介護職から異業種への転職を検討しており、以下のような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
- そもそも介護職から異業種への転職は可能?
- 介護職から異業種への転職を成功させるコツは?
- 介護職から異業種に転職する理由は?
本記事では、介護職から異業種への転職を希望する方に向けて、おすすめの仕事や転職を成功させるコツを紹介しています。
介護職から異業種に転職するべきか、このまま介護職を続けるべきか考えるきっかけにもなるので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の内容
そもそも介護職から異業種に転職はできる?
介護職から異業種への転職は問題なくできます。介護現場で培ったスキルは多くの業種で重宝されるため、自信を持って転職活動を進めましょう。
たとえば、コミュニケーション能力や気配り、状況判断力やチームワークといったスキルは、接客業や営業職などのさまざまな仕事でも活かせます。また、介護現場で必要な体力やストレス耐性などは、どの分野においても必要とされる能力です。
さらに、介護職経験で身につけたスキルだけでなく、異業種を目指す上で足りないスキルを補うことで理想的な転職が可能となるでしょう。
自分自身の得意分野や興味がある業界を調べつつ、介護業界で働き続けるか、異業種へ転職するか検討するのもいいでしょう。
介護職から転職する際の選択肢
介護職から転職する際は、以下4つの選択肢があります。
- 介護とは関係ない新しい業界に転職する
- 介護職の経験を活かせる仕事に転職する
- 介護業界で別の職種に転職する
- 同じ介護職で別の施設に転職する
それぞれ具体的な内容を見ていきましょう。
介護とは関係ない新しい業界に転職する
まったく異なる業界へ転職する場合は、未経験歓迎の職種を中心に探すのが一般的です。たとえば、接客業や営業職、Web関係などは介護とは異なる仕事の主な例と言えます。
未経験の新しい業界に転職する場合でも、介護職で培った以下のようなスキルは高く評価されるでしょう。
- コミュニケーション力
- 小さな変化に気づける観察力
- 多職種連携によるチームワーク力
また筆者のように、介護職の経験をライターや動画編集、メディア運営などのクリエイター業に活かすことも可能です。
介護以外の業界に転職する際は、自分の興味や将来のキャリアビジョンを考慮し、自分に合った業界を選びましょう。
介護職の経験を活かせる仕事に転職する
できるだけ介護職の経験を活かしたい場合は、以下のような仕事が向いています。
- 福祉用具の販売・営業
- 介護事務や医療事務
- 介護資格の講師
- 介護タクシーの運転手
- 地方公務員の福祉職
介護職で培った知識やスキルを活かしたい場合は、福祉や医療に関わる周辺業務への転職がおすすめです。
とくに、福祉用具の販売や介護資格の講師、介護タクシーの運転手などは、介護現場で培った介護技術や観察力が非常に役立ちます。
地方公務員として地域福祉に関われば、介護職の経験を活かしてケースワークや住民の相談窓口業務などで地域貢献できるでしょう。
介護業界で別の職種に転職する
介護業界でキャリアチェンジやステップアップを考えるなら、以下のような職種がおすすめです。
- 生活相談員
- ケアマネジャー
- サービス提供責任者
- 管理職や施設長
- エリアマネージャー
同じ介護業界の職種であり、介護職の実務経験が求められる場合もあるため、介護の経験を存分に活かせるでしょう。
仕事内容はデスクワークや調整業務、マネジメントなどが中心になるため、身体的な負担を減らしたい方にも向いています。
社内でキャリアアップを目指す場合は、上司からの推薦も必要になるため、積極的に相談する姿勢も求められます。
介護施設の管理者の仕事については、以下の記事を参考にしてください。
同じ介護職で別の施設に転職する
介護職自体に不満はなく、今の職場に不満がある場合は、同じ介護職のまま働く場所を変えることで環境が改善される可能性があります。
たとえば、同じ介護施設でも施設形態によって、以下のように仕事内容や雰囲気などが異なります(各施設の仕事内容は、施設形態名をクリックし確認してください)
| 施設形態 | 特徴 |
| 特別養護老人ホーム | 要介護度が高く、排泄や入浴などの身体介助が中心(夜勤あり) |
| 介護老人保健施設 | 医療ケアやリハビリが主軸で、基本的な介助は特別養護老人ホームと同様(夜勤あり) |
| 有料老人ホーム | 要支援から入居できるため接遇重視の施設も多くサービス業の要素強め(夜勤あり) |
| グループホーム | 少人数で認知症の利用者が中心、調理や掃除など生活支援の業務あり(夜勤あり) |
| 小規模多機能型居宅介護 | 訪問・通い・宿泊のサービスを複合的に提供(夜勤あり) |
| 訪問介護 | 利用者の自宅を訪問し1対1のケアサービスを提供(夜勤なし) |
| デイサービス | レクリエーションや送迎業務あり、人前で話すコミュニケーション力も必要(夜勤なし) |
施設形態以外にも、給与や勤務時間、福利厚生や人間関係なども転職の大きな判断材料です。
介護施設の種類については、以下の記事でわかりやすく解説しています。
介護施設の種類には何がある?未経験でも働きやすい施設の選び方
介護職から異業種への転職を成功させるコツ
