
「新人介護職員の指導の仕方がわからない」「厳しく言いたいときもあるけど辞められたら困る…」
などと悩んでいる責任者の方もいるのではないでしょうか。
指導方法がわからないまま、不適切な指導をしてしまうと新人介護職員の離職や問題行動の防止ができず、現場の不利益に繋がってしまいます。
そこで、本記事では、新人介護職員の指導や研修内容、教育ポイントや注意点などを解説していきます。
記事を読んで適切な指導方法を理解し、戦力になってもらえるような新人介護職員を育てていきましょう。
この記事の内容
新人介護職員への指導・研修内容5つ
新人介護職員への指導や研修はどのような内容があるのでしょうか。
そこで、ここからは、新人介護職員の指導・研修の内容5つを紹介していきます。
- 介護倫理
- 接遇マナー
- 介護ケアの方法
- リスクマネジメント
- 感染症対策
1つずつ紹介します。
介護倫理
介護倫理とは、介護ケアを行ううえで大切にすべき倫理観のことです。
事業所によって細かな考え方は異なりますが、ご利用者様の尊厳を守りながら気持ちに寄り添い介護を行うといったことが主な内容となります。
ご利用者様に対し敬意を持った介護ケアをするうえで介護倫理は重要なものです。
ご利用者様との関わりを持つ前の段階で介護倫理を伝えていくようにしましょう。
接遇マナー
接遇マナーも新人介護職員が覚えるべき内容です。
介護の仕事はご利用者様やそのご家族など、お客様相手の仕事であるからです。
適切な言葉遣いや応対方法などを伝えていきましょう。
接遇マナーを指導する際は、新人職員だけではなく既存職員も振り返りの機会になるとより良いでしょう。
介護ケアの方法
介護ケアの基本的な方法も指導内容の一つです。
業務に入ったら徐々に覚えられるものですが、介護技術の基礎知識も先に伝えておくとスムーズかもしれません。
特に移乗介助は、入浴や排泄など、日常生活の支援全般で使う介護技術なのでぜひ積極的に伝えていくことをおすすめします。
外部講師に頼む方法もあるので、既存職員だけの指導では不安な場合は、そういったサービスも利用してみましょう。
介護職の仕事内容については、以下の記事で解説しています。こちらもぜひお読みください。
リスクマネジメント
リスクマネジメントは介護現場において大切なスキルの一つです。
新人介護職員が転倒や事故を防止するための知識を適切に身に着けられるような指導をしていきましょう。
例えば、転倒や事故が起こる原因からそれを防ぐための方法を冊子等を用いながら、指導していくのがおすすめです。
転倒や事故は、介護現場での大きな課題ですので、一緒に対策が考えられるような環境をつくっていけると良いでしょう。
介護中に遭遇しやすいヒヤリハットについては、以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
感染症対策
感染症対策も介護現場で指導すべき内容です。
介護現場での感染症発生はご利用者様にとっても大きなリスクがあり、場合によっては命を落とすきっかけにもなり得るからです。
感染症を持ち込まないための方法や、感染症が発生してしまった場合にそれを拡大させないための方法を伝えていきましょう。
内容は厚生労働省のホームページから引用するのがおすすめです。
新人介護職員が抱えやすい悩みとは?
