少子高齢化が進む日本では、社会全体で介護サービスへのニーズが高まっており、介護分野の資格に対する注目度も高まっています。
中でも、介護分野で唯一の国家資格である「介護福祉士」は、特に注目を集めています。
介護福祉士という資格の名前は聞いたことがあっても、
「どうすれば資格を取得できるのか?」「合格率はどれくらいか?」と
気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、介護福祉士とはどんな資格か、どうすれば取得できるのかのほか、取得するメリットや試験の概要、合格率まで解説していきます。
この記事の内容
介護福祉士とは
介護福祉士は、数ある介護関連の資格の中で唯一の国家資格です。
国家資格に合格し、介護福祉士の資格登録をした人しか介護福祉士を名乗ることは出来ません。
福祉系の国家資格である、社会福祉士、精神保健福祉士とともに「3福祉士」と呼ばれ、介護職の中で中核を担っています。
専門知識を有しているとみられるため、就職・転職の際も有利にはたらきます。
また、介護福祉士は更新も無く全国どこでも通用するため、一生ものの資格であると言えるでしょう。
介護福祉士を取得するための4つのルート
介護福祉士の受験資格を得るためには下記の4つのルートがあり、定められた要件を満たす必要があります。
1つずつ見ていきましょう。
①養成施設ルート
介護福祉士養成施設は厚生労働大臣の指定を受けている高等教育機関のため、最終学歴が高校卒業以上の方がこのルートを選択できます。
養成施設は4種類あり、①4年制大学 ②短期大学 ③専門学校 ④1年課程の専攻科です。
④の専攻科は、福祉系大学もしくは社会福祉士、保育士の養成課程を卒業した方のみが入学できます。
単位を取得して卒業すると、介護福祉士の受験資格を得られます。
②実務経験ルート
実務経験ルートは、「従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日数540日以上の実務経験」かつ、「介護福祉士実務者研修 修了」を満たすことで、受験資格を得られます。
従業期間・従事日数は試験実施年度の3月31日まで通算することができます。
働きながら介護福祉士を目指す場合は、この実務経験ルートを選択するのが一般的です。
介護職員として働きながら実務者研修を取得すれば、介護未経験から最短3年で介護福祉士を取得することが出来ます。
【注意点】
実務経験の対象となる施設(事業)は、主な業務として介護等の業務が含まれることが条件です。
下記表を参考にしてみてください。
施設分類 | 主な施設 | |
社会福祉施設 | 特別養護老人ホーム・障害者(児)施設・地域福祉センター など | |
病院の病棟・診療所 | 病院、診療所 | |
介護等の便宜を供与する事業 | 上記以外の事業で、対象者が高齢者・障害者(児)であり介護職員・訪問介護員として配置され、主たる業務が介護等である施設(事業) |
上記施設で勤務していても、介護等の業務が含まれない職種の場合は実務経験として換算することが出来ません。
詳細は、公益財団法人社会福祉新興・試験センターに記載の受験資格をご確認ください。
③福祉系高校ルート
現在中学生で、今後介護士として就業していきたいと考えている方は、福祉系高校ルートがおすすめです。
単位を取得して高校を卒業すると、介護福祉士の受験資格を得られるため、最年少で介護福祉士を目指すことができます。
【注意点】
2024年度試験より実技試験が撤廃されるため、2008年度以前に福祉系高校に入学された方は、介護福祉士資格の登録を申請するまでに、「介護過程Ⅲ」を受講し、登録申請時に「介護過程Ⅲ修了証明書」を提出する必要があります。
ただし、2023年度までに介護技術講習会または介護課程を修了し、修了から3年を経過していない方については、登録申請時に「介護技術講習修了証明書」または「介護課程修了証明書」を提出すれば、「介護課程Ⅲ修了証明書」を提出する必要はありません。
④経済連携協定(EPA)ルート
EPAルートは、日本と外国の経済連携協定に基づき、外国籍の方が介護福祉士資格を取得できるルートです。
インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人を対象としており、EPA介護福祉士候補者として来日し、日本の介護施設で実務経験を3年積むことで介護福祉士国家試験の受験資格を得られます。
他のルートと同様、試験に法覚することで介護福祉士の資格を取得することが出来ます。
【注意点】