介護職から異業種への転職を成功させるコツは、以下の5つです。
- 自分の強みを言語化する
- 転職の理由を明確にする
- 興味ある業界のことを調べる
- 面接対策を計画的におこなう
- 複数の企業に積極的に応募する
それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。
自分の強みを言語化する
異業種に転職する際は、あらためて自分の強みを明確にすることが重要です。
介護職では、対人コミュニケーション力や忍耐力、チームワークや臨機応変な対応力など、異業種でも活かせるスキルを多く身につけることが可能です。
まずは、自分が介護現場でどのような経験をして、どのような力を発揮してきたのかを棚卸ししましょう。
「対人コミュニケーションを営業の顧客対応に活かせる」「接客業で臨機応変な対応力を発揮できる」など、異業種でも活かせる強みを言語化することで、自信を持ってアピールできるでしょう。
転職の理由を明確にする
なぜ介護職から異業種に転職したいのかを明確にすることも大切です。目的が曖昧なまま転職すると、「介護職のほうが良かった」「自分のライフスタイルに合わない」などの後悔につながる恐れがあります。
また、転職理由を明確にしておくことで、面接時の志望理由を自信を持って伝えられます。
たとえ志望理由がネガティブな場合でも、自分の言葉で正直に伝え、改善策や将来のビジョンも添えると好印象です。
転職理由は明確にした上で、自分の願いが達成される業務を選びましょう。
興味ある業界のことを調べる
介護職から異業種に転職する際は、自分が興味ある業界のことを積極的に調べることが重要です。
未経験の業界に転職する場合は、業界の特徴や仕事内容などを事前に把握しておくことで、企業側に転職したい熱意を伝えやすくなります。
また、業界のことを知ることで、なぜ自分がこの業界に転職したいのかがより明確になります。
業界のことを調べる中で、自分には向いていないと判断し、転職を考え直すきっかけにもなるでしょう。
面接対策を計画的におこなう
異業種への転職では、面接での受け答えが合否を大きく左右します。
面接では、これまでの経験をどのように活かせるか、なぜこの業界に興味を持ったのかといった内容を明確に伝えることが重要です。そのため、事前に想定質問を洗い出し、回答を準備しておくといいでしょう。
また、企業研究や自己紹介の練習、表情や話し方の確認も大切なので、不安な方は練習しておきましょう。転職エージェントを活用し、担当者と面接対策をしたり、当日同行してもらったりするのも効果的です。
以下の記事で紹介している介護職員の面接の基本は、異業種への転職でも役立つのでぜひご覧ください。
複数の企業に積極的に応募する
異業種への転職は、複数の企業に積極的に応募しましょう。応募する数が少ないと採用率が下がるだけでなく、不採用の際に転職の意欲が切れてしまう恐れもあるでしょう。
また、複数の企業への転職を並行して進めることで、企業の比較もしやすくなり、自分に合った職場を見つけやすくなります。
本気で介護から異業種に転職したいのであれば、積極的に興味ある求人に応募しましょう。
さらに、応募と面接の経験が増えることで本番に慣れて、面接スキルの向上も期待できます。
介護職から異業種に転職したいと思う理由
介護職から異業種に転職したいと思う理由は、以下のようなことが挙げられます。
- 給料が低い
- 人間関係が悪い
- 土日祝日に休みにくい
- 体力的・精神的にキツい
- 新しいことに挑戦したい
それぞれの具体的な内容を確認しましょう。
給料が低い
介護職は社会的に必要不可欠な仕事でありながら、他業種と比較して給与水準が低い傾向です。そのため、待遇の良い異業種へ転職する方もいます。
国税庁の調査では、全産業の平均年収は460万円という結果です。一方、厚生労働省の調査によると、介護職の平均年収は400万円ほどで、全産業よりも60万円ほど低くなっています。
夜勤や残業など長時間労働になることもあり、業務内容と報酬が見合っていないと感じる人も多いでしょう。
介護職の給料事情については、以下の記事でも詳しく解説しています。
人間関係が悪い
介護現場は介護職だけでなく、看護師やケアマネジャー、相談員など、さまざまな職種が働いておりチーム連携が必要不可欠です。そのため、人間関係のストレスを感じることも多い職場です。
介護労働安定センターの調査では、介護職の退職理由の1位は「職場の人間関係に問題があったため」でした。
また、ご利用者やその家族の対応にも追われることでストレスを感じる場面もあり、介護職を辞めたいと思う方もいるでしょう。
引用元:公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働実態調査」
土日祝日に休みにくい
多くの介護施設は、基本的に24時間365日サービスを提供しているため、勤務は早番や遅番、夜勤などがあるシフト制です。
そのため、土日や祝日、年末年始などは休みにくく、家族や友人と予定を合わせにくく不満を感じる方もいるでしょう。
ゴールデンウィークやお盆、年末年始など、カレンダー通りに休みを取りたい方は、一般企業への転職を検討したほうがいいかもしれません。
体力的・精神的にキツい
介護職は、ご利用者の身体介助や夜勤、緊急対応など身体的に負担を感じる業務が多く、体力が必要な仕事です。
