集部としても奮闘中!