指導方法を考える前に、その対象である新人介護職員が抱えやすい悩みも理解しておきたいところです。
新人介護職員の気持ちを無視した指導は、モチベーションの低下に繋がりやすく、また信頼関係もうまく築けなくなってしまいます。
ここからは、新人介護職員が抱えやすい悩みを4つ解説していきます。
- 質問がしにくい
- 一人で介助に入るのが不安
- 仕事のスピードが上がらず心配
- 職員の輪に入っていきにくい
1つずつ見ていきましょう。
質問がしにくい
新人の介護職員は質問がしにくいと悩む傾向にあります。
なぜなら、先輩職員は忙しそうで質問できる雰囲気ではないと感じることがあるからです。
忙しそうにあしらわれたり、嫌な顔をされたりすると質問するのが怖くなってしまいます。
新人介護職員が質問をしてこないと感じたら、聞きにくい雰囲気にしてしまっていないか振り返ることも大切です。
指導側からも、質問が無いかを確認する声掛けを適宜するとよいでしょう。
一人で介助に入るのが不安
入職してすぐの頃は、何をするにも不安になるものです。
一人で対応してしまい大きな事故が起こったり、緊張から頭が真っ白になってミスしたりするのが怖いからです。
新人の介護職員はそういった不安を感じやすいことを認識しておきましょう。
新しい業務を教えるたびに不安そうにする様子が見られたらしばらくは見守りをしてあげるなど、新人介護職員の気持ちに配慮した対応が大切です。
仕事のスピードが上がらず心配
最初は一つの仕事に時間がかかってしまいます。
仕事のスピードが上がらないことを「使えないと思われていないかな」と心配する新人介護職員は多いものです。
新人介護職員が仕事に慣れるまでは、急かさず、スピードは後からついてくるものだから気にしなくてよい旨を伝えてあげると良いでしょう。
それでも、場合によっては迅速に行うべき仕事もあります。
例えば、入浴介助や排泄介助といったご利用者様の肌が露出し、羞恥心の伴うものは、その気持ちに配慮し、迅速な対応が求められます。
そういったときには、先輩職員が一緒に手伝うようにしてあげると良いでしょう。
職員の輪に入っていきにくい
入職したての頃は既存の職員の輪の中に入っていきにくいものです。
先輩職員同士で仲よさそうに話していても、新人の介護職員は入っていけず自分だけ蚊帳の外にいるような孤独な気分になることもあるでしょう。
休憩中や雑談中に新人の介護職員が輪の中に入っていけなさそうな様子を確認したら、先輩の介護職員が上手に橋渡ししてあげるか、話しかけてあげるなどの配慮をしてあげると良いかもしれません。
職員同士のコミュニケーションについては、以下の記事にて解説しています。コミュニケーションを円滑にするコツもしょうかいしているので、ぜひご覧ください。
新人教育で大切な4つのポイント
新人介護職員を教育する際に大切なポイントがあります。
ここからは、新人介護職員の教育で大切な4つのポイントを紹介していきます。
- 新人介護職員の様子を見ながら行う
- 簡潔にわかりやすく説明する
- 適切な指導者を検討する
- 叱る場合は他のタイミングでほめるようにする
新人介護職員の様子を見ながら行う
教育や指導はあくまでも一方的ではなく、新人介護職員の様子を見ながら行うようにしましょう。
新人介護職員の感情や適性、能力を無視して一方的に指導を進めるだけでは、効果を発揮できない可能性が高いからです。
例えば、新人介護職員が仕事を覚えきれていないときに新しいことを教えても、吸収しきれないでしょう。
また、落ち込んでしばらく元気がないときに叱咤激励をすることで、余計なプレッシャーを与えてしまう恐れもあります。
新人介護職員が今どのような状態で何に困っているのかを把握し、状況にあった適切な指導を進めていくことが大切です。
簡潔にわかりやすく説明する
教育や指導をするうえで大切なのは、新人介護職員にしっかり理解してもらうということです。
冗長な説明は、重要な部分がわかりにくく、指導者が伝えたいことがうまく理解されない可能性があります。
説明は簡潔に、また、新人介護職員に伝わる表現を選んで説明していくのが理想的です。
例えば、介助方法で大切なポイントを特に伝えたい場合は、
「〇〇の介助で特に大切なポイントは▲▲です。なぜなら…」
と続けていくと、重要な部分が強調され把握しやすいかもしれません。
新人介護職員の飲み込み具合をみながら、簡潔な表現を意識していきましょう。