また、認知症の方への対応や事故・クレーム対応など、精神的にストレスを感じる場面も多くあります。さらに人間関係によるストレスで、メンタルが崩れ退職に追い込まれるケースもあるでしょう。
介護職の働き方や職場環境が合わない場合は、自分のライフスタイルや性格に合う異業種への転職がおすすめです。
新しいことに挑戦したい
介護職として経験を積む中で、「もっとスキルを広げたい」「違う分野でも自分の力を試してみたい」と思う方もいます。
介護職として培った、人と接する力や気配り、観察力などは、他業界でも十分に活かせます。
介護とは異なる仕事で将来性のあるIT業界や、成果を出せば高待遇が見込める営業職など、魅力的な仕事は数多くあるため、自分の可能性を広げるために転職を検討するのもいいでしょう。
介護職から異業種へ転職するメリット
介護職から異業種に転職するメリットは、主に以下の3つです。
- 労働環境の改善
- 待遇面の改善
- 新しい可能性への挑戦
介護職はやりがいのある仕事ですが、早番や遅番、夜勤などシフト制のため、不規則な生活習慣になりがちです。日勤のみで土日祝日休みの業界に転職すれば、生活習慣も安定し自分の時間を確保しやすくなる可能性があります。
また、給与面でもメリットがあります。介護業界は全体的に給与水準が低い傾向ですが、営業職やIT業界などに転職することで、年収アップが期待できるでしょう。
さらに、介護とは違う分野に挑戦することで、スキルアップや新しい人との出会いなど、さまざまな刺激を感じられることも転職の魅力です。
介護職から異業種へ転職するデメリット
一方、介護職から異業種への転職は、以下のようなデメリットもあります。
- 新しいことを一から覚える必要がある
- 一時的に給与が下がる可能性がある
- 転職した業界が自分に向いていない恐れがある
介護職から異業種に転職する場合は、未経験からのスタートになる可能性が高く、新人として一から専門知識やスキルを学ばなければいけません。
また、将来的な給与アップは期待できるものの、未経験からの入社だと給与が一時的に下がる可能性もあるでしょう。
転職先の業界が自分に合っていなかった場合、「やっぱり介護職のほうが良かった」と後悔することもあります。ただし、介護業界は慢性的な人手不足で出戻りしやすいため、異業種に転職して、合わなかったらまた介護職をするという選択も可能です。
介護職から異業種への転職でおすすめの仕事
介護職から異業種への転職でおすすめの仕事は、以下のとおりです。
- 接客・サービス業
- 営業関係
- Web業界
- キャリアアドバイザー
- 製造業
それぞれの仕事の特徴について、簡単に解説します。
接客・サービス業
接客・サービス業は、介護職で培った気配りやコミュニケーション力などを活かせる仕事です。
飲食店やホテル、販売など幅広い分野があり、人と関わることが好きな人に向いています。未経験からでもはじめやすく、研修制度が整っている企業であれば、安心して転職できるでしょう。
ただし、勤務先によってはシフト制で、介護職と生活リズムが大きく変わらないケースもあります。立ち仕事やクレーム対応などでストレスを感じる場面もあるため、事前に職場の雰囲気や勤務体系をよく確認しておきましょう。
営業関係
営業職は成果が給与に反映されやすく、介護職よりも高収入が期待できる点が魅力です。
商品やサービスの提案を通じて、お客様との信頼関係を築く仕事のため、介護で培った傾聴力や人柄が評価されやすいでしょう。
未経験でも採用をおこなっている企業は多く、異業種からの転職も十分可能です。ただし、ノルマをはじめ数字のプレッシャーがかかることもあるため、営業が自分の性格に合っているか考えて転職しましょう。
Web業界
Web業界は、働き方の柔軟性が高く、介護職では難しいリモート勤務やフレックスタイムなどを導入している企業も数多くあります。
Webの仕事は、Webデザインやライティング、マーケティングなど、さまざまな仕事があります。未経験からでも、確実にスキルを習得すれば、介護職からでも十分挑戦可能です。
筆者も介護職をしながら、Web関係のクリエイター業をしており、異なる分野だからこそ楽しめています。
キャリアアドバイザー
キャリアアドバイザーは、求職者の相談に乗り、最適な仕事を提案する人材業界の仕事です。
介護職経験者であれば、介護職向けの人材紹介会社で働くことで、求職者の悩みに寄り添ったサポートができるでしょう。
人と話すことが好きで、転職によってその人の人生を良くしたいという想いがある方には最適な仕事です。
求職者とこまめに連絡を取り合い、ヒアリングや提案などをおこなうため、介護職で培った傾聴力や観察力なども活かせるでしょう。
製造業
製造業は、体力に自信がある方におすすめの仕事です。製品の組み立てや検品、ライン作業などが主な業務で、決まった作業をコツコツおこなうのが得意な人に向いています。
介護職同様、手を動かして働くことが多いため、デスクワークが苦手な人でも取り組みやすいのが特徴です。
未経験でもはじめられる職場が多く、正社員登用や資格取得支援制度などが整っている企業もあります。ただし、介護職のようにシフト制で夜勤がある職場もあるため、事前に勤務形態は確認しておきましょう。
介護職から異業種への転職に関するよくある質問
介護職から異業種への転職に関するよくある質問は、以下のとおりです。
- 異業種に転職しても介護職に出戻ることは可能?