2024年度試験より実技試験が撤廃されるため、2024年5月以前に入国した方は、「介護実過程Ⅲ」を受講し、登録申請時に「介護課程Ⅲ修了証明書」を提出する、もしくは介護福祉士実務者研修を修了する必要があります。
なお、2024年度までに介護技術講習会または介護過程を修了し、修了から3年を経過していない方については、登録申請時に「介護技術講習修了証明書」または「介護過程修了証明書」を提出すれば、「介護過程Ⅲ修了証明書」を提出する必要はありません。
また、日本国籍の方は対象外となるため、このルートを利用して介護福祉士になることはできませんのでご注意ください。
国家試験の概要
介護福祉士国家試験は、年に1回、毎年1月頃に実施されます。
試験の申込みは、毎年8月〜9月頃、合否発表は、例年3月頃に行われます。
筆記試験の概要
筆記試験は、マークシート方式で出題されます。
基本的には5つの選択肢から回答を選んでいく、5肢択一の選択形式。全125問出題され、試験時間は220分です。
筆記試験の合格基準としては、正答率が約60%程度であること、かつすべての科目にて得点していることの2点です。
筆記試験の内容
2023年度に実施された、第35回介護福祉士国家試験(筆記)の試験内容は下記のとおりです。
領域 | 試験科目 | 問題数 | |
人間と社会 | 人間の尊厳と自立 | 2問 | |
人間関係とコミュニケーション | 4問 | ||
社会の理解 | 12問 | ||
こころとからだの しくみ | こころとからだのしくみ | 12問 | |
発達と老化の理解 | 8問 | ||
認知症の理解 | 10問 | ||
障害の理解 | 10問 | ||
医療的ケア | 医療的ケア | 5問 | |
介護 | 介護の基本 | 10問 | |
コミュニケーション技術 | 6問 | ||
生活支援技術 | 26問 | ||
介護過程 | 8問 | ||
総合問題 | 12問 |
全ての試験科目で得点する必要がありますので、問題数が少ない科目は念入りに対策を行いましょう。
実技試験の概要
前述のとおり、2024年度試験(2025年1月実施)より、実技試験は撤廃が決定しています。
ルートによっては、事前に研修を受ける必要があるため、事前に確認しておきましょう。
国家試験の合格率
厚生労働省が発表した、第36回介護福祉士国家試験合格発表によると、2023年度の介護福祉士国家試験の合格率は82.8%でした。
受験者数 | 74,595人 |
合格者数 | 61,747人 |
合格率 | 82.8% |
この結果から、介護福祉士国家試験の合格率は比較的高く、しっかりと勉強すれば、合格できる可能性は十分にあると言えるでしょう。
国家試験合格後の申請・手続き
国家試験合格後は、介護福祉士の登録申請が必要です。
期限はありませんが、登録申請をしないと介護福祉士として働くことはできませんので、注意しましょう。
手続きの流れは、下記の通りになります。
通常、提出書類に不備が無ければ、1か月程度で登録証が発送されます。
※不備があった場合は、不備が解消されてから1か月程度で送付されます
登録証の交付を受けると、晴れて介護福祉士を名乗ることが出来ます。
必要書類の詳細
提出書類は、下記の通りになります。
④は、介護福祉士養成施設を卒業した方は必須となりますので、忘れずに準備しましょう。
提出書類一覧 | ||||||||
① | 『登録申請書』 ※合格通知と一緒に郵送で届きます | |||||||
登録免許税『収入印紙』の原本 ※郵便局等で収入印紙を購入し、貼り付けする。(介護福祉士の場合は9,000円分) | ||||||||
② | 『貼付用紙』 | |||||||
登録手数料『振替払い込み受付証明書(お客さま用)』の原本 ※郵便局で払い込み、受付証明書を貼り付けする。(介護福祉士の場合は3,320円) | ||||||||
③ | 下記3点の中からいずれか1通 ア 戸籍の個人事項証明書の原本 イ 戸籍抄本の原本 ウ 「本籍を記載した」住民票の原本 | (外国の国籍の方) ・中期滞在者、特別永住者 →国籍等を記載した住民票の原本 ・短期滞在者 →パスポートそのほかの身分を証する書類のコピー | ||||||
④ | ※対象者のみ 介護福祉士養成施設の卒業証明書の原本 (対象者) ・平成29年3月31日までに介護福祉士養成施設を卒業した者 ・平成29年4月1日から令和9年3月31日までに介護福祉士養成施設を卒業し、経過措置による登録を受ける者 |
介護福祉士を取得するメリット3選
介護福祉士を取得することで、下記のようなメリットがあげられます。
- 高度な知識・技術を身に着けることが出来る
- キャリアアップの機会が増える
- 給与・待遇に反映される
1つずつ見ていきましょう。