適切な指導者を検討する
新人介護職員の指導者を適切に見極めることも重要なポイントです。
入職して間もない期間は、一から業務や介護倫理を理解する絶好のチャンスです。
そのときにハズレの指導者に当たってしまえば、折角の吸収の期間を台無しにしてしまいます。
例えば以下のようなタイプの指導者は避けるほうが良いでしょう。
- 感情的である
- 業務や適切な介助方法をよく理解していない
- 他者を客観視できる能力がない
- 介護観がブレブレで毎回言うことが変わる
また、反対に適切な指導者は以下です。
- 新人介護職員の気持ちに寄り添える
- オンオフの切り替えができる
- 感情的にならず冷静に必要な指導ができる
- 語彙力があり、教える際のわかりやすい表現が上手い
適切な指導者の選択は、新人介護職員にとってもプラスになります。
適任者がいない場合は適切な指導者となってもらえるように指導者を教育していくのが良いでしょう。
叱る場合は他のタイミングで褒めるようにする
指導や教育の話になると、「飴と鞭を使い分ける」という言葉をよく目にするかと思いますが、新人指導の際にも、こちらは大切になります。
叱ってばかり、または褒めてばかりだと教育がどちらかに偏ってしまう可能性があるからです。
不適切なことに対して、毅然と指導することは間違っていません。
しかし、全てにおいてそればかりだと、新人介護職員のモチベーションが下がってしまいます。
「あなたを大切な職員の一人と思うからこその指導だよ」という気持ちが伝わるように、叱った後は、他の褒めポイントを見つけて、ポジティブな誉め言葉も伝えるようにしていきましょう。
新人介護職員を指導する際の3つの注意点
新人介護職員を指導する際には、気を付けるべき点があります。
そこで、ここからは新人介護職員を指導する際の注意点を3つ紹介していきます。
- いきすぎた指導をしない
- 抽象的な表現は避ける
- 絶対に注意してほしいことは複数回伝える
1つずつ見ていきましょう。
いきすぎた指導をしない
新人介護職員の指導でいきすぎた指導はNGです。
度を越した叱咤激励や暴言による指導は、不適切であり、最悪の場合「パワハラ」として告訴される恐れもありますので注意が必要です。
また、新人介護職員の心を傷つけてしまい、モチベーションを低下させ、そのまま退職になってしまう可能性もあります。
指導や教育だからといって、相手の尊厳を傷つけるような発言をしていいわけではありません。
いきすぎた指導はしないように留意しましょう。
抽象的な表現は避ける
指導をするうえで、抽象的な表現はしないようにしましょう。
抽象的な表現は、伝わりにくく、また相手に誤解を与えてしまう可能性があります。
例えば、ご利用者様の個別ケアの方法を指導する場合、より具体的に方法とその理由を伝えてあげましょう。
曖昧な表現で伝えてしまった場合、新人介護職員は、「なぜこちらのご利用者様はこの方法で介護ケアを行う必要があるのか」が理解できず、また、具体的な方法もわからないまま困惑してしまうでしょう。
新人介護職員に理解してもらいたい場合は、なるべく具体的に、方法とそれをする理由を解説することが大切です。
絶対に注意してほしいことは複数回伝える
指導を行う中で「これは絶対に注意してほしい」という重要な内容 ことがあると思います。
例えば、命の危険が伴うような業務(医療的ケアや入浴介助時、看取りケア)の注意点などです。
そういった場合の注意点は、一度だけではなく複数回伝えていくと、新人介護職員の身に着きやすいです。
例えば、以下のような注意点は複数回伝えていくようにしましょう。
- 入浴介助時の移動・移乗・見守り・お湯の温度確認方法
- 緊急時 の対応の注意点や手順
一度聞いただけでは人間は忘れてしまうこともあるでしょう。
大切なことであればなおさら、複数回伝えるようにしていきましょう。
まとめ
入職したての新人の期間は、さまざまなことを吸収できる絶好のチャンスです。
その期間に適切な指導ができると、より今後に期待できる介護職員へとの育ってくれるでしょう。
新人介護職員の心情を察しながら、上手な距離感で適切な指導をしていけるようにしましょう。
この記事を書いたのは・・・

中村 亜美/Webライター
保有資格:介護福祉士
特別養護老人ホームでユニットリーダーとして11年程勤務。
その後はフリーライターとして活動中。在宅介護者や介護事業者、介護職員向けのコラム・取材記事を執筆している。