- 介護職から異業種への転職で年齢によるハンデはある?
- 介護職に向いていない人の特徴は?
それぞれ具体的な回答を見ていきましょう。
異業種に転職しても介護職に出戻ることは可能?
介護職から異業種に転職しても、出戻ることは可能です。
なぜなら、介護業界は慢性的な人手不足で、実務経験がある人材はすぐに採用されやすく、再就職のハードルも比較的低いためです。
筆者の職場でも、これまで数名の方が異業種に転職しましたが、以下のような理由から新しい仕事が合わず介護業界に出戻りました。
- 保険の営業でノルマが辛かった
- IT企業でパソコンばかりして不健康になった
- 平日に休めず土日祝日はどこに行っても混んでいた
上記のように介護以外の仕事をして、はじめて介護職の魅力に気づいた方も多くいます。
異業種に挑戦しても、比較的出戻りしやすいのが介護職の魅力とも言えるでしょう。
介護職の出戻り事情については、以下の記事を参考にしてください。
介護職から異業種への転職で年齢によるハンデはある?
介護職から異業種への転職で、年齢によるハンデはありますが、職種によっては40代や50代以降でも採用されるケースもあります。
とくに、接客や営業など人柄を重視し、介護職のスキルを活かしやすい仕事であれば、年齢関係なく挑戦できる可能性はあります。
ただし、Web業界のように、若手を積極的に採用している場合は、年齢が転職の大きな障壁になるリスクはあるでしょう。
年齢にとらわれすぎず、自分の強みや適性を再確認して、無理のない転職をすることが大切です。
介護職に向いていない人の特徴は?
介護職に向いていない人の特徴は、以下のようなことが挙げられます。
- 土日祝日は休みたい
- 感情のコントロールが難しい
- 自分のペースで働きたい
- 夜勤をしたくない
- 体力仕事よりもデスクワークがしたい
上記の特徴に当てはまる人は、介護職に就くことでストレスを感じやすく、長続きしにくい傾向です。
介護の現場では柔軟な対応力や感情の安定、体力が求められるため、環境に合わないと心身の負担が大きくなります。
無理をせず、自分に合った働き方や職場環境を見つけることが、長く安定して働くために重要なため、向いていないと感じたら異業種への転職も前向きに検討しましょう。
まとめ
介護職から異業種へ転職する場合は、転職の目的や希望条件などを明確にした上で検討しましょう。なんとなく転職すると、介護職のほうが良かったと後悔する可能性があります。
ただし、介護職は慢性的な人手不足で、比較的出戻りしやすい職種のため、異業種に興味があるなら思い切って転職するのもいいでしょう。
世の中にはさまざまな仕事があり、介護職以外の職種を経験することで、労働環境や給与面の改善、スキルアップなどが可能です。
介護職に不満がある方や、異業種で新しい挑戦をしたいという方は、ぜひ本記事の内容を参考に、前向きに転職を検討しましょう。
この記事を書いたのは・・・

津島 武志/Webライター
保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/社会福祉士
業界17年目の現役介護職兼ケアマネージャー。
さまざまな介護系メディアでWebライターとしても活動し、多くの検索上位記事を執筆。
介護職以外に転職メディア「介護士の転職コンパス」や自身のライフスタイルや介護系コンテンツを発信するYouTubeチャンネル「かいご職TV」等を運営。