1.高度な知識・技術を身に着けることが出来る
介護福祉士を取得するためには介護に関する多岐にわたる分野を学び、理解する必要があります。
そのため、受験勉強を通じて介護の高度な知識や技術を身に着けることが出来ます。
介護福祉士は介護分野における唯一の国家資格として、高度な専門知識と実践技術が求められる職業です。資格取得の過程で認知症ケアや終末期ケアといった専門的な分野の知識や技術を習得します。また、ご利用者様一人ひとりの身体的状況や心理的状態を適切に把握するためのアセスメント技術まで幅広く網羅されています。
資格を取得する過程で身につけたこれらの高度な知識・技術を、勉強するだけでなく、実際の仕事のなかで活かせるとよいでしょう。ご利用者様の生活の質の向上や、周囲のスタッフとの信頼関係の構築の大きな手助けになります。
資格取得で身につけた知識・技術をどのような場面で活かせるのか、介護職員の具体的な仕事内容について以下の記事で解説しているので、参照してください。
2.キャリアアップの機会が増える
介護福祉士は、通常の介護業務の中核を担うことはもちろんですが、介護現場のリーダーポジションを任されることも多々あります。
また、介護支援専門員(ケアマネージャー)の受験資格を得られるほか、サービス提供責任者や生活相談員といった職種を目指しやすくなるメリットもあります。
現場以外の様々なポジションで活躍できるチャンスが広がるため、キャリアアップの機会が増えると言えます。
3.給与・待遇に反映される
最後に、給与、待遇への反映です。
介護施設によっては、介護福祉士資格取得者に対して、資格手当が付与される場合があります。初任者研修、実務者研修も資格手当が付与される場合が多いですが、高い金額が付与される場合が多いです。
厚生労働省の、「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」を見てみると、令和4年12月時点の介護職員の平均給与額の状況は下記になります。
介護福祉士は無資格者と比較すると、平均して61,160円給与が高い状況です。
令和4年12月 | ||||
有資格 | 介護福祉士 | 331,690円 | ||
実務者研修 | 302,500円 | |||
初任者研修 | 302,910円 | |||
無資格者 | 270,530円 |
以上のことから、給与・待遇の向上が期待できるでしょう。
保有資格別の給与の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参考ください。
介護福祉士の資格を取得するための勉強方法
介護福祉士国家試験に合格するためには計画的な学習が欠かせません。筆記試験では介護現場での実務経験が役立つ問題も多いため、日常業務で得た知識を整理しながら学ぶことが効果的です。
また、試験範囲は広いため、自分の弱点を把握することが重要です。そのためには、模擬試験や過去問演習を活用し、苦手分野を重点的に対策する方法がおすすめです。さらに、移動や家事、病院の待ち時間などを活用して、一問一答形式の問題集や、試験対策のYoutubeを耳学として活用するのも効果的でしょう。
働きながら資格取得を目指す場合には、勉強時間をどのように確保するのかが大切で、隙間時間をうまく活用できるよう工夫することがポイントです。
こちらの記事では社会福祉士国家試験の勉強の仕方についてくわしく解説しています。別の資格ですが、同じ福祉系の国家資格なので参考にしてください。
まとめ
介護福祉士は、数ある介護関連の資格の中で唯一の国家資格です。
知識・技術が身に着くだけではなく、専門知識を有しているとみられるため転職の際や待遇面で有利になることが多くあります。
介護福祉士になるためには、
①養成施設ルート
②実務経験ルート
③福祉系航行ルート
④経済連携協定(EPA)ルート ※日本国籍の方は対象外
の4つのルートがあります。
介護福祉士国家試験の合格率は、近年約70~80%で推移しており、比較的合格しやすい国家試験のため、働きながら取得を目指すことも可能です。
「将来介護福祉士を取得するため、まずは初任者研修を取得したい!」
「働きながら介護福祉士を目指すため、資格取得支援のある施設に転職したい!」という方には、エージェントを利用しての転職がおすすめです。
介護業界に特化したアドバイザーがご対応しますので、キャリアや転職についてお気軽にご相談ください!
この記事を書いたのは・・・
介護転職のミカタ編集部・Y
保有資格:栄養士
介護・保育・障害領域の人材紹介会社にて、キャリアアドバイザーを経験。現在はマーケティングと人事を掛け持ちし、コラム編集部としても奮闘中!